世界のビジネスエリートが大注目!

教養として知りたい日本酒

未読
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教養として知りたい日本酒
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教養として知りたい日本酒
出版社
出版日
2020年03月13日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

近年、老若男女を問わず、日本酒がブームになっている。「日本」酒と、国の名前を冠したアルコール飲料は他にない。では日本に関わる者として、あなたはどれだけ日本酒について知っているだろうか。

本書の前半では、著者がイチオシする日本酒50銘柄が、こと細かに解説される。しかも単なる日本酒のスペックを解説するだけではない。その酒の味わいに合う料理、原料や製法へのこだわり、はたまた酒造や街の歴史まで紹介されており、じつに読み応えのある内容になっている。

また本書の後半では、世界に進出した日本酒のそれぞれの戦略が解説されており、こちらも興味深い。実際にアメリカでいくつもの飲食店を経営している著者だからこそ、その言葉には説得力が感じられる。日本で認められている有名な酒ばかりでなく、新しい試みから生まれたアメリカ産の酒や、復権を目指す古酒など、バラエティ豊かな酒が紹介されているのもポイントだ。とりわけ世界各地で造られる「クラフトSAKE」には、ワクワクと心躍るものがあった。今後世界を相手にする際に日本の武器となるのは、文化という「ソフトパワー」だと言われているが、日本酒はその代表例のひとつになるだろう。

最近日本酒に興味を持ち始めたという初心者はもちろん、百戦錬磨の玄人をも唸らせる一冊だ。難点は、読めば読むほど実際に飲みたくなってくること。翌日に大事な仕事が控えている場合は、どうか自己責任で読んでほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

八木・ボン・秀峰 (やぎ ぼん しゅうほう)
TICレストラングループ代表取締役社長。NPO法人日本食レストラン海外普及促進機構ニューヨーク支部世話人。NPO法人五絆ソサエティー理事。NPO法人日系人会理事。
1948年、茨城県生まれ。1968年に渡米し、フィラデルフィアへ。1980年、アメリカ市民権を取得。NYで24時間営業のアメリカンダイナーズレストラン「103」開業。1984年、マンハッタンのイーストビレッジに江戸前鮨の「波崎」を開店。以後シャブシャブ・すき焼き・焼き肉の「しゃぶ辰」、日本酒の酒場「でしべる」、日本酒のレストランバー「酒蔵」、手打ち蕎麦の「蕎麦屋」、関東風醤油ラーメンの「来々軒」、抹茶の和カフェ「茶庵」、カレー専門店「咖喱屋」、大正浪漫スタイルのコーヒーと日本酒バー「Hi-Collar」などを次々にオープン。現在17店舗を数える。
2009年、NPO法人FBOおよびSSIから「名誉唎酒師」の称号授与。2017年、農林水産省から日本食海外普及功労者表彰を受章。2019年、日本食普及功労者として旭日双光賞を授与される。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本酒は米、水、麹を原料として造られる。ただし原料が同じでも、造り手が違えば香味は異なる。加えて保存状態、さらには飲む温度によっても味わいは変化する。日本酒には柔軟で繊細な魅力がある。
  • 要点
    2
    日本酒は単なるアルコール飲料ではなく、人と人、街と街をつなぐ役割も担う。
  • 要点
    3
    世界中で「クラフトSAKE」が造られ始めており、地域によって多彩な味わいが楽しめる。日本酒はすでに日本のみならず、世界に広まっている。

要約

【必読ポイント!】 日本酒には造り手の人格が反映される

材料がまったく同じでも異なる味わいに
gyro/gettyimages

日本酒は米、水、麹を原料に造られる。米は全国各地で900種以上が栽培されているが、そのうち酒造りに特化した米を「酒造好適米」といい、120種以上の銘柄がある。米が違えば当然香味は異なるが、同じ米を使っていても、同じ味わいの酒になるとは限らない。たとえば「精米歩合」と呼ばれる精米の度合いによっても、香味は変わってくる。精米の度合いは、食用米の場合90%程度だが、酒造りに使う米は少なくとも70%、吟醸酒では60%に規定されている。吟醸酒でいえば、米の表面を40%削るということである。

また、水が違えば飲み口も変わってくる。酒造りに使う水は「仕込み水」と呼ばれ、日本酒の成分の8割を占める。水に含まれるミネラルの含有量によって、味は大きく左右される。ミネラルが豊富に含まれる硬水ではどっしりした辛口に、軟水では口当たりの軟らかい甘口の酒になる傾向がある。加えて、アルコールの発酵には酵母が必要になるが、この種類によっても香りは異なる。

さらに興味深いことに、米の品種、精米歩合、仕込み水、酵母が同じであっても、造り手が変われば味わいも変化する。杜氏と呼ばれる酒造りの最高責任者は全国各地におり、それぞれに流派がある。流派によって酒造りは変わるし、同じ流派でも造る人によって味は違う。酒は造り手の人格を反映するものなのだ。

日本酒とは非常に繊細な手造り製品である。製品としてできあがったあとも、保存状況により熟成されたり劣化したりする。さらには冷酒、常温、人肌燗、ぬる燗、熱燗と、飲む温度にも風味が左右される。柔軟性に富んだ、奥深いアルコール飲料といえる。

酒造りの裏の技術とこだわり

最高級の米にこだわる酒造り
ICHIBANHIGASHI/gettyimages

「山田錦」は酒造好適米の最高峰とされ、酒米の王様とも呼ばれる。生産量の約8割を兵庫県が占めており、全国新米鑑評会で金賞を受賞する酒の多くは、山田錦によって造られている。山田錦は一般米に比べて高額で、その価格は実に食用米の2.5倍だ。茎が長いため倒れやすく、病害虫に弱いため栽培が難しいとされている。通常の米よりもタンパク質と脂質が少ないのが特徴だ。

この米のすばらしさをアピールする蔵元のひとつが、兵庫県姫路市に蔵を構える醸造元、本田商店である。本田商店では「龍力」という酒を造っている。同じ山田錦でも、収穫地によって品質が違い、超優良地帯である特A地区から順にC地区まで分類されている。本田商店では、最高級品である特A地区の山田錦だけを「龍力」に使用し、ぜいたくにも高精米して使う。

また「龍力」の「純米大吟醸 秋津」は、特A地区産のなかでも最高級の山田錦を使用している。出穂までに肥料を消化させる「への字型栽培法」を採用し、稲木掛け乾燥で仕上げる。これを高級路線として展開し、フランス・ブルゴーニュの高級ワインにも匹敵する価格設定で、海外でも勝負している。

妥協しない仕込みを手ごろな価格で提供する技術力

吟醸酒とは、精米歩合60%以下の高精米された米を、10度前後の低温で1カ月ほどの時間をかけて発酵させたものを指す。この製法を「長期低温発酵」と呼ぶ。先にも述べたように、精米歩合60%以下というのは、表面の40%を削り落としていることになる。米の表面付近には、雑味になりやすい成分が含まれており、一般的に削る割合が大きいほどクリアな酒になると言われている。ちなみに大吟醸酒は、表面を50%以上削った米から造られている。

吟醸酒には高級なイメージがあるが、それはこのような手間と時間がかけられているからである。ところが出羽桜酒造は、消費者が気軽に手に取れる吟醸酒を売り出している。しかも大規模な酒造であるにもかかわらず、出羽桜酒造は昔ながらの手作業で酒造りをしている。

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要約公開日 2020.05.31
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