麺の科学

粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ
未読
麺の科学
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粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ
未読
麺の科学
出版社
定価
1,100円(税込)
出版日
2019年07月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本だけでなく、世界中で食べられている麺。うどん、そば、ラーメン、スパゲッティなどがその代表例だが、それらはさらに細分化され、その全てを把握するのは難しいほど多岐にわたっている。

あまりに身近な食材だからか、一部のプロ向けの情報を除くと、それぞれの麺の出自、個性、調理法などを科学的根拠のもとで知る機会は極めて限られていた。そんな「麺」の全貌を、一般読者向けに紹介してくれる貴重な一冊が本書だ。

本書は、工学博士であり、日清製粉株式会社でパスタなどの食品の研究開発に携わっていた著者によるものだ。その内容は一文ごとに無駄がなく、それでいて読者を麺の世界へとやさしく導いてくれる。あらゆる麺の解説はもちろん、その素材である小麦や蕎麦粉の起源や種類、さらには麺をよりおいしく食べるための調理法までが語られる。

こう書くと、「プロや料理好きのための本なのだろう」と思う方もいるかもしれない。だが本書は、料理をしない方にも役に立つものであると思う。

食事について、我々はつい「どの店がうまい/うまくない」「どの料理がうまい/うまくない」と、既存情報からの先入観や感覚だけで語りがちだ。だが本書をしっかり読めば、麺の製造側や調理側の事情も鑑みることができる上、食、特に麺に関しては、新しい視点や感想が持てるようになるに違いない。

ライター画像
松田義人

著者

山田 昌治(やまだ まさはる)
工学院大学先進工学部応用化学科教授。工学博士。
1953年生まれ。1977年京都大学工学部化学工学科卒業、1979年同大学院修士課程修了。秋田大学鉱山学部資源化学工学科助手などを経て、1988年日清製粉株式会社に入社し、パスタなど食品の研究開発に携わる。2010年より現職。専門は、化工物性・移動操作・単位操作、食品化学など。テレビのコメントでも活躍。著書に『トコトンやさしい粉の本』(共著、日刊工業新聞社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    小麦は、気候条件の厳しいところでも栽培できること、水と混ぜて練れば多様な食品を作れることから広く普及し、人類の社会を狩猟採集社会から定着農業社会へと変化させた。
  • 要点
    2
    素麺と冷や麦とうどんの違いは、太さにある。素麺は長径1.3mm未満、冷や麦は長径1.3mm以上1.7mm未満、うどんは長径1.7mm以上のもののことをいう。
  • 要点
    3
    うどん、冷や麦、素麺、中華麺、スパゲッティ、日本蕎麦のゆで方の基本は、沸騰状態を保つことだ。吹きこぼれを防いで沸騰状態を保つには、鍋の底に新品の灰皿をひっくり返して置く方法もおすすめだ。

要約

麺を作る粉の科学――小麦粉

小麦の起源

パン類、麺類、菓子類など、小麦粉から作られる食品は多い。世界における小麦の生産量(2016年)は7億4900万トンで、トウモロコシの10億6000万トンには及ばないが、米の7億4100万トンに並ぶほどだ。小麦が広く普及した理由としては、気候条件の厳しいところでも栽培できること、水と混ぜて練れば多様な食品を作れることが挙げられる。

人類が小麦を栽培し始めたのは約1万年前、新石器時代のことだ。その結果、人類の社会は一大変革を遂げることとなる。動植物を追い求めて移住を繰り返す狩猟採集社会から、定住して農作物を収穫する定着農業社会になったのだ。

小麦の伝播と食べ方
kinpouge05/gettyimages

小麦の栽培が始まったメソポタミア文明の時代、小麦は、種子ごと粥状にして食べられていたと考えられている。時代が下り、エジプト文明の頃には、粉砕して皮部と胚乳部を分離して食べる習慣があったようだ。エジプト文明の壁画には、石でできたサドルカーンという粉砕器を使って穀物を粉砕している様子が描かれている。

小麦はやがて各地に広がっていく。ヨーロッパへは約8000年前にアナトリア(現在のトルコ)を経由してギリシャへと伝わった。それから1000年かけて、バルカン半島を経由してドナウ川を遡上する経路と、イタリア、フランス、スペインを横断する経路で伝わり、約5000年前にイギリスとスカンジナビア半島に達したとされる。

反対方向へは、シルクロードに沿ってイランから中央アジアを通り、約3000年前までに中国に達した。またエジプトを経由してアフリカ大陸にも広がっていった。

大西洋を越えたのは比較的最近のことだ。スペイン人によって1529年にメキシコへ、イギリス人によって1788年にオーストラリアにもたらされた。日本にやってきたのは、約2000年前の弥生時代のことのようだ。弥生時代の遺跡から炭化した小麦が見つかっている。

小麦が世界各地に広がると同時に、食べ方も変化した。小麦の皮部は臭気があり食べにくいため、皮部と胚乳部を分離しなければならない。分離のために、前述したサドルカーンに始まり、石臼を経て、一度に多量の小麦を粉砕できるロール式粉砕機が使われるようになった。やがて近代製粉法が確立されると、小麦粉を少しずつ粉砕しては篩(ふる)い分けるという製法に変わった。

麺を作る粉の科学――蕎麦粉

植物としての蕎麦
jppress/gettyimages

日本蕎麦は、独自の食文化だ。だが植物としての蕎麦は、海外でも多く栽培され、麺以外の形で食されている。

蕎麦(ファゴピラム エスクレンタム:Fagopyrum esculentum)は、タデ科ソバ属の一年草である。蕎麦の花は美しいが、その臭いは強烈だ。これは、受粉にあたって、ミツバチやアブといった昆虫の力を借りるためではないかと考えられている。

蕎麦は、種まきをしてから70日~80日程度で収穫でき、痩せた土地や酸性土壌でも育つ。そのため日本では、救荒対策(飢饉対策の食べ物)として5世紀から栽培されてきた。

麺の原料としての蕎麦

今日「蕎麦」と呼ばれているのは、蕎麦切(そばき)りだ。

現在のような蕎麦切りが食べられるようになったのは、16世紀末のこと。

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要約公開日 2019.11.23
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