文系AI人材になる

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2020年01月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

AIの発展と普及が目覚ましい。それに伴い、社会も大きな変化を迎えており、私たちの生活に次々と新しい技術が入り込んできている。AIによって仕事がなくなるという話題も、もはや珍しいものではない。このような環境下で、AIに関する技術を身につけていない文系人材の中には、自分の就いている職業が近い将来AIに奪われるのではないか、と不安に思っている人もいるかもしれない。

著者は、AIの構築と運用管理を担う人材を「理系AI人材」、それ以外のAI活用を担う人材を「文系AI人材」と定義する。そして、これからのAI時代を牽引していくのは、文系AI人材なのだと主張する。

これまでAI人材というと理系AI人材が主流だった。その結果として、文系AI人材の育成が遅れているのが日本の現状だ。これからのビジネスシーンを生き抜くためには、変化を受け入れて文系AI人材をめざすことが重要といってもよいだろう。

本書は、自らも文系AI人材として活躍してきた著者の視点から、AIを「使いこなせる人材」になるための知識を体系化した教科書といえる。理系の知識に自信がなく、時代の変化に対応できるのかと不安を抱いている方にとって、うってつけの一冊だ。

実用的な知識を得られるだけでなく、AIを駆使して創造できる世界の幅広さに思いを馳せられることだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

野口竜司(のぐち りゅうじ)
ZOZOテクノロジーズ VP of AI driven business
アラタナ 取締役
立命館大学政策科学部卒業。著者自身も「文系AI人材」として、さまざまなAIプロジェクトを推進。AIビジネス推進や企業のAIネイティブ化に力を入れる。大学在学中に京都発ITベンチャーに参画。子会社社長や取締役として、レコメンド・ビッグデータ・AI・海外コマースなどの分野で新規事業を立ち上げ、その後、ZOZOグループに。大企業やスタートアップ向けのAI研修やAI推進アドバイザリーも提供。

本書の要点

  • 要点
    1
    AIに関する仕事は、AIを「作る」ことが中心だった。そのため、AIを「使う」人材が不足している。これからのビジネスシーンを生き抜くには、AIの活用を担う「文系AI人材」になることが重要だ。
  • 要点
    2
    文系AI人材として活躍するためには、AIの基礎知識を暗記する、AIの作り方をザックリ理解する、AI企画力を磨く、そしてAIの活用事例をとことん知るという、4つのステップを踏むことが効果的である。
  • 要点
    3
    これからの社会を牽引するのは、文系AI人材である可能性が高い。変化を恐れない姿勢を大事にしたい。

要約

AI社会で職を失わないために

AI時代には、「行動しない」ことがリスクに

AIによって職がなくなるかもしれないという議論は、もはや珍しいものではない。これまでも、新しい技術が生まれ、社会に定着したときには、複数の職種がなくなってきた。その一方で、新技術を使った新しい職種も登場してきている。AI時代においても、新しいタイプのAI職が多く生まれるはずだ。

今後最もリスクが高いのは、AIによる失職を恐れるあまり、身動きが取れなくなることだ。変化を恐れずにAI職に就く準備を始めることが必要となる。

AIが普及すれば、AIとの共働きスタイルが広がっていく。AI職の役割は、AIの特性を知り、人間とAIの共働きをうまくコントロールすることだ。こうした時代においては、行動しないことがリスクになる。AIを積極的に使っていくことが、「人間とAIの共働き時代」を安泰に過ごすうえで重要なのだ。

5つの「共働きスタイル」
B4LLS/gettyimages

人とAIの分業スタイルは、分業のバランスによって次の5パターンに分類できる。

(1)人だけで仕事をする「一型」:具体的にはマネジメント・経営業務、クリエイティブ業務など。

(2)人の仕事をAIが補助し、人ができていたことを効率化する「T型」:接客や営業、教育、ソーシャルワーク業務など。

(3)人の仕事をAIが拡張し、人ができなかったことを可能にする「O型」:医療・看護、弁護士といった高度な専門業務やトレーダーなどの予測分析業務。

(4)AIができない仕事を人が補助する「逆T型」:データ入力業務や運転業務など。

(5)人の仕事をAIが完全に代行する「I型」:注文会計業務や監視業務など。

足りないのは「文系AI人材」

「AIの活用」と聞くと、AIを作ることを思い浮かべる方が多いかもしれない。これまでのAI人材教育はAIを「作る」ことにフォーカスしており、その環境は整ってきたといえる。一方で、AIを「使う」側の教育環境や人材キャリアをフォローアップする環境は、まだ整っているとはいいがたい。

実際には、AIを作るハードルは下がっている。AIを作るための専門性がなくとも、構築済みのAIサービスを利用すれば、容易にAIを作ったり活用したりできるようになっている。このような環境下では、AIを作るのか使うのかの判断能力が欠かせない。同時に、これからはAIをうまく「使う」人がビジネスを動かしていくだろう。

AIの導入数が増えれば増えるほど、「AIを作る仕事」以外の仕事が大量に発生する。「理系AI人材」は、これまで主に「AIを作る」仕事を担ってきた。また、AIを現場で動かすための「本番稼働AIシステムの構築」や、現場でAIを利用し続けるための「AIシステムの運用管理」も彼らの仕事だ。これらの仕事以外の、AI活用に必要なすべての仕事を担うのが、「文系AI人材」である。

文系AI人材の具体的な仕事内容とは?
NicoElNino/gettyimages

文系AI人材の具体的な仕事内容を見ていこう。まずはAIをどのようにビジネスで活用するかを考える「AI企画」が挙げられる。ビジネス課題の解決や顧客の不便解消のために、AIの活用方法を企画する。企画の方針によって、次の3つの仕事のいずれかを行うこととなる。

構築済みAIサービスでニーズを満たせない場合は、「AIを作るプロマネ」として、AIプロジェクト全体のマネジメントをすることとなる。また、「GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)のAI構築環境で作る」ことを決めた場合は、文系AI人材自らがAIを作ることもある。つづいて、自らAIを作らずに構築済みのAIサービスを使う場合は、どのサービスが自社にフィットするのかといった観点から、「構築済みAIサービス選定」を行うことになる。

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要約公開日 2020.05.27
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