リビング・シフト

面白法人カヤックが考える未来
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昨今、高い家賃と満員電車を強いられる都市を抜け出し、自分が住みたい地域へ移住する人が、少しずつ増加している。こうした人々は、これまでの経済指標では測れなかった、景観の豊かさや人との縁といった主観的な価値観によって、移住を決めている。この流れは、どのようにして生まれてきたのだろうか。

本書は、移住や二拠点生活といった住み方の変化を起点に、地方創生やこれからの資本論に至るまで、私たちが未来の生活を描くためのガイドブックである。著者がCEOを務める「面白法人カヤック」が行なってきた仕事を中心に、数々の興味深い事例が掲載されている。それらは、お金では測れない地域の魅力を、「つながり」や「環境・文化」といった視点から可視化する試みである。

「パソコン1台あれば仕事ができる」というITの恩恵は、これまで一部の業種の特権のように思われていた側面もある。しかしここにきて、新型コロナウイルスの感染防止対策もひとつの大きなきっかけとなって、テレワークやオンラインサービスの適用範囲が一気に広がっている。このような動きは、いかなる業種も例外ではなくなるだろう。著者が描く「リビング・シフト」は、もはや一部の人のものではなく、誰にも関係することになりつつある。自由に暮らし、ポジティブに働く未来をイメージするための、大きな指針となる一冊である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

柳澤大輔(やなさわ だいすけ)
1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。100以上のクリエイティブディレクターをつとめる傍ら、2012年カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル、2010年東京インタラクティブ・アド・アワード、2009~2015年Yahoo!インターネットクリエイティブアワードなどWeb広告賞で審査員をつとめ、著書に『面白法人カヤック会社案内』『鎌倉資本主義』(ともにプレジデント社)、『アイデアは考えるな。』(日経BP社)などがある。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦中。2015年株式会社TOWの社外取締役、2016年クックパッド株式会社の社外取締役に就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    ITの発達によって、どこにいても仕事ができるという時代になった。それに伴って、ワークライフスタイルや住む場所の選び方、暮らし方の価値観などが変化している。これを「リビング・シフト」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    地方への移住や二拠点生活を選ぶ多くの人は、従来の経済合理性では測れない価値に基づいて自分の住みたい場所を選んでいる。
  • 要点
    3
    工場、労働力、金銭といった従来の資本に加えて、人とのつながり、美しい自然や文化をも資本と捉え、地域における資本を可視化して最大化しようとする。これが「地域資本主義」の考え方である。

要約

【必読ポイント!】 移住の考え方自体が変わる

場所の制約からの解放
AntonioGuillem/gettyimages

昨今の若手ビジネスパーソンには、東京から地方へ移住したり、二拠点生活を始めたりする人も増えてきた。

その最大の要因は、インターネット技術が進んだことにある。パソコンやスマホ1台あれば仕事ができる環境が整備され、メンバーが遠隔にいてもプロジェクトを進められるようになった。もうひとつの理由は、LCC(格安航空会社)の普及やリニア新幹線の開発といった、移動に伴うコストの低下や技術の進歩だ。国内だけでなく海外に移住する人も少なくない。つまり、人間が「場所の制約」から解き放たれ、どこにいても仕事ができるという時代にシフトしているのだ。

産業革命で工業化が進んだことにより、農耕や家内制手工業で成り立っていた暮らしから、大きな工場への出勤が必要となる生活へと大きなシフトが起こった。しかし、パソコンやスマホ1台あればできる仕事が増えたことで、産業革命前と同じような、自宅での仕事が可能になりつつある。それどころか、自宅を固定する必要さえなくなり、自分の好きな場所や季節ごとに快適な地域を選んで住むこともできるようになるかもしれない。

また、鎌倉で流れる時間のスピードは、東京に比べると明らかにゆったりしている。企業にとってはスピードを優先することが合理的な選択になるため、都市に拠点を置くことが優先される。しかし個人においては、時としてスピードよりも大事なことがある。そうした個人のこだわりやモノサシが、鎌倉への移住を促進していると考えられる。まず自分が実現したいワークライフスタイルが明確にある。どこに住んでどんな毎日を送りたいかというイメージに沿って、住みたい場所を選び、働き方を組み立てているのだ。

こうした変化を、著者は「リビング・シフト(住み方の変化)」と呼ぶ。東京が便利で魅力的な都市であるのは間違いないが、今後は東京も選択肢のひとつでしかなくなるだろう。週5日会社に通い、そのために会社の近くに住居を構えて一生住む、という従来のスタンダードは変わろうとしている。

まちのテーマパーク化
Yongyuan Dai/gettyimages

従来は、大きな工場や労働力、金銭や株式を資本と呼んでいた。この資本をテコに利潤を生みだし、成長するのが資本主義の考え方である。

この経済資本にのっとって便利さや効率の指標を追い求めすぎた結果、どの地方都市に行っても画一的な風景がならぶような状況ができてしまった。このような「便利だけれど特徴や面白みのないまち」より、自分たちの地域ならではの魅力や強みを伸ばすまちのほうが、移住者に人気があるようだ。

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要約公開日 2020.08.03
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