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売上を、減らそう。の表紙

売上を、減らそう。

たどりついたのは業績至上主義からの解放


本書の要点

  • 1日100食限定にし、それ以上の売上を諦めれば、従業員もお客様も満足できる経営が実現できる。

  • 100食限定だからこそ、早く帰って、その後の時間を自由に過ごせる。これが最高のインセンティブとなる。

  • 「誰がやってもできる仕事」にこだわることで、マイノリティ人材も活躍でき、従業員、お客様両方のダイバーシティが実現した。

  • 1日100食という目標以外すべての数字を捨てたことで、業績至上主義から解放された。

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「100食限定」だからこそのメリット

厳しい飲食業界の現実

佰食屋

国税局の発表する民間給与実態統計調査によると、業種別の平均年収で「宿泊業・飲食サービス業」は最も低い253万円だった。慢性的な人手不足、そしてそれを補うための過重労働。にもかかわらず、賃金は上がらず疲弊していく。これが飲食業界の現実だ。

売上を上げ、利益を得るために、経営者は利益率の高いアルコールを販売しようと考える。それには夜間営業が不可欠だ。夜はお客様によって飲食の時間がまちまちになるので、営業時間が長くなる。また、同じだけテナント料を払うなら、長時間営業したほうがいいという発想になる。そこからランチ営業、朝食営業、さらには24時間営業へと膨らんでいく。こうして朝から深夜までの長時間勤務、年中無休という理不尽な状態が生まれる。

生活の根幹を担う「食」に関わる人たちが、しっかりと休めず、家族と過ごす時間もままならない――。著者は佰食屋を通じて、こうした現状を打破し、理想とする働き方を実現しようとした。

100食限定、それ以上は売らない

佰食屋とは、サービスを極限まで絞ることで売上を上げている店だ。「100食限定」は、サービスを絞り、それ以上の売上を諦めることでもある。この方針により、想像を超えたブレークスルーが生まれた。具体的なメリットを紹介していこう。

まずは従業員が早く帰れることだ。佰食屋の営業時間は、11時から14時半または15時まで。最長でも4時間で100食を売り切る。そのため正社員でも17時45分には帰ることができる。

また、正社員は勤務時間を自分で決められる。子育てや介護など、個々人の状況に合わせて柔軟に対応できるのが特徴だ。

「早く帰れる」は金銭以上のインセンティブ

佰食屋は「営業時間」ではなく、「売れた数」を区切りにしている。通常の飲食店では、忙しい日になると労働時間が延び、従業員は次第にやる気を削がれてしまう。一方、売る上限を決めていれば、「お客様が多い日=忙しくない日」となる。佰食屋では整理券配布の仕組みをとっているが、お客様が早く集まれば、その分整理券を早く配り終えられる。よって、営業時間中は厨房と接客に集中しやすいのだ。早く帰れるために、通常は敬遠されがちな土日祝日の勤務も、従業員は進んで行う。早く帰れることは、それほど魅力的なインセンティブなのである。

人生の幸福度を決めるカギは「自己決定権」だ。就業時間や働き方、仕事内容、役職、そして帰宅後の時間の使い方を、すべて自分で決められる。それが納得のいく幸せな人生につながっていく。

「毎日を丁寧に暮らしたい」と願う人は多いが、そのためには物理的な時間が必要だ。心の余裕と時間は、ベーシックインカム以前に、人生において保障されるべきものである。

100食限定で「フードロスほぼゼロ化」を実現

佰食屋

整理券配布、100食限定というビジネスモデルは、フードロス削減にも効果的だ。佰食屋では、電話やインターネットによる予約を一切受けつけていない。それは、無断キャンセルを減らすためだ。整理券を配る際は、必ず客と従業員が顔を合わせる。その時点で「顔なじみ」の関係が生まれ、無断キャンセルの発生が格段に減るのだ。そしてフードロスが少ない分、食材の質にお金をかけられる。

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要約公開日 2020.02.20
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