5Gサービスが始まることで何が変わるのだろうか。5Gを4Gと比較した場合の技術的な特徴として、「超高速、低遅延、多数同時接続」が挙げられる。これ以外にも技術的な違いは多く、5Gと4Gは似て非なるものと考えたほうがよい。ソフトウェア技術によりネットワークを仮想化するという、5Gがもつネットワーク・スライシングは、その代表例といえるだろう。両者が別物である以上、事業開発とその難易度も違うものだ。4Gが広く普及する中、5G時代に何が差別化要因となり、何が新たな価値として認められ得るのか、問い直さなければならない。
では5Gで事業開発を進めるうえで、理解しておくべき点は何か。最も重要なのは、5Gが新しいマネタイズプラットフォームだということだ。通信事業者がサービスから対価を得るために巨大な集金装置として機能し、さまざまなサービスの徴収代行者の役割を担う可能性がある。さらには、5Gがフルコネクテッドである点も押さえておく必要があるだろう。4Gの世界では、スマートフォンやパソコンを覗き込まなければ4Gサービスは利用できない。一方5Gでは、フル(どんな時でも)コネクテッド(接続している)な世界が待っているのだ。
5Gが普及すると、街のあちこちに仕込まれたセンサーやディスプレイが、ネットワークへの常時接続を前提に稼働するようになる。従来は何もなかった空間がどんどんコネクテッド化し、空間自体がネットワークコンピュータになっていく。こうして私たちは、スマートフォンやパソコン画面といった「窓」の外側にいることになるのだ。
ではこうした5G環境の未来はどのようなものか。まず、生活環境にコンピュータやセンサーが溶け込んでいるので、コンピュータを使うという自覚なしに様々なサービスを受けられるようになる。VR/AR用のヘッドマウントディスプレイやスマートスピーカーといった新しいデバイスは、より身近なものになるだろう。このような5Gの世界では、リアルとバーチャルの境目が曖昧になる。つまり、すべてがシームレスになっていく。いずれは、「デジタルを含めたすべてがリアル」という世界が、5Gによって実現することになる。
くわえて、リアル空間の情報がデジタルデータとして得られるようになると、人工知能の予測精度は向上する。こうして、社会機能に予測が反映される「予測前提社会」が訪れることとなる。もはや5Gの世界にはスマートフォンは必要ない。「窓」を覗き込まなくても、自らがデジタル化した環境の中に身を置き、意識することなくサービスを享受できる世界が待っているのだ。
それでは5Gはどのように普及するのか。一般的に、モバイル通信規格のライフサイクルは、実際に普及が始まって完全に終了するまで20年を要する。その中でも旬の時期は、最初の10年だ。それでは、5Gにとって旬の時期にあたる2020年から2030年に、5Gはどのような形で広まるのか。ここでは、ガートナー社が提唱する「ハイプ・サイクル」に沿って説明する。
2019年後半は、5Gは「黎明期」でありながら、「過度な期待」のピーク期に該当する。実際に、新聞やテレビで5Gを取り上げない日はなく、「5Gバブル」とも呼べるような様相を呈している。5Gへの期待は、モバイルインターネットに飽きつつあるユーザーの、次なる変革に向けた渇望の表れなのかもしれない。
このような黎明期とピーク期に注目される産業は、ゲームと動画配信の2つだ。すでにゲーム開発の取り組みは活発化しており、グーグルやアップルがゲームプラットフォームの立ち上げを発表している。また、ゲームの先には動画配信が視野に入ってきている。
3,200冊以上の要約が楽しめる