ミルトン・フリードマンの日本経済論

未 読
ミルトン・フリードマンの日本経済論
ジャンル
著者
柿埜真吾
出版社
定価
968円(税込)
出版日
2019年11月29日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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ミルトン・フリードマンの日本経済論
ミルトン・フリードマンの日本経済論
著者
柿埜真吾
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968円(税込)
出版日
2019年11月29日
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明瞭性
4.0
革新性
4.0
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おすすめポイント

ミルトン・フリードマンといえば、「小さな政府のもと、自由経済市場で有効な金融政策が行われることで経済が向上する」ことを信条として、研究に留まらず政策提言まで行なった経済学者である。日本ではそれほど知られていないが、「負の所得税」や「教育バウチャー」といった概念を提案したのは彼であるし、「名目GDP」や「ヘリコプター・マネー」、「ナロウ・バンキング」など最近注目を集めているアイデアも、フリードマンに由来する。

戦後から晩年にかけて、フリードマンはしばしば日本経済を研究対象として分析や提言を行なってきたが、それらが顧みられることはほとんどなかった。そのなかには、現在から振り返ってみれば大きな有用性があったと思われるものも少なくない。にもかかわらず、フリードマンは冷血なマネタリストとして過小評価されているきらいがある。

本書はこうした考察を踏まえ、日本ではあまり高い評価を受けていないフリードマンの功績を正しく再評価しようとする意欲作だ。イデオロギーではなく実証的な研究により、経済学に多大なる貢献をしたフリードマン。彼の理論について理解を深めることは、日本の経済についての理解を深めるうえでも大きな助けとなるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

柿埜真吾(かきの しんご)
1987年生まれ。2010年、学習院大学文学部哲学科卒業。12年、学習院大学大学院経済学研究科修士課程修了。13-14年、立教大学兼任講師。現在、学習院大学大学院経済学研究科博士後期課程。主な論文に「バーリンの自由論」「戦間期英国の不況に関する論争史」などがある。本書が初の著作となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    20世紀の経済学の発展に大きく貢献した人物でありながら、フリードマンは日本だと過小評価されている。彼の思想を正しく再評価することが必要だ。
  • 要点
    2
    フリードマンは経済的自由と政治的自由に相関関係を見出し、旧共産諸国の民主化に大きな影響を与えた。
  • 要点
    3
    戦後の経済危機の多くは、貨幣の重要さを無視し、金融政策を十分に行わなかったために起きたものが多い。フリードマンの金融政策に関する提案を聞き入れていれば、そうした事態を回避できたかもしれない。

要約

ミルトン・フリードマンとは

その影響力と日本での低評価
metamorworks/gettyimages

ミルトン・フリードマン(1912〜2006)は、20世紀を代表する経済学者であるとともに、自由市場経済の重要性を説いた経済思想家であり、世界中に与えたその影響は没後も強く残っている。1976年にはノーベル経済学賞を授与され、死後10年以上経った今日でも、フリードマンは思想的な立場を問わず非常に高い人気を誇っている。彼の研究や思想には反対の立場を取る学者や政治家でも、その方法論や考え方に対する尊敬の眼差しは共通している。

フリードマンの活動の幅は経済に留まらず、教育バウチャーや負の所得税などのユニークな政策提言を行うなど、自由主義の思想家としても活躍した。教育バウチャーとは、子どもを持つ保護者に公立・私立を問わず使用できる学校教育の利用券を支給し、自由な学校選択ができるようにする制度であり、負の所得税とは、所得が基礎控除額を上回るときは従来と同じように税金を払うが、所得が基礎控除額を下回るときは補助金を受け取れる制度のことである。

ただし世界における彼への評価とは裏腹に、日本におけるフリードマンへの評価は決して高くない。しばしば国内において見受けられる彼への「市場原理主義者」や「弱者切り捨て」といったレッテル貼りの多くは、根拠が乏しいだけでなく、事実誤認が含まれていることが多い。実際のところ、フリードマンの言説は正しく理解されていないというのが国内の現状だといえる。

フリードマンの思想

実証分析重視の自由市場経済派

フリードマンは1912年にニューヨークでユダヤの家系に生まれ、学生時代は数学に傾倒し、保険数理士を目指していた。しかし30年代前半の恐慌のどん底にあった当時、喫緊の課題に関わりたいという思いから経済学を専攻し、経済学者としてのキャリアをスタートさせた。

フリードマンの考え方は一貫して、イデオロギーではなく事実から自由市場の有用性を提唱し、価値観ではなく実証分析によって明らかになった事実にもとづき、人々の合意を目指すというものだった。当時主流だった大規模計量経済モデルをフリードマンは使わず、国際比較や歴史的な分析といった幅広いアプローチから実証的な分析を行い、現実の経済問題の解決に貢献した。

マネタリストとしてのフリードマン
yuoak/gettyimages

フリードマンといえばマネタリストとして知られるが、その最も大きな業績のひとつは大恐慌に関する分析で、「金融政策が景気と物価に大きな影響を持つ」というのを実証したことだろう。それまで主流であったケインジアンの見方では、貨幣に重要性は見出されていなかった。ここでフリードマンが主張したこと、すなわち「インフレーションは貨幣的現象である」といったことなどは、現在のマクロ経済学主流派であるニュー・ケインジアンにも共通認識として受け入れられている。

日本においてマネタリズムの評価はきわめて低い。しかしこれは、いまではどの中央銀行でも使われていない「k%ルール」が、マネタリズムの理論的命題と混同されているためだといえる。

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