本書の要点

  • 四則演算でできる「数字で考える力」は、生産性の高いビジネスパーソンになるために重要な能力だ。ベースになるのは、仕事を納期だけでなく工数でも管理するためにタスクを因数分解すること、やるべき仕事かどうかを見極めるROIの発想、そして仮説を立てて検証する習慣である。

  • 「数字で考える力」は、部下を持つリーダーにとっても有効なスキルだ。プレゼンテーションでは、「自分らしい数字」を盛り込むことで、聞き手の注目を得て、その態度変容を促すことになる。また、人を動かすには、「見える化」が効果的だ。

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【必読ポイント!】 Speed is Power

すべては因数分解から始まる

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納期の前に成果物をもらって嫌がる人はいない。仮に要求水準に達していなくても、やり直しができる。よって、仕事が速いと、周囲から仕事ができると思われやすい。この「Speed is Power」は本書のテーマにもなっており、それを実現するスキルが「数字で考える」力だ。

現状を数字で把握し、正しい方法で改善するには、次の3つの考え方が役立つ。1つ目は、扱いやすい大きさに分ける「因数分解」。2つ目は、優先すべき仕事かどうか見極める「ROI思考」。そして3つ目は、ゴールから逆算して考える「仮説力」だ。3つの考え方を順に紹介していこう。

生産性が高い人は、仕事を「納期」だけでなく、「工数(タスクにかかる見積もり時間)」も管理している。たとえば資料作成ならば、設計、資料収集、ドラフト作成、レビュー、修正・完成などと、大きなタスクを分解して、小さく分けていく。そして、それぞれに要する時間を把握することで、タスクの取捨選択や分担を可能にする。この作業を著者は「因数分解」と呼んでいる。

これはやるべき仕事なのか?

人生という限られた時間を考えると、やるべき仕事に順番をつける必要があることは明らかだ。その判断の指標がROI(Return on Investment)である。仕事をリターンと投資で考え、やるべき仕事なのかどうかを確認する「ROI思考」の出番となる。ROIの値が小さければ、やらないという決断もありうる。

ROIを把握するには、「フェルミ推定」が有効だ。日本全国の電柱の数を考えるとき、一定の面積あたりの電柱の本数から考える方法もあれば、企業数と家庭数から推測する方法もある。フェルミ推定のポイントは、より多くのシナリオから、精度が高く簡単に計算できるものを短時間で見つけることだ。目の前の仕事のROIをフェルミ推定で判断できれば、無駄な仕事を減らし、仕事の速度を上げられる。

仮説×見せ方で人を動かす

やるべき仕事が明らかになったら、課題をどう分析して、どのような結論を導くのか、「仮説(シナリオ)」を立て、様々な観点から比較していく。

たとえば、「営業の人数を増やさずに売上5%をアップさせる」というケースで考えてみよう。仮説を考える際、「社内」「社外や市場」といった比較の軸を想定するとよい。そのうえで、「(違うエリアの)組織で比較する」「商品ごとに比較する」「営業担当の年齢や階層で比較する」「市場の変化と比較する」などと細分化する。できる限りこの軸を多く設定することが、適切なソリューションに近づくコツだ。

また、実際に比較分析を行う前に、「特定の営業担当群×特定の商品群についての勉強会をして営業力の底上げをする」などと、最終的なアクションをイメージしよう。そうすれば、把握すべき具体的な情報(誰に、何を、誰が教えるのか)が明確になり、分析に必要なシナリオができあがる。その後、たとえば「どのエリアに課題があるのか」といった点について、必要なデータを入手し、絞り込んでいく。

こうして導き出された施策をプレゼンテーションする際には、わかりやすいグラフを意識したい。具体的なポイントは、グラフのタイトル部分に最も伝えたいことを書く、比較対象をわかりやすく表示する、実際に差異がある場合は強調したい点をはっきりさせるの3つである。

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数字の裏を読む

「平均的な人」は存在するのか

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数字ですべてがわかるわけではない。正しく数字を使って7割程度の真実を把握し、残り3割を定性情報で補うようなバランス感覚が重要となる。数字の裏を読み、定性情報を活用するために3つの考え方が役に立つ。それは、「平均と分散」、数字の背景を探る「想像力」、そして「選択肢を増やして絞り込む」という考え方だ。

まずは、データを取り扱う際によく用いる「平均値」だが、平均のもとになっている分散の数値を知らずに扱うと、事実を見落としてしまう。たとえば、ある組織の営業マンの月間平均売上が380万円だとしよう。もしも半数の売上平均が500万円前後、残りの半数が100万円前後と真っ二つにわかれていたらどうか。平均値としての380万円は数字的には正しいが、「売上380万円」の人間は存在しておらず、全体を代表していないのだ。平均と分散の数値はセットで確認しておきたい。

数字の背景を「想像」する

数字を見る際には、日ごろ見聞きしている現場の話や自分の感覚も忘れてはいけない。

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要約公開日 2020.05.29
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