面白いとは何か? 面白く生きるには?

未読
面白いとは何か? 面白く生きるには?
面白いとは何か? 面白く生きるには?
著者
未読
面白いとは何か? 面白く生きるには?
著者
出版社
ワニブックス

出版社ページへ

出版日
2019年09月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

「面白いことやっちゃいましょうよ」「こうしたら面白くなると思いますよ」といった言葉を、ビジネスの場でよく耳にする。耳障りが悪いわけではないものの、こういう人に「どんな面白いことなのか」をあらためて聞くと、どうも「面白い」を軽んじたような場合や、「全然面白くない」という場合が少なくない。さらには「面白いことを目指すポーズを取る」だけで、中身がまったく伴っていない人もいる。

「面白い」という言葉は抽象的であるがゆえ、なかば軽んじられて使われるケースも多い。その一方で、命がけとも言えるほどに「面白い」を追求し、「面白さ」をクリエイトする人もいる。「面白い」の使われ方や使う側の思いの差はあまりに大きく、「面白い」が持つ意味も「楽しい」「役に立つ」「興味深い」「有益である」など、実に多彩だ。

本書はこの難しいワードを細かく分析・解説し、「面白い」の使われ方を多面的に紹介してくれる。しかしより興味深いのは、「面白い」を万人に与えられた十分な権利として、そして「生きる道筋」として紹介しているところだ。特に後半で綴られる、孤独な若い世代に向けた著者の筆致は、心地良い読後感を与えてくれるとともに、生きること自体の「面白さ」にも導いてくれる。

「面白い」が持つ本質的な意味とその力を語った、なんとも貴重な一冊である。

ライター画像
松田義人

著者

森博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。
作家。工学博士。
某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビュー。
以後、次々と作品を発表し人気作家として不動の地位を築く。現在までに300冊以上の著書が出版されている。

本書の要点

  • 要点
    1
    「面白い」は日常的に使われる言葉だが、じつに多義的な概念だ。大きく分けると、笑えるような「面白さ」と、興味をそそられるような「面白さ」があるが、両方の要素をもっているものもたくさんある。
  • 要点
    2
    「面白さ」は多分に個々の「感覚的」なものであり、「こうすれば面白くなる」というわかりやすい手法はない。大勢を集めて会議しても「面白さ」は生み出せない。
  • 要点
    3
    「面白い」は万人に与えられた十分な権利だ。生きること自体もまた、「面白い」を探す旅なのである。

要約

「面白い」とはなにか

「面白い」はさまざまな使われ方をする

「面白い」という言葉は、いろいろな意味で使われている。人に言う場合は褒めたり共感を求めたりするときに、自分一人でも、ふと呟きたくなるときにこの言葉が出る。

基本的に「面白い」という言葉は、笑顔を連想させる。それは楽しいもの、好ましいもの、自分が欲しかったもの、満足できるものに対する感想だ。大きく分けると、笑えるような「面白さ」と、興味をそそられる「面白さ」があるように思われる。とはいえきっちりと分かれてはいないし、両方の要素を持っているものもたくさんある。

「可笑しい」という意味で使う場合
Domepitipat/gettyimages

見ただけ、聞いただけで笑えるようなものを「面白い」という場合、これは「可笑しい」と同じ意味だ。たとえば漫才や落語などは、笑うことを楽しみにして観るものである。笑わせてくれる人に対しても、「面白い人だ」と言う。逆にさほど笑えなかった場合は、「面白くなかった」と評価する。漫才や落語に対して、「笑えないけれど、面白い」という評価はあまりない。そこでは、あくまでも可笑しさが面白さとイコールなのだ。

人が笑うのは、泣いたり怒ったりするよりも良い状態だ。笑っているから良い状態なのではなく、良い状態だから自然に笑う。そういうふうに人間はできている。「笑う門には福来る」という諺のとおり、「面白い」は幸せを連想させる感情なのである。

「夢中になれる」という意味で使う場合

「面白い」にはそれ以外の意味もある。たとえばなにかにハマっている状態のとき、人はそれを「面白い」と感じる。夢中とは興味が集中する状態であり、ある対象に「興味を持った」とき、それを「面白い」と形容することになる。

この「面白い」は、ギャグで大笑いする「可笑しい」とは明らかに違う。たとえば数学やパズルなどで難しそうな問題に直面したとき、「面白い」と思う人たちがいる。そのとき顔は笑っていないかもしれない。だが彼らは真剣に考え、「面白い」という言葉で自分の感情を表現する。

自分にとって好ましい状態である

少しニュアンスが違う「面白い」もある。たとえば「珍しい」、「趣がある」、「気持ちが良い」といった意味で、「面白い」というときがある。コレクションをしている人が、いままで見たことがない品物に出合ったときなどに、目を輝かせて「面白い」と呟く。あるいは日本庭園や茶室などで凝った造形を見て、「面白い」と思うこともある。あるいはスポーツをして一息ついたときに、「面白い」と感じることもあるはずだ。

共通するのは、どれも自分にとって好ましい状態であること、自分が好む状況になることといえる。ほかの言葉を使うなら、「満足」が近いかもしれない。

「面白い」を生み出す方法があるか?

「面白さ」は、会議からは生まれない
akindo/gettyimages

なにが面白いかは、人の「感覚的」なものであって、「面白さ」を生み出す確固たる手法は存在しない。だからこそ「面白さ」をつくることを仕事にしている人たちが大勢いる。みんなが試行錯誤して、次々と新しい「面白さ」を世に問う。大衆に受け入れられれば、大儲けができるし、一躍人気者にもなれる。でもそれはけっして簡単ではない。「これが売れる方法だ」というノウハウは存在しないからだ。

大勢の知恵を集めても実現しないのが「面白い」である。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2785/4143文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.04.08
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
NOを言える人になる
NOを言える人になる
鈴木裕介
未読
だから僕は、ググらない。
だから僕は、ググらない。
浅生鴨
未読
身銭を切れ
身銭を切れ
千葉敏生(訳)ナシーム・ニコラス・タレブ望月衛(監訳)
未読
日本でいちばん大切にしたい会社7
日本でいちばん大切にしたい会社7
坂本光司
未読
ハック思考
ハック思考
須藤憲司
未読
新型コロナウイルスの真実
新型コロナウイルスの真実
岩田健太郎
未読
教養の書
教養の書
戸田山和久
未読
片づけられない自分がいますぐ変わる本
片づけられない自分がいますぐ変わる本
大嶋信頼
未読
法人導入をお考えのお客様