NOKIA 復活の軌跡

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おすすめポイント

iPhoneやアンドロイドなどのスマートフォンが登場して10年以上になる。次々に登場する新機種やサービス、機能などが話題になる中、華やかに進化するスマートフォン業界の裏側では、何が起きていたのか?

かつて携帯電話業界で世界トップの座をほこり、フィンランドを代表する企業であったノキア。そんなノキアは、スマートフォンの新しい流れに乗ることができず、倒産がささやかれるほどに追い詰められていた。しかし大胆にも、ノキアの心臓部であったD&S事業を手放すことで、見事な復活を果たしたのだ。本書では、その凋落から復活までの舞台裏を知ることができる。

本書の読みどころは何といっても、著者であるリスト・シラスマ氏の際立ったリーダーシップだろう。著者は、ノキア取締役会のメンバーの中で最も若かった頃から、現実に向き合おうとしない取締役会に疑問を呈していた。そして、いよいよノキアが窮地に立ったとき、会長職を引き受けたのだ。

本書によると、フィンランドの国民性を表す言葉に「sisu(シス)」というものがあるという。これは、忍耐力、強靭さ、不屈の精神、決断力、粘り強さなどを示す、フィンランド人独自の品格を表す言葉だそうだ。日本語の我慢や根性とは似ているようで少しニュアンスが異なるようだが、相通じるものがあるのではないだろうか。

どんなに追い詰められた状況であっても諦めることなく、見事に「sisu」の精神を貫き、ノキア再生へと導いた著者のリーダーシップは、必見である。

ライター画像
中山寒稀

著者

リスト・シラスマ(Risto Siilasmaa)
ノキア会長。1966年生まれ。ヘルシンキ工科大学修士(理学)。
1988年、セキュリティサービス会社「F-Secure(エフセキュア)」を創業。2006年まで社長兼CEO、以降は会長を務める。2008年、ノキア取締役に就任。2012年、同会長に就任。2013年9月から2014年4月にかけて、暫定CEOを兼任。

本書の要点

  • 要点
    1
    アップル、グーグルの台頭により、ノキアは追い詰められていった。しかし当時のノキア取締役会はその事実に向き合おうとしなかった。
  • 要点
    2
    ノキアの会長となった著者は、ノキアを再び勝てる企業にするために、まず取締役会の体質の変革に着手した。
  • 要点
    3
    ノキアが再生のために選んだ道は、心臓部ともいえるD&S事業をマイクロソフトに売却することだった。この判断は、メディアや投資家などから、ノキアの見事な再生という位置づけで認識された。

要約

凋落

迫り来る危機
Mariakray/gettyimages

2008年、ノキアは世界トップの座にあった。かつて名もなき企業だったノキアは、新産業だった携帯電話業界の中で躍進を続けていた。ノキアの携帯電話は最先端技術と艶(あで)やかなデザインを備えており、世界のスマートフォン市場シェアの過半数を占めていたのだ。新聞や雑誌はノキアを「技術の神童」と称し、ビジネス通は同社の理念である「ノキア・ウェイ」をほめたたえた。

42歳の若さでそんなノキアの取締役会に参加することになった著者は、胸を躍(おど)らせた。最初の取締役会の開催が待ちきれないと感じるほどに。

その一方で、アップルは2007年に「iPhone」を発売し、かつてのノキアのように成功していった。翌年にはグーグルがオペレーティングシステム(OS)「アンドロイド」を導入し、リサーチ・イン・モーション(RIM)がスマートフォン「ブラックベリー」で急躍進する。そんな中、ノキアが新しい競争にうまく対応できていないことが明らかになっていったのだ。

憧れから疑念へ

取締役会に出席するうちに、著者が当初抱いていた憧(あこが)れは疑問や困惑、疑念へと変わっていった。アップルとグーグルが市場シェアを伸ばし、優秀な人材を引きつけて将来に向かって投資している一方、ノキアのシェアは縮小し、従業員をレイオフ(一時解雇)して投資を減らしている。それなのにノキアの取締役会は、失敗の原因を探すこともなく、新しい進路や代替案の議論もしていなかった。著者が取締役会でそうした議論を切り出そうとしても、ことごとく無視された。

著者が取締役を務めた4年間でノキアの時価総額は90%以上が失われ、2012年上半期の営業損失は、20億ユーロを超えた。1万人の労働者をレイオフした1年後には、ノキア市場最大規模となるレイオフを計画し、株価はたったの3ユーロになっていた。

2008年に称賛の嵐だった年次株式総会は、2012年には殺伐とした雰囲気に包まれていた。投資家はノキアを投資不適格銘柄とみなし始め、マスコミでは、倒産時期の憶測が飛び交うほどだった。

【必読ポイント!】再起

パラノイア楽観主義者であれ
taa22/gettyimages

2012年、オッリラが会長を辞任し、著者がその座を引き継ぐこととなった。会長になるには難しい時期である。その中で進み続けるために活用したのは、起業家的リーダーシップの哲学だ。

起業家的リーダーシップの哲学は、著者が18年間かけて形成し、磨いてきた概念である。受付のスタッフからCEOまで誰にでも活用できるもので、あらゆる人や組織に必要な資質だ。

起業家的リーダーシップには、10個の要素がある。

(1)説明責任を負う

(2)事実を直視する

(3)粘り強さを持つ

(4)リスクを管理する

(5)学習依存症になる

(6)焦点をぶらさずに保つ

(7)地平線の先を見る

(8)好感を持ち尊敬する人たちでチームをつくる

(9)「なぜか」と考える

(10)夢を見ることを絶対にやめない

起業家的リーダーシップの根幹で求められているのは、パラノイア楽観主義者として振る舞うことだ。

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要約公開日 2019.11.18
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