「値づけ」の思考法

買いたくなる価格には必ず理由がある
未読
「値づけ」の思考法
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買いたくなる価格には必ず理由がある
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「値づけ」の思考法
出版社
日本実業出版社

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出版日
2019年07月19日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「利益の95%は価格戦略で決まる!」本書を手に取るときに、オビのキャッチコピーが真っ先に目に入る。著者である小川氏は普段は大学院でブランド戦略やマーケティング理論を教えている専門家で、これまでにも多数の書籍を執筆している。その著者によると、「スマートな値づけ」によって得られる利益の増加効果は、宣伝効果やその他の販促プロモーション活動などによって得られる効果の30倍以上にも及ぶのだという。

普段買い物をする時に、値段を見ないことはほぼないだろう。もちろん最終的な購入はその商品の質や他の商品との比較、自身の気分など様々な要素が絡み合って決定することになるが、価格は何よりも重要だ。お客がつい手を伸ばしてしまうような価格設定こそがマーケティングや店舗担当者の腕の見せ所であり、企業の業績をも左右する。本書では様々な企業の事例を紹介しながら価格戦略の極意を丁寧に説明している。本書を読めば、世の中の商品がなぜこの値段で売られているのか理解が深まり、自社の戦略に活かす応用力が培われるに違いない。

また、最近はメルカリのようなフリマアプリなどの流行により、誰でも簡単に物を売ることができる時代だ。いくらで出品すれば自分の利益を最大化できるのか、理論を意識して決めてみることで、少しずつビジネスのセンスも養われていくのではないだろうか。

ライター画像
山下あすみ

著者

小川 孔輔 (おがわ こうすけ)
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。マーケティング学界の大家。特にブランド戦略の分野では知名度抜群の学者。1951年秋田県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学院中退後、法政大学経営学部研究助手、同経営学部教授などを経て、現職。日本フローラルマーケティング協会会長(創設者)、オーガニック・エコ農と食のネットワーク(NOAF)代表幹事、株式会社アールビーズ社外取締役。
著書に『よくわかるブランド戦略』(日本実業出版社)、『マーケティング入門』『ブランド戦略の実際』(以上、日本経済新聞出版社)、『誰にも聞けなかった値段のひみつ』(日本経済新聞社)、『マクドナルド 失敗の本質』(東洋経済新報社)、『しまむらとヤオコー』(小学館)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    競争力の高いユニクロなどの企業では、まず消費者にとって「値ごろ感」のある価格を決め、それでも利益が出るように原価を逆算し、その範囲内で商品を作っている。
  • 要点
    2
    販売をあえて限定することで購買までのハードルを高め、消費者に商品を手に入れたいという欲求を増大させる戦略もある。企業には、複雑な消費者心理を巧みに刺激することが求められる。
  • 要点
    3
    企業は値引きやおまけなど様々な販促戦略を打ち出すが、「即時型」「延期型」のように効果の違いを理解した上で、複数の手法を組み合わせながら最適な戦略を打つ必要がある。

要約

【必読ポイント!】 買いたくなる価格には理由がある

コンビニ・コーヒーの「価格破壊」はなぜ起こった?
start08/gettyimages

コーヒーといえば、ドトールやスターバックスが日本のカフェ業界を牽引してきた。その他にもルノアールや珈琲館などが熾烈な競争を繰り広げているが、そこに参入したのがコンビニだ。たとえばセブンイレブンは「セブンカフェ」を展開し、1杯100円という破格の値段で淹れたてのコーヒーを提供している。ローソンでは「マチカフェ」、ファミリーマートでは「ファミマカフェ」がある。

なぜコンビニ各社がコーヒー市場に参入したかというと、コーヒーは単体の商品として利益率が高いことに加え、お客の「ついで買い」でデザートやサンドイッチによる儲けが見込めたからだ。また、コーヒー豆が供給過剰で価格が急落している背景もある。

カフェ業界自体は成熟産業で、品質などでの差別化は難しく、勝負を分けるのはサイドメニューであるといっていい。特にデザートは近年コンビニ各社が力を入れているジャンルで、このままだとカフェチェーンは食われてしまう可能性もあり、目が離せない。

価格帯が狭いユニクロが繁盛するのはなぜか?

競争に強い企業では、スピーディでひとひねりした価格のつけ方がされている。

著者が注目するユニクロ、無印良品、ハニーズ、しまむら、ニトリに共通するのは、プライスライン(価格帯)がとても狭いということだ。これにより、お客の「考えるコスト」を軽減している。価格がシンプルに1つか2つくらいに設定されていると、商品ごとに品質や価格を見比べて検討する必要がない。

さらに絶妙なのはその価格設定で、思わず商品に手が伸びる「値ごろ感」がある。こうした企業では、まず市場調査などの手法を使って消費者にとって値ごろ感のある価格を決め、その設定後に利益が出るように原価を逆算し、その範囲内で商品が作れるように調達先や加工方法を決める。これを「原価逆決め方式」と呼ぶ。なお、電力・ガス会社などでは必要なコストに一定の利益を乗せて価格を決める「原価積み上げ方式」が採用されている。

「俺のフレンチ」と「スシロー」の共通点

本格フレンチなのに居酒屋並みの値段で食べられるということで話題となった「俺のフレンチ」というチェーン店がある。普通のフランス料理店はせいぜいランチ1回転ディナー1回転だが、「俺のフレンチ」は夜だけで3.5回転するという。粗利が低くても客数が多いため赤字になりにくいのである。

「俺のフレンチ」の魅力は50~60%という高い原価率にある。一流店と同じ品質の肉が安く出されるのでお客が殺到したのだ。ただし同時に、一品料理主体の居酒屋スタイルのメニューなどの工夫で高い回転率を実現している。

同じ戦略をとっているのが回転寿司の「スシロー」だ。品質のいいネタを高原価率・低価格で提供することで、粗利は薄くても回転率を高めて高収益を確保している。こうした戦略は、最近ではプレミアムの牛丼店やファストフード店でも採用され始めている。

スケール重視の低価格戦略

格安ラーメン「幸楽苑」の薄利多売戦略
enterphoto/gettyimages

440円という格安ラーメンで支持を集めているのが「幸楽苑」だ。幸楽苑は、麺やチャーシューを

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要約公開日 2019.12.18
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