定年消滅時代をどう生きるか

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定年消滅時代をどう生きるか
出版社
出版日
2019年12月20日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

今後、定年は70~75歳まで延長される見込みだ。一方、採用においては、新卒一括採用から通年採用、中途採用重視の流れが加速し、労働市場は流動化していくだろう。年功序列・終身雇用という日本的雇用はなくなり、定年が消滅した生涯現役時代がやってくる。

定年が延長されると、企業に勤める期間は約50年間。その一方で、企業の平均寿命は20年を割り込むことが予想されるので、わたしたちは計算上、3つの会社や仕事を経験することになる。著者によると、これは「人生と仕事を何度もやり直しができる世界」の到来を意味するという。本書は、定年消滅時代を明るく前向きに歩んでいくための指南書という側面も持っている。

このような世界で充実した人生を送るためには、わたしたちには不断の「学び直し」が求められる。また3回仕事を変えるのであれば、3つのスキルが求められる。そう聞くと尻込みするかもしれないが、これはそれほど難しいことではないのだという。

将来的に、すべての物事がデジタル化することが予測されている。変化の激しい時代において、今後求められるスキルを正確に予言できる人はいないだろう。そのため、著者によると、あらゆる力を包括した力=「思考力」を身に付けることこそがキャリア上の最強の戦略になるという。

それでは、思考力を磨くにはどうしたらいいのか。その答えが本書の結論となる。ぜひ本要約を読んで、著者の結論を確かめていただきたい。

ライター画像
しいたに

著者

中原圭介(なかはら けいすけ)
1970年、茨城県生まれ。慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。大手企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。近著に『AI×人口減少』(東洋経済新報社)、『日本の国難』 (講談社現代新書)などがある。ヤフーで「経済の視点から日本の将来を考える」、マネー現代(現代ビジネス)で「経済ニュースの正しい読み方」を好評連載中。

本書の要点

  • 要点
    1
    定年延長のメリットには、社会保障制度の維持、人手不足の緩和、健康寿命の延長、高齢者の将来不安の緩和などがある。
  • 要点
    2
    今後の日本においては、従来の「メンバーシップ型」の雇用契約ではなく、職務内容や勤務地が限定される「ジョブ型」が一般的になるなど、雇用形態が変化する。
  • 要点
    3
    定年消滅時代を生き抜くには、思考力を身に付ける必要がある。そのためには、IT機器から離れる時間を確保することと、読書を習慣づけることが効果的だ。

要約

日本から「定年」が消滅する

定年を延長することのメリット

日本の生産年齢人口は、絶対数でも人口比でも、大幅に減少していく。となると当然のこととして、現行の社会保障制度に綻びが生じるとともに、深刻な人手不足や消費の低迷をもたらし、日本経済をじわじわと蝕んでいくことが予想される。

こうした負の流れに抵抗する有効な手段として、平均寿命の延びに合わせた定年の引き上げが挙げられる。定年の延長には次のようなメリットが期待できる。

まず、年金の支給開始年齢を引き上げるなど、社会保障改革が進むこと。次に、就業者数が増えることで社会保障制度の支え手が増えるとともに、深刻な人手不足も緩和されること。健康寿命が延びることが期待されるので、医療費や介護費の削減につながること。そして、長期にわたって収入が確保でき、将来不安が和らぐことだ。

やがて定年は75歳に
RichLegg/gettyimages

2006年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、社員を65歳まで雇用する企業が増えた。さらにその後改正された内容では、2025年度までに社員を65歳まで雇用することが企業に義務づけられた。その結果、2008年から2018年の10年間で、60歳以上の就業者数は大幅に増えている。

さらに政府は、定年後の継続雇用を70歳まで引き上げる改正案を提出する予定だ。企業の人件費負担が増えるため、まずは「努力義務」とされる予定だが、おそらく5年以内には義務化されるのだろう。

政府の最終的な目標は、日本社会に75歳定年を定着させることだと考えられる。2030年代になる前には、75歳までの雇用が「努力義務」となり、その後は75歳までの雇用が義務化されることになるはずだ。

高齢者の定義が変わる

誰もが75歳まで働くようになれば、高齢者の定義も「75歳以上」へと引き上げられることになるだろう。将来の人口推計に基づけば、2020年の65歳以上の総人口に占める割合は28.9%だ。だが75歳以上を高齢者とすれば、その割合は2030年で19.2%、2040年で20.2%と推計され、現在よりも小さくなる。

では、新たな定義における「高齢者(=75歳以上)」になる前に、どんな備えが必要だろうか。まず、早い段階で今後の人生の資金計画を立てておくことだ。より長く働き、収入を得られるようになったとしても、積み立て分散投資などといった長期の資産運用で定年後に備える必要がある。

もうひとつは、いまのスキルをアップデートする、新しいスキルを身に付けるといったトレーニングを怠らないことだ。スキルといっても、他人に何かをわかりやすく教えられるというのも、立派なスキルである。そのスキルが身に付いている人は、シニアになっても貴重な人材として扱われることになるだろう。

変わる日本の雇用

若者の価値観の変化
Orbon Alija/gettyimages

新卒者などを対象にした各種の調査によって、若者の仕事に対する価値観が大きく変化していることが明らかになりつつある。

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要約公開日 2020.03.10
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