未来予測は不可能だ。何らかの変化が起こることは明白だが、これだけ世の中が複雑になり、激しく変化していく中で、予測できることには限界がある。とはいえ、人口が減り、一人ひとりが長く働く時代がやってくることはすでに確定している。
著者自身がその事実を「自分ごと」として捉えられるようになったのは、34歳のときのことだった。今から10年前、企業買収ファンドで働き、自身のキャリアについて考えていた頃である。「ちょっと待てよ。俺は100歳まで生きるかもしれない」と。
「100歳まで生きるのなら、60歳か65歳で定年を迎えた後も生活していけるのか。まあ、無理だろう」「仮にお金が足りたとしても、60歳でリタイアしたらその後の40年がヒマすぎる。趣味はたくさんあるけど、それだけでは心は満たされないのではないか」――著者はそう考えるようになった。
80歳まで働くという選択肢が現実味を帯びてきたころ、上司から「企業買収ファンドの世界で上に行くなら、君のこういう弱みを克服したほうがいい」と指導されていた。だが、80歳まで働く前提に立てば、今の仕事をずっとやるとか、自分が苦手なことを克服するのはおかしい。仕事を覚えたての20代ならまだしも、自分本来のスタイルを変えて無理をしながらあと45年も働けるのだろうか。
「それなら、自分らしさを活かせる仕事はなんだろう?」「弱みを克服するのではなく僕らしさが活きる道ってどこだろう?」そう考え、起業を決心した。根本にあったのは、「自分が好きで自分に合っている生き方、働き方でなければ長く続かない」という考え方だ。
終身雇用制度が消滅すれば、突然クビになるかもしれないし、会社が倒産したり、給料が大幅に減ったりする可能性もある。いずれにせよ、定年がくれば会社にいられなくなる。そんな中、長く働かなければならないのなら、フリーになっても食っていける「個人の力」は必要不可欠だ。その前提のもと、本書では「個人の力」の三大要素が紹介される。
三大要素の1つ目は、スキルだ。ただし、どのようなスキルにニーズがあるのかは、その時々で変わる。激変する時代の中で「絶対」を求めて安定を手にしようという人は、全財産を賭博につぎ込むほどのギャンブラーだと言ってもいい。「この資格を取っていれば一生食いっぱぐれがない」「現実を考えて手に職をつける」という発想は、80歳まで働くとすればまったく役に立たない。「唯一無二のスキルをひとつ持つ」という発想を捨て、「複数のスキルを持つ、新たなスキルを獲得し続ける」という考え方に切り替える必要がある。
個人のスキルを持つとは、たった一つの秘密兵器を持つのではなく、使える武器をいくつか持ち、それを更新し続けたり、かけ合わせたりするということだ。そうすれば「どう働くか」「どう稼ぐか」の選択肢が増え、自由度が高まる。1000人の中で1番になるのではなく、10人の中で1番のスキルを3つかけ合わせ、結果として1000人の中で唯一のレア人材になれるという発想だ。
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