レビュー
本書は、フランスの作家アルベール・カミュが1947年に発表した小説である。邦訳が発行されたのが1969年。物語の設定とあらすじが、今回の新型コロナウイルスの状況を連想させると話題になり、このたび増刷された。
物語の舞台は194*年のアルジェリアの都市、オラン。フランスの植民地下にあり、北アフリカの代表的な商業都市として栄えていた。冒頭の数ページにわたる街の描写では、人々は商売熱心でよく働き、かつ週末を娯楽に費やすという、要するに世俗的な街である。その街にペストが襲い掛かる(ただし、実際にペストが流行したという史実はない)。
オランの人口は20万。都市は完全にロックダウン(閉鎖)され、人の往来は途絶える。その閉じ込められた空間で、毎日100人が死んでいく。血清はまだできておらず、月日だけが確実に過ぎていく。
ペストは主としてネズミが媒介する伝染病であり、黒死病とも呼ばれ、人類は過去何度かパンデミック(世界的大流行)に見舞われている。ただしこの物語の当時は、ペストは西欧の文明社会からは20年前に駆逐されたと言われていた。
本書で描かれるのは、この疫病と戦う人々が織り成す群像劇である。終わりの見えないペストとの戦いの中で、人はどのように行動すべきかということが問われている。
同時に、人々と社会の刻一刻の変化も描写される。いま日本で本書が注目されている背景を考慮に入れ、本要約ではそこに大きくスペースを割いた。
著者
カミュ
Albert Camus
(1913-1960)
アルジェリア生れ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学(リセ)の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。1942年『異邦人 』が絶賛され、『ペスト 』『カリギュラ 』等で地位を固めるが、‘51年『反抗的人間 』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落 』等を発表。‘57年ノーベル文学賞受賞。‘60年1月パリ近郊において交通事故で死亡。
すべてを見る
本書の要点
要点1
4月のある日から、街に大量のネズミが発生し次々と死んでいくのが発見される。やがて、ペストが流行り始め、市の門は閉ざされる。
要点2
そこから、翌年の2月まで封鎖が続く。街の人々は、当初は楽観的...
要約全文を読むにはシルバー会員 またはゴールド会員 への登録・ログインが必要です
「本の要約サイト flier(フライヤー)」は、多忙なビジネスパーソンが本の内容を効率的につかむ ことで、ビジネスに役立つ知識・教養を身につけ、スキルアップ に繋げることができます。具体的には、新規事業のアイデア、営業訪問時のトークネタ、ビジネストレンドや業界情報の把握、リーダーシップ・コーチングなどです。
Copyright © 2021 Flier Inc. All rights reserved.
不可能を可能にせよ!
月谷真紀(訳)
マーク・ランドルフ
リンク
twitter
facebook