仕事に効くオープンダイアローグ

世界の先端企業が実践する「対話」の新常識
未読
仕事に効くオープンダイアローグ
仕事に効くオープンダイアローグ
世界の先端企業が実践する「対話」の新常識
著者
未読
仕事に効くオープンダイアローグ
著者
出版社
出版日
2019年03月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、オープンダイアローグの手法をビジネスのコミュニケーションに取り入れることを提案するものだ。オープンダイアローグは、もともとはフィンランドで生まれた精神療法だ。投薬に頼らずに、コミュニケーションのやり方を変えるだけで、統合失調症が初期の段階で治癒するという画期的なものである。

いま日本の組織が抱える働き方改革やイノベーション、そして新しい情報通信技術(ICT)への対応といった課題は、コミュニケーションのやり方を変えれば大きく改善できる――それが本書における著者の考えであり、その手法を提供してくれるのが、このオープンダイアローグなのである。

ベースにあるのは、意見の不一致こそがコミュニケーションを豊かにするという、逆説的にもみえる考え方だ。しかし、著者も指摘するように、情報は異なる情報だから情報として価値を持つのであり、同じ情報は幾度繰り返しても新しい意味(価値)を生まない。越境や共創といった新しい働き方が求められるいま、意見の不一致を恐れずに異質な人たちと双方向のコミュニケーションを実践することで、職場やビジネスに好循環が生まれていくのである。

本書は、(1)オープンダイアローグの起源と根底にある考え方、(2)ビジネスにうまくとりいれるためのポイント、(3)ヨーロッパ、アジア、日本の事例という3つのパートから成っている。本要約では冒頭で(1)に触れ、(2)を中心にまとめた。事例についてはぜひ本書でご確認いただきたい。

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しいたに

著者

鈴木 隆(すずき たかし)

大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所主席研究員。
東京大学法学部卒業後、大阪ガス入社。国際大学大学院国際関係学研究科修了。
2001年、社内起業により国内初の本格的な住宅リフォーム仲介サイト「ホームプロ」を立ち上げ、試行錯誤の末、国内利用実績NO.1のサイトに育てあげる。
株式会社ホームプロ(リクルート・大阪ガス・NTT西日本・NTT東日本が出資)の代表取締役専務、日本郵政の事業開発部アドバイザー等を経て、現在に至る。
現場の実践と理論を統合する研究の成果を、出版や講義・講演・研修を通じてシェアしている。
主な著書に、『御社の商品が売れない本当の理由』『リフォームを真剣に考える』(ともに光文社新書)、『マーケティング戦略は、なぜ実行でつまずくのか』(碩学社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    オープンダイアローグは、高度で複雑な技法ではなく、いたってシンプルなものだ。技法や方法論というより、考え方、生き方のようなものだともいえる。
  • 要点
    2
    ダイアローグは、あるテーマについて、いっしょに知恵を絞って探求し、考えを深めることを目的とする。結論を出すことが目的ではないし、むしろ決めないことが大切である。
  • 要点
    3
    オープンダイアローグをビジネスで活用するためのポイントは、多様性・主体性・傾聴・質問・内省の5つである。

要約

オープンダイアローグとは

フィンランド生まれのオープンダイアローグ

オープンダイアローグは、1984年、もともと統合失調症の治療法としてフィンランドで開発された。ほとんど薬も飲まず入院もせずに、対話を行うだけで統合失調症の初期段階にある人の症状を劇的に改善したことで注目を集めた。

オープンダイアローグは、高度で複雑な技法ではない。いたってシンプルなものだ。基本的な考え方を理解し、一定のやり方に従って対話を実践していけばよい。オープンダイアローグを生んだ、フィンランドのケロプダス病院の治療スタッフは、「オープンダイアローグは技法や方法論ではなく、考え方、生き方のようなものです」という。

根本にあるダイアローグの思想
wutwhanfoto/gettyimages

ダイアローグの思想を生んだのは、ロシア(旧ソビエト連邦)で生まれたミハイル・ミハイロヴィチ・バフチンさんだ。オープンダイアローグの理論にも、バフチンさんの思想が全面的に取り入れられている。

バフチンさんの主張の根幹であり、オープンダイアローグの理論的な支柱にもなっているのが、「ダイアローグの思想(dialogism)」である。自己は、自己だけでは存在できない。他者の存在が必要だ。わたしたちは、自己を他者の目で見つめ、評価することで、日々生活をしている。他者を通じて意味づけられることで、自己が生みだされているのだ。自己の存在とはすなわち、他者と対話的に交流することなのだ。

対話は、ことばで行うこともあれば、口に出さずに態度で示すこともある。また、外の他者だけでなく、内なる自己とのあいだでも行われる。書かれたことばであるテキストも、一種の対話だ。

生きるとは、こうした対話に参加することであり、尋ね、耳を傾け、答え、同意したりすることなのだ。人は生きている限り対話を続ける生き物である。

ビジネスにおけるオープンダイアローグ

対話とは何か

本書で扱われるオープンダイアローグは、精神療法で実践されているものとは異なり、ビジネスにおける広義のオープンダイアローグだ。ここで用いる「オープン」とは「壁をつくらず、とらわれず」ということであり、「ダイアローグ」とは「問うて気づき、応えて学び合う」ということである。

ダイアローグということばは、ギリシャ語のディアロゴス(dialogos)に由来している。Diaは、しばしば“ふたつ”という意味と説明されるが、ここでは“~を通して”“~のあいだにおける”といったニュアンスだ。Logosはことばを意味し、このふたつを合わせたdialogosは、人と人のあいだにおけることばという意味になる。

ダイアローグは、通常「対話」と訳される。ただしこの言葉は、ふたりで行われるものに限らない。3人以上のグループで話し合うことも、ひとりの内なる自己と話し合うこともダイアローグである。

対話・会話・議論
shironosov/gettyimages

ビジネスのコミュニケーションには、会話や議論などがある。これらとダイアローグ(対話)はどう違うのだろうか。

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要約公開日 2019.08.09
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