一生食える普遍的スキルが身につく
新規事業の実践論

未 読
新規事業の実践論
ジャンル
著者
麻生要一
出版社
NewsPicksパブリッシング 出版社ページへ
定価
1,980円(税込)
出版日
2019年12月06日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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一生食える普遍的スキルが身につく
新規事業の実践論
著者
麻生要一
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定価
1,980円(税込)
出版日
2019年12月06日
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総合
4.0
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革新性
3.5
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レビュー

リクルートの新規事業開発室長として1500件の新規事業に関わってきた、新規事業開発のプロによる一冊が登場した。何より最初に取り組むべきこと、創業チームの組み方、新規事業開発を立ち上げるための6つのステップなど、新規事業を始めるにあたって押さえておくべきポイントが網羅された、「新規事業開発の教科書」と呼ぶにふさわしい一冊である。

猛烈なスピードでビジネス環境が変化していく現代においては、仕事で身につけたスキルが急激に陳腐化したり、AIに仕事を奪われたりする可能性が現実味を帯びてきた。一方で、このような激動の時代を迎えたとしても、決して陳腐化しないスキルがある。それが、自分の頭で考え、自分で顧客を見つけ、自分で商売をするという、新規事業開発で身につくスキルなのである。そのスキルは、本書のサブタイトルにもあるように「一生食える普遍的なスキル」だといえよう。

「新規事業なんて自分には無理だ」と思う方もいるかもしれないが、著者が出会ってきた社内起業家たちも、必ずしも最初から意志を持っていたわけではないのだという。現場との対話を重ねるうちに、起業家として目覚めていく人たちも多いそうだ。

本書は、新規事業開発に関心がある方には何をおいてもお読みいただきたい、まさに必読の一冊である。「今のところ、新規事業開発にかかわる気はない」という方も、新規事業開発の実態やスキルを知っておけば、今後の業務に大いに役立てられるのではないだろうか。

木下隆志

著者

麻生要一(あそう よういち)
株式会社アルファドライブ代表取締役社長 兼 CEO

東京大学経済学部卒業。現在は、起業家、経営者、投資家3つの顔を持つ。
株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、IT事業子会社(株式会社ニジボックス)を立ち上げ、150人規模まで事業を拡大後、新規事業開発室長として約1500の新規事業を支援。スタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」を設立し、約300社の立ち上げを支援したのち起業家に転身し、同時多発的に創業する。2018年2月に企業内新規事業開発を手がける株式会社アルファドライブを創業。4月に医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行う株式会社ゲノムクリニックを共同創業。6月より「UB VENTURES」ベンチャー・パートナーへ就任しベンチャーキャピタリスト業を開始。9月に株式会社ニューズピックスにて非常勤執行役員に就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本企業がイノベーションを生み出せなくなったのは、社内の新規事業に投資しなくなったからだ。
  • 要点
    2
    新規事業を開発するにあたって最初にすべきことは、WILL(意志)の形成である。それは、「ゲンバ」と「ホンバ」に行くことによってなされる。
  • 要点
    3
    創業メンバーを選ぶときには、意志が同じで、役割の異なる少人数を選ぶことが重要だ。
  • 要点
    4
    新規事業には6つのステージがある。すなわち、ENTRY期、MVP期、SEED期、ALPHA期、BETA期、EXIT期である。

要約

日本企業とイノベーション

イノベーションと新規事業の関係
recep-bg/gettyimages

ソニーのウォークマンに代表されるように、かつて日本の製品はイノベーティブだった。日本企業がイノベーションを生み出せなくなったのは、この20~30年ほどの話だ。

では、なぜ日本企業はイノベーションを生み出せなくなったのか。その理由は、「社内で新規事業をやらなくなったから」というシンプルなものである。さらに言えば、社内の新規事業に「投資をしなくなったから」だ。

バブル崩壊や失われた10年、リーマンショックなどにより、短期的な利益が見込める既存事業に集中してきた日本企業だが、今は不景気を乗り越え、投資余力が出てきている。それなのに、社内の新規事業への投資は再開されないまま、スタートアップ企業など社外への投資予算が増えている。

日本企業がかつてのようにイノベーションを生むには、社員と社内プロジェクトへの新規投資をしなければならない。

「社内起業家」へと覚醒するWILL(意志)のつくり方

WILL(意志)は後天的に作り出せる

どんな会社であっても、きちんと投資を行えばイノベーションを生み出すことができる。そして、どんな「ふつうのサラリーマン」でも、イノベーションの担い手になれる。ただし、そのためには適切なプロセスを踏まなければならない。

まず、WILL(意志)を形成することである。WILLとは「誰の、どんな課題を、なぜあなたが、解決するのか?」という3つの質問に対する回答である。

この3つの質問に対して、最初から明確な答えを持っている必要はない。WILLは、ゼロの状態からでも作り出すことができる。最初にすべきことは、その一歩を踏み出すことだ。

「ゲンバ」と「ホンバ」に行く
Weedezign/gettyimages

人は、「とある行動・経験」を重ねることで、覚醒し、社会や業界、顧客課題の解決のために動き出す。このプロセスを著者は「コップから水があふれる」と表現する。「とある行動・経験」を重ねていくことを「コップに水を注ぐ」と捉えると、水があふれ出した瞬間に人は動き出す。この瞬間を、著者は「原体験化」と呼ぶ。

では、「水」に相当する「人を原体験化に導く行動・経験」とは何か。それは、「ゲンバ」と「ホンバ」に行くことだ。

ゲンバとは、「課題の根深い現場」のことだ。ゲンバに行くことで、取り組み領域が明確化されていく。ゲンバの一例として、東日本大震災直後の宮城県女川町(おながわちょう)が挙げられる。ボランティアとして現地を訪れた人が現地の人と対話することで、たくさんの起業家が生まれた。

ホンバとは、「新規事業開発の最前線」のことだ。ホンバに行くことで、WILLの形成が加速度的に速まっていく。テクノロジー分野におけるシリコンバレーや深セン、イスラエル、エストニア、企業における東京のスタートアップ企業や先進的な大手企業の社内ベンチャーもホンバと言える。

ゲンバとホンバを往復することで、原体験化へと近づくことができる。ゲンバで課題を把握し、ホンバで視座の高さや技術を体感し、またゲンバに戻る。その繰り返しによって、コップの中に水が溜まっていく。

最初にして最大の課題「創業メンバーの選び方」

チームの人数とメンバーの役割

新規事業開発は、一人ではできない。社内外の人を巻き込み、チームをつくる必要がある。では、新規事業を立ち上げようとしたとき、どんな人を口説くべきだろうか。

創業メンバーを選ぶ上で重要なポイントは「人数」と「役割」にある。一言で言うと、新規事業開発の創業メンバーは「WILLが同じで、役割の異なる少人数を選ぶ」のが王道だ。

まず、人数に関しては3人以下がベストである。創業チームの強さはコミュニケーションスピード、チームレジリエンス、マンパワーから構成される。メンバー人数が多くなるほど、情報を共有するスピード(コミニケーションスピード)は指数関数的に落ちてしまう。一方で、メンバーが多いほど、困難を乗り越える力(チームレジリエンス)と処理できる業務量(マンパワー)は増大する。

次に、役割だ。新規事業においては、少ない人数で難易度の高い業務をこなさなければならない。まずは、事業で必要となりそうな役割を書き出してみよう。そして、声をかけようとしているメンバーで業務をこなせるかどうかを検討する。その上で、「数ある役割のうち、その事業を立ち上げるにあたって、絶対に外部に委託することができない役割は何か」を考える。「外部に委託しない」とした役割こそが、その事業の競争優位性の源になっていく。

すべての創業チームに必要な3つの力

創業チームには、必ず備えるべき3つの力がある。これらのうちどれか1つでも不足すると、タイミングやアイディアがよくても、事業は立ち上がらない。

1つ目の力は、Network(ネットワーク:異分野をつなぎ、ネットワークする力)だ。自分とは異なる分野の人たちと人間関係を構築する力である。

2つ目は、Execution(エクゼキューション:あらゆる業務を、圧倒的に実行し、やりきる力)である。この力が欠けていると、新規事業は形になりえない。

3つ目は、Knowledge(ナレッジ:深く広い知識と教養を継続的に身につけていく力)だ。深い教養に加え、これから取り組もうとする領域に関する個別の知識が必要となる。

【必読ポイント!】新規事業の「6つのステージ」

(1)ENTRY期
imtmphoto/gettyimages

新規事業が育っていくプロセスは、6段階に分けられる。重要なのは、そのステージでやるべきこと「のみ」をやり、他のステージでやるべきことを、決してそのステージでやらないことだ。

1つ目のステージは「ENTRY期」である。

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