専門知は、もういらないのか
無知礼賛と民主主義

未 読
専門知は、もういらないのか
ジャンル
著者
トム・ニコルズ 高里ひろ(訳)
出版社
みすず書房 出版社ページへ
定価
3,400円 (税抜)
出版日
2019年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
専門知は、もういらないのか
専門知は、もういらないのか
無知礼賛と民主主義
著者
トム・ニコルズ 高里ひろ(訳)
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
みすず書房 出版社ページへ
定価
3,400円 (税抜)
出版日
2019年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
本の購入はこちら
レビュー

世界中の民主主義がいま、危機に瀕している。極端かつ排他的な主張が支持を集め、社会に分断をもたらしているからだ。それらの主張のなかには、誤った情報にもとづいていたり、あやふやな根拠に基づいていたりするものも多い。しかし人々は、気に入らない相手を批判するものであれば、その意見を受け入れて支持してしまう。たとえ相手の主張のほうが合理的で、たしかな証拠にもとづいていたとしても。自らの考えを変えることはかくも難しいのだ。

民主主義は、すべての市民が公共的な問題に関するたしかな知識を得て、理性的な判断を下すことで成り立つと考えられている。だが現実の市民のほとんどは、たしかな知識を得ることもなく、理性的ではない短絡的な判断を下してしまう。20世紀に大衆社会が成立して以来、大衆による民主主義の困難を論じる考察は数多く発表されており、その多くは大衆の政治的無関心を問題としてきた。だが本書は特筆すべきことに、専門家と一般の人々の対立や、無知な人ほど自分の意見の正しさを疑わず攻撃的になる現象を、重点的に分析・考察している。主な分析の対象はアメリカだが、日本の現状を踏まえると、対岸の火事とはけっして言えない。

もし自分がなんらかの専門家であったとしても、専門領域以外のことは無知であることを踏まえれば、あらゆる人が素人だと言える。本書で指摘されている素人の問題は、どんな人にとっても他人事ではなく、自分の問題として受け止めなければならないのではないだろうか。

大賀祐樹

著者

トム・ニコルズ (Tom Nichols)
アメリカ海軍大学校教授(国家安全保障問題). ダートマス大学, ジョージタウン大学での教職を経て現職. コロンビア大学で修士, ジョージタウン大学で博士号を取得. 専門はロシア, 核戦略, NATO問題. 著書にNo Use: Nuclear Weapons and U.S. National Security (University of Pennsylvania Press, 2014), Eve of Destruction: The Coming Age of Preventive War (University of Pennsylvania Press, 2008), Winning the World: Lessons for America’s Future from the Cold War (Praeger, 2003), The Russian Presidency: Society and Politics in the Second Russian Republic, revised and expanded edition (Palgrave/St. Martin’s Press, 2001), The Sacred Cause: Civil-Military Conflict over Soviet National Security, 1917-1992 (Cornell University Press, 1993) など. 本書のもとになった論考をウェブマガジン『フェデラリスト』に発表して注目を集めた.

本書の要点

  • 要点
    1
    専門知の死とは、知識への無関心ではなく、知識への憎悪を意味する。
  • 要点
    2
    無知な人ほど自分を客観視する能力に欠けるため、自分の無知や誤りに気づけない。加えて確証バイアスによって、陰謀論を信じたり、都合の良いネットの情報や偏った報道を受け入れたりしてしまい、ますます排他的になってしまう。
  • 要点
    3
    民主主義においても、意見の価値はどれも等しいわけではない。専門家と市民との建設的な関わりをふたたび築いていくべきだ。

要約

専門知はもういらない

無知を礼賛する国になったアメリカ

専門知は窮地に陥っている。アメリカ合衆国はいまや、みずからの無知を礼賛する国になってしまった。たしかにわたしたちは、科学や政治や地理についてよく知らない。だがここで問題なのは、わたしたちがものを知らないことを誇らしく思っているという事実だ。

いまやさまざまなテーマにおいて、一般の人々が不十分な情報にもとづく持論を披露し、なぜ専門家の助言を信じていけないのかを積極的に説明している。しかも彼らは、怒りをこめてそうしている。

昨今の専門知の拒絶には、独善性と激しい怒りが垣間見える。医師には自分に必要な薬を指示し、教師には子供がテストで書いた間違った答えを正解だと言い張る。とんでもない間違いだ。

専門知の死
tadamichi/gettyimages

ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、「アメリカは軍事介入するべきか」とアメリカ人を対象に世論調査を行なったところ、ウクライナの場所を地図上で正しく示せたのは6人に1人だけだった。ここで気になるのは、ウクライナに関する知識の欠如と正比例するかたちで、同国への軍事介入を支持する割合が高くなったことだ。

専門知の死という言葉で、実際の専門家の能力や知識まで死んだと言うつもりはない。今後もさまざまな分野の専門家は存在しつづけるし、専門家がいなかったら世の中は回らない。ところが人々は、以前にも増して専門家との対話をしたがらなくなっている。一方で専門家たち(とりわけ学者)は、「一般の人々と対話する」という義務を放棄し、仲間うちの議論だけに終始している。

専門知の死という言葉の本質は、既存の知の拒絶だけではなく、現代文明の土台である科学と公平な合理性の拒絶にある。「どんなくだらない意見でも、他の意見と平等に認められるべき」というのは単なる悪平等であり、たいていの場合は危険ですらある。

専門家とはどのような人か
skynesher/gettyimages

専門知の死の真の問題は、たしかな知識に対して人々が無関心になることではなく、そうした知識に対して憎悪が向けられるようになったことにある。専門知の死によって、人々が自分を実際よりも博識だと考えるようになると、これまで何年もかけて獲得されてきた知識が失われるかもしれない。

専門知はあらゆる職業につきものだ。専門家とは、ある分野について一般の人々よりはるかに深い知識をもち、人々がその分野における助言や解決策を必要とするとき、頼りにする人間を指す。専門家とそうでない人を見分ける目安となるのは、教育や才能、経験や同業者による評価といったものだ。こうした要素は数値化が難しい。だが専門家について考えるとき、忘れてはならないのは、不器用な専門家でも素人よりはマシということだ。たしかに専門家もミスはするが、素人と比べると、その危険ははるかに少ない。

専門知を定義するのは難しいし、専門家と素人の区別がつかないこともある。当然ながら、完璧な知識をもった人間はいないし、最高の教育を受けた人々でも、初歩的なミスをおかすことはある。だが仮にそうだとしても、あることについてほんの少しかじっただけの人と、決定的な知識を有する人とを見分けられるようになる必要がある。

【必読ポイント!】 無知であることに気づかない人々

無知な人ほど間違いに気づかない

実際にはあまり優秀ではないのに、自分は優秀だと思い込んでいる人間がいる。聡明でない人ほど、自分は聡明だという自信を強くもっているのだ。

要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
「本の要約サイト flier(フライヤー)」は、多忙なビジネスパーソンが本の内容を効率的につかむことで、ビジネスに役立つ知識・教養を身につけ、スキルアップに繋げることができます。具体的には、新規事業のアイデア、営業訪問時のトークネタ、ビジネストレンドや業界情報の把握、リーダーシップ・コーチングなどです。
この要約を友達にオススメする

一緒に読まれている要約

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)
スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)
ジョセフ・E・スティグリッツ 山田美明(訳)
未 読
リンク
日本国・不安の研究
日本国・不安の研究
猪瀬直樹
未 読
リンク
LEAP
LEAP
ハワード・ユー 東方雅美(訳)
未 読
リンク
なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか
なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか
渡瀬裕哉
未 読
リンク
決定版 リブラ
決定版 リブラ
木内登英
未 読
リンク
ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語
ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語
立川談慶
未 読
リンク
資本主義に出口はあるか
資本主義に出口はあるか
荒谷大輔
未 読
リンク
未完の資本主義
未完の資本主義
ポール・クルーグマン トーマス・フリードマン トーマス・セドラチェク 大野和基(インタビュー・編)
未 読
リンク

今週の要約ランキング

1
AI分析でわかった トップ5%社員の習慣
AI分析でわかった トップ5%社員の習慣
越川慎司
未 読
リンク
2
1日誰とも話さなくても大丈夫
1日誰とも話さなくても大丈夫
鹿目将至(著) 鳥居りんこ(取材・文)
未 読
リンク
3
ビジネスエリート必読の名著15
ビジネスエリート必読の名著15
大賀康史
未 読
無 料
リンク

イチオシの本

読書の秋に読んでおきたい名著5選
読書の秋に読んでおきたい名著5選
2020.11.20 update
リンク
ストレスに負けそうなときに読んでおきたい5冊
ストレスに負けそうなときに読んでおきたい5冊
2020.11.18 update
リンク
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2020年11月号)
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2020年11月号)
2020.11.17 update
リンク
『頭を「からっぽ」にするレッスン』
『頭を「からっぽ」にするレッスン』
2020.11.16 update
リンク

インタビュー

人気投資系YouTuberに聞く「投資家のマインドセット」とは?
人気投資系YouTuberに聞く「投資家のマインドセット」とは?
2020.11.24 update
リンク
〈対談〉なぜ、いま攻めのCFOが求められているのか?
〈対談〉なぜ、いま攻めのCFOが求められているのか?
2020.10.28 update
リンク
〈対談〉『個人力』著者がおくる、ありたい自分に正直に生きる秘訣
〈対談〉『個人力』著者がおくる、ありたい自分に正直に生きる秘訣
2020.10.21 update
リンク
「あたりまえ」が揺らぐなかで問われる「個人力」とは?
「あたりまえ」が揺らぐなかで問われる「個人力」とは?
2020.10.15 update
リンク
1
AI分析でわかった トップ5%社員の習慣
AI分析でわかった トップ5%社員の習慣
越川慎司
未 読
リンク
2
1日誰とも話さなくても大丈夫
1日誰とも話さなくても大丈夫
鹿目将至(著) 鳥居りんこ(取材・文)
未 読
リンク
3
ビジネスエリート必読の名著15
ビジネスエリート必読の名著15
大賀康史
未 読
無 料
リンク
夏休みはどこに行く? 国・地域・旅館を知る本
夏休みはどこに行く? 国・地域・旅館を知る本
2018.07.11 update
リンク
人気バラエティプロデューサー直伝、「運を開く」ための技術とは?
人気バラエティプロデューサー直伝、「運を開く」ための技術とは?
2018.08.02 update
リンク

この要約をおすすめする

さんに『専門知は、もういらないのか』をおすすめする

保存が完了しました

保存した「学びメモ」はそのままSNSでシェアすることもできます。
新機能「学びメモ」誕生!
要約での「学び」や「気づき」をシェア! アウトプットの習慣づけに役立ちます。
みんなのメモが見れる!
新しい視点で学びがさらに深く!
「なるほど」「クリップ」ができる!
みんなの学びメモにリアクションしたり、保存したりできます。
ガイドライン
「学びメモ」をみなさんに気持ちよくご利用いただくために、ガイドラインを策定しました。ご確認ください。
「学びメモ」には自分自身の学び・気づきを記録してください。
要約や書籍の内容を読まずに「学びメモ」を利用することはご遠慮ください。
要約や書籍に対しての批評や評点をつける行為はご遠慮ください。
全文を見る
新しい読書体験を
お楽しみください!
ご利用には学びメモに記載されるユーザー名などの設定が必要です。
ユーザー名・ID登録(1/3)
ユーザー名 ※フライヤーでの表示名
ユーザーID
※他のユーザーが検索するために利用するIDです。
アカウントの公開や検索設定は次の画面で設定できます。ご安心ください。
後で登録する
ユーザー名・ID登録(2/3)
アカウント公開
すべてのユーザーにマイページを公開しますか?
はい 許可した人だけ
マイページを全体に公開したくない方は「許可した人だけ」を選択して、次ページにお進みください。

※登録内容の編集画面からいつでも変更できます
ユーザー名・ID登録(3/3)
検索設定
ID検索を有効にしますか?
はい いいえ
友達と繋がるには、ID検索を有効にしてください。マイページを全く公開したくない方は「いいえ」を選択してください。

※登録内容の編集画面からいつでも変更できます
登録完了しました!
まずは他のユーザーをフォローして学びメモをチェックしてみよう!
flierの利用に戻る