「%」が分からない大学生
日本の数学教育の致命的欠陥

未 読
「%」が分からない大学生
ジャンル
著者
芳沢光雄
出版社
定価
780円 (税抜)
出版日
2019年04月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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「%」が分からない大学生
「%」が分からない大学生
日本の数学教育の致命的欠陥
著者
芳沢光雄
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定価
780円 (税抜)
出版日
2019年04月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
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レビュー

「%」は、言わずと知れた世界共通の言葉である。しかしタイトルの通り、近年「%」が分からない大学生が増えているという。本書によると、食塩水の濃度の問題において、2012年と1983年の全国学力テストの結果を比べると、前者は後者より正答率が20%も下がっている。背景には、「やり方」を覚えるだけの教育や社会の風潮がある。本書は、来るべきAI時代に備え、日本の数学教育の根本的改善に向けた提言をまとめたものである。

本書は、やり方ではなくプロセスを重視する学び方の重要性を説く。暗記のみに終始する現代の数学教育の問題点を指摘するだけではなく、現代社会にあふれる情報を、数字を使ってよりわかりやすく理解する手法も例示されている。何を隠そうゆとり世代である要約者自身も、学生時代に要領のよい覚え方でテストをパスした後は、本書を読むまで関数や微分などの考え方はすっかり忘れていたのである。考え方をきちんと理解すれば、数学はこんなにも役に立つのだということを著者によって示され、自身の学び方を反省せざるを得ない。

人口減少を続ける日本において、今後も世界とわたりあう国力をつけるためには、「学び」は大きな意味を持つ。本書が指摘するとおり、「技術立国」日本は、人材しか大した資源はないからだ。学んだことを社会のために活かす「学而事人(がくじじじん)」の精神をたっとぶ著者の姿勢から、読者が学べることは多いはずだ。教育関係者をはじめ、日本の将来のために行動したいと考える方へ、おすすめしたい一冊である。

菅谷真帆子

著者

芳沢 光雄(よしざわ みつお)
1953年東京都生まれ。東京理科大学理学部教授(理学研究科教授)などを経て、現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授(同志社大学理工学部数理システム学科講師を兼務)。理学博士。専門は数学・数学教育。国家公務員採用I種試験専門委員(判断・数的推理分野)、日本数学会評議員、日本数学教育学会理事などを歴任。著書に『論理的に考え、書く力』(光文社新書)、『新体系・高校数学の教科書(上・下)』『新体系・中学数学の教科書(上・下)』(以上、ブルーバックス〈講談社〉)、『算数が好きになる本』(講談社)、『ビジネス数学入門〈第2版〉』(日経文庫)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    数学の結果をさまざまな分野で用いるときには、その数字を得たプロセスを大切にする議論は欠かせない。数学教育において重要なのは、「やり方」のみを覚えて答えを当てることではなく、プロセスを理解することである。
  • 要点
    2
    数学を自在に使えることは、子どもたちの将来にとって有益であり、実生活を送る上でも役に立つことである。
  • 要点
    3
    数学では理解こそが重要な教科であるが、わからないこと、理解が遅いことそのものは悪いことではない。今後の日本では、一人ひとりの理解力に沿った指導が行われるべきである。

要約

「やり方」重視の教育が招く問題

数学における「奇妙な間違い」
gorodenkoff/gettyimages

小学校の算数で習う「速さ×時間=距離」「元にする量×割合=比べられる量」の式は、それぞれ「は・じ・き」「く・も・わ」という用語と、円形の図を合わせて、子どもたちに教えられている。この学習の仕方は数学教育の現場で深刻な問題を引き起こしているという。10年ほど前から、先生方の「時間と距離と速さの問題で奇妙な間違いをする学生がいる」という声や、学生の「『%』って何でしたっけ?」という声が、著者の周囲で聞かれるようになった。

時間と速さなどに関する問題で誤答となった学生は「は・じ・き」「く・も・わ」の図を描いていることが多く、正答した学生のうち、これらの図を描いた学生は少なかったという。誤答となった学生たちはこうした図を学んだ際、プロセスを理解せずに「やり方」としてただ暗記していたそうだ。

「数学は一歩ずつプロセスを大事にする教科であり、答えを当てる教科ではない」と著者は強調する。さまざまな分野で、数学的に得られた結果を用いるときには、プロセスを大切にする議論は欠かせない。こうした考え方を学ばずに育てば、間違いをおかしたときにプロセスを見直して、間違いを見つける力が身につかないのである。

「は・じ・き」「く・も・わ」式教育の蔓延

プロセスを無視した教育は、小・中・高校の広範な数学分野にわたっている。たとえば、「分数÷分数」の割り算に関して、ただ「分数で割ると、分母と分子をひっくり返して掛ける」というふうに、ただ「やり方」を暗記して育ってしまうと、「やり方」を忘れたとたんに解けなくなってしまう。

もちろん、一方ではきちんとした学びも行なわれている。なぜ分母と分子をひっくり返して掛けるかを説明する場合、証明するのではなく具体的事例を示すことで教えている。2/3÷1/6=4というような式について、2/3と1/6のそれぞれの値を、ケーキを分割したような図で表して、式が成り立つことを示す。そうして、分数の割り算を一般的な性質として納得させるのである。こうしたプロセスを経て理解しないと、突然問題が解けなくなってしまうのである。

プロセス軽視の原因と弊害

数学マークシート式試験の欠陥
gorodenkoff/gettyimages

「は・じ・き」「く・も・わ」式の教育が蔓延する主因は、数学マークシート式試験にある。数学マークシート式試験は、同一の問題には同一の点がつく上、当てずっぽうに書いても満点を取る確率は低いことから、公平だとされている。

しかし、この試験方法には、問題の意図を理解せずに解ける、さまざまな裏技がある。たとえば、「文字に具体的な数字を入れて正解を見破ることができる問題」が存在する。これは、記述式であれば不正解となる解答でも、採点者側はどのような方法で導かれたのかを知ることができないので正解としてしまうという重大な欠陥だ。他にも、正答率を上げる方法として、

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日本の数学教育の致命的欠陥
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サイエンス リベラルアーツ
著者
芳沢光雄
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780円 (税抜)
出版日
2019年04月30日
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