140字の戦争
SNSが戦場を変えた

未 読
140字の戦争
ジャンル
著者
デイヴィッド パトリカラコス 江口泰子(訳)
出版社
定価
2,200円(税込)
出版日
2019年05月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
140字の戦争
140字の戦争
SNSが戦場を変えた
著者
デイヴィッド パトリカラコス 江口泰子(訳)
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
定価
2,200円(税込)
出版日
2019年05月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
本の購入はこちら
おすすめポイント

SNSが戦争に与える影響力の大きさは、私たちの想像以上だ。

たとえば本書は2014年のウクライナ内戦において、ロシアがSNS上でどのように情報工作をしたのかを取り上げている。またイスラエルのガザ侵攻において、パレスチナ人少女がツイッターを使いこなし、イスラエルに対する国際的な非難を巻き起こした事例についての言及もある。こうした事例が意味するのは、SNSが戦争において、大きな影響力を持つようになったということだ。

しかしそれ以上に興味深いのは、SNSが報道のあり方に変化をもたらしたことである。2014年7月17日に起きた、マレーシア航空17便撃墜事件を覚えているだろうか。ロシア政府はこれを「ウクライナの仕業」と発表したが、それは嘘であると暴露したのは民間人たちだった。彼らはSNSに投稿された大量の情報の真偽を入念に確かめることで、従来のジャーナリストや調査機関にはできなかったことを成し遂げたのである。

SNSによって戦争のやり方や報道に変化が生じている――そのことを本書は鮮やかに描き出している。そしてそれこそが、本書最大の価値だと要約者は考える。戦争に興味がなくても、広告・メディア関連業務に就いている人であれば必読の書だ。

ライター画像
若旦那

著者

デイヴィッド・パトリカラコス(David Patrikarakos)
中東を専門に取材するジャーナリスト。《デイリー・ビースト》のコントリビューティング・エディター、《ポリティコ》のコントリビューティング・ライター。《ニューヨーク・タイムズ》紙、《フィナンシャル・タイムズ》紙、《ウォール・ストリート・ジャーナル》紙などに寄稿。2012年の著書Nuclear Iranは《ニューヨーク・タイムズ》紙のエディターズ・チョイスに輝くなど高い評価を得た。ロンドン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    ガザ地区のパレスチナ人少女ファラ・ベイカーは、ツイッターでイスラエルによるガザ侵攻を実況。空爆の恐怖を吐露し、世界中から共感を集めることで、国際社会におけるイスラエルの立場を危ういものにした。
  • 要点
    2
    ウクライナ内戦が勃発すると、ロシア政府や軍についてポジティブに描く一方で、ウクライナ政府や軍についてネガティブに書く偽記事が大量に拡散された。それらはロシア政府が主導したプロパガンダだった。
  • 要点
    3
    英国人のエリオット・ヒギンズは、2014年7月17日に起きたマレーシア航空17便撃墜の際に使用されたミサイルの提供元がロシアであることを、SNSなどのオープンソースの情報を用いて、いち早く証明してみせた。

要約

市民ジャーナリスト

ツイッターを活用する
Racide/gettyimages

2014年6月12日、イスラエル人の少年3人が、ハマスの戦闘員に誘拐され殺害された。イスラエルが報復としてハマスの関係者を逮捕すると、ハマスは応戦する形でイスラエル南部に地対地ロケットを撃ち込み、数発が着弾。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月8日、ハマスに対抗するためにガザ侵攻を決断する。空爆を行い、7月17日には地上部隊がガザ地区に侵攻した。

だがガザ地区に住む16歳のパレスチナ人少女ファラ・ベイカーは、西洋諸国のメディアがイスラエルを被害者のように見せる偏向報道をしていると確信していた。真実を伝えるべくファラは、市民ジャーナリストとして空爆にさらされる毎日の生活のナラティブ(語り)を、ツイッター上で英語を用いて発信することにした。イスラエルの破壊の実態を世界に伝えて国際社会の非難を喚起し、イスラエルの軍事行動を封じ込めるためだ。当初はあまり反響がなかったが、空爆の激化や死傷者の増加にともない、フォロワー数が800から20万に増えるまで、わずか数週間しかかからなかった。

7月21日、ファラは自分の写真とともに、こうツイートした。「わたしはファラ・ベイカー。ガザ地区に住む16歳の少女です。生まれてから、3度の戦争を生き抜いてきました。もうたくさんです。#SaveGaza」

「ホモ・デジタリス」
CAEccles/gettyimages

7月28日にファラの家の近くで激しい空爆が起きたことで、ファラのツイートは世界中から注目を浴びた。

ファラは「家の近くで激しい空爆が続いてる。今回の戦争がはじまって以来、最悪の夜。いまのうちに言っておくと、今夜、わたしはいつ死んでもおかしくない。#Gaza」とツイート。これには1362回のリツイートがあった。さらに照明弾の写真とともに、「これは家のすぐ近く。涙が止まらない。今夜、わたしは死んじゃうかもしれない。#GazaUnderAttack #ICC4Irael #AJAGAZA」とツイートすると、1万5547回のリツイートがされた。ファラの「恐怖感情の吐露」というナラティブは、世界中の人々の心を打ったのだ。

世界中から共感のツイートが、ファラのもとに殺到した。その中には海外ジャーナリストもいた。「世界は君の味方だ@Farah_Gazan。子どもを大量虐殺するイスラエルを、これほど侮蔑したことはない。#FreeGaza」――7万9400人のフォロワーを持つウィル・ブラックのツイートだ。多数のフォロワーを持つユーザーの共感を得たファラのツイートは、さらに拡散していった。

さらに海外メディアも、ファラのツイートを取り上げ始めた。英国のタブロイド紙《デイリー・ミラー》が「16歳のパレスチナ人少女、ガザへのミサイル攻撃を自宅からライブツイート」と報じた記事は、主にファラのツイートで構成されていた。この記事を数百万人の読者が読んだ。他の主要メディアもファラを取り上げ、ファラをジャーナリスト同然に扱った。

ガザ侵攻においてファラのツイートは、イスラエルの軍事的目標には大した影響をもたらさなかったかもしれない。しかしそれでもイスラエルは、ファラのツイートや国際社会の抗議デモを深刻に捉えた。

ファラは「ホモ・デジタリス」の典型だと言える。

この続きを見るには...
この要約を友達にオススメする
一緒に読まれている要約
物語は人生を救うのか
物語は人生を救うのか
千野帽子
未 読
リンク
言葉は凝縮するほど、強くなる
言葉は凝縮するほど、強くなる
古舘伊知郎
未 読
リンク
逆境に克つ!
逆境に克つ!
小巻亜矢
未 読
リンク
PLAY WORK(プレイ・ワーク)
PLAY WORK(プレイ・ワーク)
ピョートル・フェリクス・グジバチ
未 読
リンク
学びなおす力
学びなおす力
石川康晴
未 読
リンク
奇跡の経済教室【基礎知識編】
奇跡の経済教室【基礎知識編】
中野剛志
未 読
リンク
インテグラル理論
インテグラル理論
ケン・ウィルバー 加藤洋平(監訳) 門林奨(訳)
未 読
リンク
マネーの魔術史
マネーの魔術史
野口悠紀雄
未 読
リンク
今週の要約ランキング
1
リセットの習慣
リセットの習慣
小林弘幸
未 読
リンク
2
座右の寓話
座右の寓話
戸田智弘
未 読
リンク
3
「めんどくさい」が消える脳の使い方
「めんどくさい」が消える脳の使い方
菅原洋平
未 読
リンク
おすすめ要約診断
イチオシの本
出版社のイチオシ#080
出版社のイチオシ#080
2022.09.16 update
リンク
「説明術本」のテッパン3冊
「説明術本」のテッパン3冊
2022.09.13 update
リンク
「ばかげたことを!」罵倒するジョブズを変えたのは誰?
【ベストセラーのポイント解説】 「ばかげたことを!」罵倒するジョブズを変えたのは誰?
2022.09.09 update
リンク
出版社のイチオシ#079
出版社のイチオシ#079
2022.09.02 update
リンク
インタビュー
『攻殻機動隊』は未来の予言書だった?
『攻殻機動隊』は未来の予言書だった?
2022.09.20 update
リンク
DX推進の立役者が語る、未来を先取りする読書術
DX推進の立役者が語る、未来を先取りする読書術
2022.09.15 update
リンク
「哲学的ゾンビ」が、私の世界を変えた
「哲学的ゾンビ」が、私の世界を変えた
2022.09.08 update
リンク
ダイエットに何度も失敗する人は「因数分解」してみよう
ダイエットに何度も失敗する人は「因数分解」してみよう
2022.09.05 update
リンク
1
リセットの習慣
リセットの習慣
小林弘幸
未 読
リンク
2
座右の寓話
座右の寓話
戸田智弘
未 読
リンク
3
「めんどくさい」が消える脳の使い方
「めんどくさい」が消える脳の使い方
菅原洋平
未 読
リンク
人生の目標を見つけたい! 必要なのはやっぱりお金?
人生の目標を見つけたい! 必要なのはやっぱりお金?
2022.08.23 update
リンク
出版社のイチオシ#075
出版社のイチオシ#075
2022.07.15 update
リンク
『攻殻機動隊』は未来の予言書だった?
『攻殻機動隊』は未来の予言書だった?
2022.09.20 update
リンク
この要約をおすすめする
さんに『140字の戦争』をおすすめする
保存が完了しました