感性思考

デザインスクールで学ぶMBAより論理思考より大切なスキル
未読
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感性思考
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2020年04月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

高度経済成長期の日本では、答えがある問題に取り組み、「正解」を出せることがビジネスパーソンの評価につながっていた。目の前には解くべき問題が山積しており、論理的思考を駆使することで、正解を導き出すことが可能であった。このような時代では「論理思考」や「戦略思考」が重宝されてきた。

しかし、ビジネス環境が劇的に、かつスピーディーに変化する現代においては、解決すべき問題の発見や問題の定義自体が難しくなってきている。数年前や数ヶ月前の「正解」が、今ではまったく役に立たないというケースもあるほどだ。

米国では、2000年代にこの問題が着目されていた。これを打開するカギは、本書のタイトルでもある「感性思考」と「デザイン」だ。ロジカルなアプローチだけでなく右脳的な思考法も、ビジネス課題の発見と解決を図るうえで重要だという。世界的ベストセラーとなったダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト』によると、近い将来、MBA(経営学修士)よりも、デザインスクールにおけるMFA(美術学修士) を取得した人材の方が、ビジネス上の価値が高くなるという。

著者は自身が米国のデザインスクールで学んだ1年間のプログラムの内容を1冊に凝縮させた。デザインのセンスがなくても、突き抜けたアウトプットを生み出すための思考のフレームワークやマインドセットが効率よく学べる仕立てだ。「感性ベースの思考法」という強力な武器を身につけてみてはいかがだろうか。

ライター画像
狩野詔子

著者

佐々木康裕(ささき やすひろ)
Takramディレクター&ビジネスデザイナー
早稲田大学政治経済学部卒業。イリノイ工科大学デザイン大学院(Institute of Design)修士課程(Master of Design Method)修了。グロービス経営大学院客員講師(デザイン経営)。
総合商社でベンチャー企業との新規事業立ち上げ等を担当後、経済産業省でBig DataやIoT等に関するイノベーション政策の立案を担当。
2014年、デザインコンサルティングファームTakramに参画。クリエイティブとビジネスを越境するビジネスデザイナーとして、家電、自動車、運輸、通信、食品、医療、素材など幅広い業界で企業のイノベーション支援を手がける。
デザインリサーチから、プロダクト・事業コンセプト立案、エクスペリエンス設計、ビジネスモデル設計、ローンチ・グロース戦略立案等を得意とする。複数の事業立ち上げ経験を持ち、ファイナンスにも精通。
講演やワークショップ、Webメディアへの執筆なども多数。ダイヤモンド社と共同で、ビジネスリサーチとデザインリサーチを統合した"Creative Knowing"を研修プログラムとして実施。
大手家電メーカーやシンクタンクの戦略アドバイザー、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンターも務める。
著書に『D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(NewsPicksパブリッシング)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「組み替えという意味でのデザイン」は、ビジネスの限界を超えるうえでも有用だ。これらをベースにしたデザインスクール的な方法論を身につければ、強烈なアウトプットを生み出せる。
  • 要点
    2
    新たなビジネスを創出する際には、合理性や客観性を重視する「ビジネス的な思考」だけでなく、主観的な見方を伴う「感性による思考」が求められる。
  • 要点
    3
    感性思考を実践するためには、「人間中心的」「破壊的」「反復型」「多様性」という4つのマインドセットが重要となる。

要約

【必読ポイント!】 武器としてのデザイン

強烈なアウトプットを生み出すための方法論

デザインには、「見た目」や「スタイリング」といった「意匠」の定義だけでなく、「設計・計画」という定義もある。一流のデザイナーたちは、既存のものを組み替えて、新しい組み合わせを作ることによって、アウトプットを生み出す。この組み換えや再結合の技法を抽出し、ビジネスにも応用しようとするデザインは、ビジネスの限界を超えるうえでも有効な手段だ。

米国の教育機関では、2000年代からビジネスパーソン向けのデザインのカリキュラムが展開されてきた。ビジネスエリートを対象としたデザインスクールでは、アウトプットを生むための一定の法則や方法論を教える。この方法論を身につければ、センスがなくとも、人間の感性に訴えかける強烈なアウトプットを生み出すことが可能となる。

デザインスクールが重視する考え方とは?
Chaosamran_Studio/gettyimages

デザインは、美術大学出身の人だけのスキルではない。ビジネスパーソンがデザインの知見を取り入れることで、ビジネスとデザインの最適なミックスを作り出せる。

ビジネスの前提となっているのは、合理性や客観性を大事にするという視点だ。そのために、数字やデータなど定量的な材料を用いて現実や事実を把握しようとする。

これに対して、デザインは主観的な見方や考え方を必要とする。デザインの考え方では、コンテクスト、すなわち文脈や背景による現実の理解をめざす。

新しいアイデアを考える際には、数字やデータを鵜呑みにせず、その背景にある文脈を読み取ることが重要だ。ビジネスの課題を解決するための方法を「設計し、計画する」ために必要なスキルが、デザインスクールで学ぶ思考法だ。

これからの時代に大事な「感性による思考」

現在、市場におけるゲームのルールが目まぐるしく変化している。ある産業の主力プレイヤーが、わずか数年で入れ替わることも珍しくない。このような時代にビジネスを作り出すためには、合理性や客観性を重視する「ビジネス的な思考」だけでは対応しきれない。効率や生産性を高めたいときには、「ビジネス的な思考」が役立つが、新しいものを生み出す際には「感性による思考」が必要となる。

デザインスクールでは、思いついたら即座に形にし、うまくいかなければ別のアプローチで作ってみる、というトライアンドエラーをくり返し、完成品に近づけていく。主流なのは、精緻な分析に基づく「計画→実行」プロセスではなく、「実験→修正」という実行主導型のプロセスなのだ。これにより、より柔軟でスピード感のあるアプローチが可能となる。

強烈なアウトプットを生む思考法

デザイン思考だけでは「足りない」理由
nathaphat/gettyimages

近年、日本でも「デザイン思考」への注目が高まっている。ただし、日経クロストレンドの記事によると、デザイン思考を導入していると答えた企業は14.9%で、そのうち定着に成功している企業はわずか5.5%にすぎないという。つまり、デザイン思考だけではビジネスの現場でうまく機能しないケースが少なからずあるといえる。

その理由の1つは、デザイン思考にビジネス的な視点が足りないためだ。

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要約公開日 2020.07.12
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