ひとりの妄想で未来は変わる
VISION DRIVEN INNOVATION

未 読
ひとりの妄想で未来は変わる
ジャンル
著者
佐宗邦威
出版社
定価
1,980円(税込)
出版日
2019年12月23日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
5.0
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ひとりの妄想で未来は変わる
ひとりの妄想で未来は変わる
VISION DRIVEN INNOVATION
著者
佐宗邦威
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定価
1,980円(税込)
出版日
2019年12月23日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
5.0
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レビュー

「妄想」という言葉には、なんだかよからぬことのような感じがして身構えてしまう、そんな響きがあるかもしれない。だが本書でいう「妄想」とは、「こんなことができたらいいな」とか「こんな世の中になったらいいな」という「希望」のようなものだ。働く人ならば誰しも、大なり小なりこのような「妄想」を抱いて、日々を過ごしているのではないだろうか。

しかし旧来的な企業だと、そうした妄想を実現させるのは難しい。それどころか「個人の主観は排除するべき」という風潮すらあるように思われる。著者は実現されない「妄想」を「モヤモヤ」と表現し、多くの企業人が抱えていると指摘する。

だがいま潮目が変わりつつあるのも確かだ。情報革命によるインフラが社会全体に波及する中で、既存のものを再現性高く生産し続けるトップダウン式の「生産する組織」は限界を迎えつつある。著者はいまこそ意志を持った仲間が有機的につながり、ボトムアップ式の「創造する組織」へ転換するべきだと主張する。

本書は企業内でイノベーションを起こす方法について、著者が行なった大企業での変革を実例に解説している。既存事業を進めながら新規事業を立ち上げる難しさについて言及しつつ、「起業」「独立」とは違うかたちでイノベーションを起こすことのインパクトが語られており、企業にいる者にとってはとても勇気づけられるはずだ。

日々「モヤモヤ」を抱えるビジネスパーソンにとって、「妄想」を形にするための道しるべとなる一冊である。

池田明季哉

著者

佐宗 邦威(さそう くにたけ)
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー
大学院大学至善館准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。企業のミッションやビジョンのデザイン、ブランドデザインなど、ビジョナリーの妄想を起点にした企業の存在意義の再構築による未来創造プロジェクト全般を得意としている。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東京急行電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行っており、個人のビジョンを原動力にした創造の方法論にも詳しい。著書に『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディアパブリッシング)、『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    イノベーションは、既存のものを再現性高く生産し続ける「生産する組織」ではなく、想いやビジョンを持って集まった人々が有機的に結びつく「創造する組織」で生まれる。
  • 要点
    2
    新しいものを生み出すには、「人」「場」「意志」「創造」の4つが必要である。フラットな仲間が集まる場に、ビジョンやミッションなどの意志が付与され、外部と共創することで創造が行われていく。
  • 要点
    3
    「創造する組織」では、市場分析からの戦略ではなく、人の意志により方向性を決める。「生産する組織」で不要とされてきた、働く人ひとりひとりの主観が重要になるのだ。

要約

【必読ポイント!】 「創造」が生まれる組織づくりへ

「妄想」からイノベーションへ
alphaspirit/gettyimages

ここ最近、しきりにイノベーションが重要と言われている。だが多くの経営層は、具体的な案を持たないまま変革やイノベーションの号令を出しているし、実際に現場で行われている施策も小手先のものにすぎない。いま根本的に新しいモデルが求められている。

日本のビジネス界には、新しいアイデアを持ちながらそれを形にする場がないという「モヤモヤ」を抱えている人が多い。イノベーションとは、ひとりの人間の「モヤモヤ」が妄想へと発展し、その青写真を描くために構想を練ることから始まるものだ。

ビジネス界におけるイノベーションの対象分野は、ユーザー体験を中心にした軽いものから、技術をユーザー価値に翻訳したうえで社会に実装するという、インフラそのものを再構築する重いものへと変化している。新たなコンセプトを「構想」することから、新たなコンセプトを広げるために組織を変化させ、社会に「実装」していく――私たちはそんなイノベーション実践の時代に突入している。

「生産する組織」と「創造する組織」

企業内イノベーションの世界では、新規事業と既存事業は相容れないものだ。このふたつはそれぞれ、「創造」と「管理」というまったく異なる原理で動いているからである。

「管理」は産業革命によって生まれた「モノをつくるための会社」、すなわち「生産する組織」を合理的に運営するための手法だ。それに対して「創造」は情報革命によって生まれた「知識やアイデアをつくるための会社」、すなわち「創造する組織」における日常の営みである。

「生産する組織」ではトップが資本を投じ、トップダウンで生産目標が決められる。短期間で安定して目標を達成するため、各工程に人を割り振りし、給料により人を管理する。ここでは分業により仕事を標準化し、生産の安定化・最大化を図る。一方で「創造する組織」は、長期的に新たなアイデアや事業などを通じて、新しい価値を生み出し続けることを目的とする。生産のための設備は人であり、人のエネルギーによって駆動するため、アウトプットは安定しない。アイデアとアイデアの出会いにより、突然変異のように創造することが営みの中心だ。

イノベーションの現場の常識が既存の管理型の人間に理解されないのは、このふたつの世界がまったく異なっていること、またそれらがどう異なっているのかが共有されていないためなのである。

創造の「場」づくりのヒント

プロジェクトを「自分事」化できる仲間を集める
nd3000/gettyimages

すでにビジネスモデルができあがっている組織では、トップが立てた戦略に合わせて組織構成を決め、役割にあわせて人をはめこんでいく。一方で新しい仕組みを創造しなければならないイノベーションの現場では、「組織は人に従う」ものだ。事業オプションが複数ある場合、事業性よりも事業リーダーとの相性がいいかどうかが、最終的に成否を分けることが多い。新たなものを生むとき、リソースは何よりも「人」なのである。

トップダウン型の組織では、人は部品としての役割をまっとうすることを求められるため、「どんな世界をつくりたいか」といった美意識を含む主観は出さないほうがいい。しかしイノベーションの現場では、こうした主観こそが原動力となっていく。

なによりも重要なのは、プロジェクトが「自分事」になっているかどうかだ。

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