ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語

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ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語
出版社
サンマーク出版

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出版日
2020年01月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

落語は江戸時代に生まれ、現代に至るまで400年もの間日本人を魅了してきた伝統芸能である。古典落語は時代を超えて人の笑いと共感を呼ぶ普遍性の高い噺(はなし)であり、そこには日本の文化や価値観、日本人の変わらない本質が反映されている。

落語は、大物政治家や経営者、ビジネスパーソンが「人の心をつかむ術」を身につけるためのツールとしても活用されてきた。また、日常会話の中にもさりげなく落語のネタを入れると、洗練された印象を相手に与えることができる。

本書は、落語界のレジェンドのひとりである立川談志の弟子で、元ビジネスマンという異色の経歴を持つ立川談慶氏が、ビジネスエリートの教養のひとつとして落語を解説している。代表的な古典落語のあらすじや、落語界の昇進制度や派閥、伝説として語り継がれる有名な落語家の紹介など、この1冊を通読することで落語に関する基本的な知識を身につけることができる。

また、落語と同様、江戸時代から続く伝統芸能である歌舞伎や能、狂言、文楽、講談についても、落語と比較する形で紹介されているほか、国柄や人種によって異なる「世界の笑い」についても学ぶことができる。

江戸時代から400年続いてきた落語は日本人の心を映す鏡であり、「知性の塊」と言える。その落語を知っておくことで、これからビジネスしていく上での知恵や心構えをも自分のものにできるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

立川談慶(たてかわ だんけい)
1965年、長野県上田市(旧丸子町)生まれ。
慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社ワコールに入社。3年間のサラリーマン体験を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。2000年に二つ目昇進を機に、立川談志師匠に「立川談慶」と命名される。2005年、真打ち昇進。慶應大学卒業の初めての真打ちとなる。 著書に『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(KKベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、『談志語辞典』(誠文堂新光社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    落語は仏教の説教のために作られた『醒睡笑(せいすいしょう)』を起源としており、江戸時代には庶民の娯楽として広まった。落語の噺は時代を超えて愛される普遍性を持ち、現代でも人気を集めている。
  • 要点
    2
    落語界には、七代目立川談志をはじめ、数多くの伝説の落語家が存在する。
  • 要点
    3
    日常会話に落語のネタを織り込むことで、教養のある人という印象を与えることができる。代表的な人情話の「芝浜」をはじめ、古典落語には現代の生活にも当てはまる噺が多く存在している。

要約

日本の伝統芸能「落語」の歴史と基本

現代へ引き継がれる落語
edogawarun/gettyimages

敗戦後の経済復興の立役者である吉田茂、日本資本主義の父と称される渋沢栄一。彼らの人間力は、彼らが愛した落語によって培われたと言える。

落語の起源は江戸時代初期に作られた『醒睡笑(せいすいしょう)』であると言われている。そこに収められているものはすべてオチのついた笑い話で、いくつかは現在でも演じられている古典落語のもとになっている。

『醒睡笑』は、仏教を庶民にわかりやすく伝えるために作られた。それをベースとした落語は、現代にも通ずる普遍的なテーマを取り扱っているからこそ、伝統芸能でありながらいまでも人気を誇っているのだ。

多くの落語家たちが演じる「古典落語」の噺(はなし)の数は、300ほどだと言われている。現在、落語家の人数は1000人を超えているので、300という数は非常に少なく見える。たとえば歌謡曲の世界では、多くの歌手は自分のオリジナル曲で勝負するはずだ。しかし、幾人もの歌手にカバーされた名曲も存在する。300本の古典落語は、そうした名曲と同様、どれもが時代を超えて受け入れられる力を持っているのだ。古典落語を演じる落語家は、すでに完成した「型」となっている「噺」を自己流にアレンジして現代に再現する職人なのである。

また落語には、「上方落語」と「江戸落語」の2種類がある。この2つの最大の違いは発祥した場所で、上方落語は大阪や京都で生まれた落語を指し、江戸落語は、文字通り江戸でできた落語を指す。順序でいうと、まず上方落語が元禄時代に起こり、それが江戸に伝わって江戸落語が爆発的に流行したという流れになる。上方落語は、もともと野外で上演されていたため、三味線や太鼓などが入ってにぎやかという特徴もある。

落語の基本構造

落語の噺は導入部分の「枕」、噺の中身である「本題」、噺の最後を締めくくる「オチ」で構成されている。枕では、落語家自身の近況を面白おかしく話す、江戸時代の背景知識を語る、オチの伏線を張るなどして、本題にうまくつながるようなトークを展開する。枕を聞けば落語家の腕前がわかるとも言われており、たとえば十代目柳家小三治は「枕の小三治」と異名をとるほど枕の面白さに定評がある。

そしてオチには、締めくくりのセリフや洒落がくる。そもそも「オチ」という言葉自体、「落語」の別名である「落し噺(おとしばなし)」という単語から生まれたものであり、オチがなければ落語は成立しない。意味がわかるとじわじわ笑える「考えオチ」、下克上が起きて目上の人間がやり込められる「逆さオチ」など、いくつか種類がある。

また、落語の登場人物はおおむね決まっている。まず、よく知られているのが威勢のいい江戸っ子コンビである「熊さん(熊五郎)」と「八っつぁん(八五郎)」や、天然ボケで愛嬌のある青年「与太郎」、田舎者の代表である「権助」などだ。与太郎は、噺の途中で人間の本質をついた台詞をよく口にする、哲学的人物としても人気がある。金持ちの道楽息子である「若旦那」とそれにまとわりつく「太鼓持ちの一八」のように、コンビの性格の違いや対立によってドラマが自然に生まれるように工夫された組み合わせもある。落語はユニークな性格の登場人物たちによって噺が進んでいくのだ。

落語家の出世階級
oatawa/gettyimages

落語家が師匠に弟子入りし、一人前の落語家と呼ばれるまでに通常はおよそ15年もの歳月が必要である。

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要約公開日 2020.03.28
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