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物語は人生を救うのかの表紙

物語は人生を救うのか


本書の要点

  • 人間は生きている限り、物語を不可避的に合成してしまう生き物だ。

  • 一般的に物語として語る価値があるとされるのは、蓋然性の公準や道徳の公準から逸脱しているものだ。

  • 人間は、ノンフィクションにたいして必然性を求めることがある。物事は偶然に基づいて起きるにもかかわらず、そうしたできごとに対しても因果関係を見出してしまう。

  • ライフストーリーは単一なものではなく、自分で選ぶことができる。

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報告価値のある物語、ない物語

物語を合成する人間

NiseriN/gettyimages

「人間は物語を必要としている」とよく言われる。まるで、日光や水や酸素を摂取するように、物語を外から摂取する必要があるような言い方だ。だが著者は、人間は生きている限りストーリーを合成してしまうものだと考えている。二酸化炭素を作らずに生きていくことはできないように。

人は生きていく中で喜んだり楽しんだりするだけでなく、悲しみや怒り、恨みや羨望に苦しめられ、生きづらさを感じることもある。「あのときあのようなチョイスをしたから、現在の自分があるのだろうか?」「自分はなんのために生きているのか?」と、自分の現状の原因・理由を探したり、人生の意味や目的への問を立てたりしては、答を出せずに苦しむこともあるだろう。人間はできごとを勝手に繋(つな)いで、ありもしない因果関係を作っては、そのことで助けられたり苦しんだりする生き物なのだ。

人が犬を噛んだらニュースになるのはなぜか?

「犬が人を噛(か)んでもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースになる」という言葉がある。要するに、犬が人を噛むストーリーよりも人が犬を噛むストーリーのほうが語る価値があるということだ。しかし、なぜ人はそのように思うのだろうか。

米国の計算機科学者ロバート・ウィレンスキーは、ストーリーを語ることを正当化しうる理由や目標を「外的要点」と呼んだ。「犬が人を噛むのはよくあることだが、人が犬を噛むのはあまりないレアなことである」という事情がこのストーリーを語る理由である。社会における「蓋然性の公準や道徳の公準」から逸脱したできごとが、そのストーリーの外的要点となる。

マリー=ロール・ライアンは「尋常ならざるできごと、問題を孕(はら)んだできごと、あるいはけしからぬできごとこそ報告価値がある」と述べている。たしかにワイドショウや週刊誌には、起こる確率の低い珍しいできごとや、人の顰蹙(ひんしゅく)を買うできごとの話題がたくさん取り上げられている。報告価値とはすなわち、「つい自動的に続きを見届けてしまいそうになる」ということだろう。

蓋然性が低いことのほかに、道徳的に「けしからぬ」ことも報告価値が高い。その理由は、人類の進化の過程にあると考えられている。群れの中で道徳感情に反する者がいたとき、その事実を仲間にシェアし、処置を決定しようとしていたのだろう。

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【必読ポイント!】 物語と必然性

「ほんとうのこと」と「ほんとうらしいこと」

Choreograph/gettyimages

暴君として知られるネロは、配下の者に実母を殺させた。この事件についてオービニャック師は、フランス古典演劇の理論書『演劇作法』において、「このような場面を劇として上映しても、観客は引くだけでおもしろがらないだろう」と書いている。真実である実話が「ひどい話」の場合、人の耳目を引くことにはなる。ただしそれを劇にすると、観客は「ありうるはずがないから信じ難い」と感じる。だから舞台には、真実らしさが求められるのだという。

この主張には、ふたつのポイントがある。まず、「ほんとうのこと」と「ほんとうらしいこと」は違うということ。

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要約公開日 2019.10.08
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