人は悪魔に熱狂する
悪と欲望の行動経済学

未 読
人は悪魔に熱狂する
ジャンル
著者
松本健太郎
出版社
毎日新聞出版 出版社ページへ
定価
1,200円 (税抜)
出版日
2020年07月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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人は悪魔に熱狂する
悪と欲望の行動経済学
著者
松本健太郎
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定価
1,200円 (税抜)
出版日
2020年07月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
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レビュー

本書の著者はデータサイエンティストだ。ビッグデータのような大量のデータの分析を専門とする職業である。その立場にありながらデータに対して疑問を呈していることに、最初は意外性を感じた。しかし読み進めていくと、データを過信するあまり見えなくなる人間の「悪」の側面を、行動経済学の理論を使って解きほぐそうとしていることがわかる。常にデータに接しているデータサイエンティストだからこそ、データそのものでは十分に露わにできない人間の本質に、自然と目を向けるようになったのだろう。

行動経済学は、人間の心理に焦点をあてて経済的な事象を説明する学問分野だ。従来の経済学では、「神の見えざる手」に代表されるように、人間は合理的に行動することを前提に置く。行動経済学では逆に、理屈や損得勘定だけでは説明できないような誤った行動をとる、人間の非合理性を前提としている。人間がそうして様々なバイアスにさらされる原因を著者は「煩悩」に求めているが、説得力の高い説明によってその根拠を示している。

新たな商品やサービスを世に送り出す際、「合理的な判断をする人間」を前提にしているようでは、熱狂は生まれない。それではヒット商品を送り出すことは難しい。すでに、便利で豊かな生活を享受している私たちを熱狂させるためには、人間が持つ「悪」を刺激する必要があるのだ。消費者行動が多様化しているうえに、変化が急速であるという困難な時代において、行動経済学の重要性は増している。本書を一読することで、その基礎的な知識を得ることができるだろう。

香川大輔

著者

松本健太郎(まつもと けんたろう)
1984年生まれ。データサイエンティスト。
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを〝学び直し〟。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心にさまざまなデータ分析を担当するほか、日経ビジネスオンライン、ITmedia、週刊東洋経済など各種媒体にAI・データサイエンス・マーケティングに関する記事を執筆、テレビ番組の企画出演も多数。SNSを通じた情報発信には定評があり、noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする日経COMEMOメンバーとしても活躍中。著書に『データサイエンス「超」入門』(毎日新聞出版)『誤解だらけの人工知能』『なぜ「つい買ってしまう」のか』(光文社新書)『グラフをつくる前に読む本』(技術評論社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間は、意思決定にバイアスが生じることで、合理的に考えれば選ばない選択肢を拾ってしまう。
  • 要点
    2
    人間には欲求にまみれた悪の側面が潜んでいるため、アンケートなどで客観的に見えるデータを収集したとしても、正しい判断に向けてそれをうまく使えない場合がある。
  • 要点
    3
    日本人が嫌う怠惰こそがイノベーションを生み出す原動力となることがある。一方でイノベーションは、過剰に期待されることで過大な評価を受けてしまうこともある。
  • 要点
    4
    正しい判断を行なうためには、正しく見えるデータであっても疑う姿勢をもつことが求められる。

要約

【必読ポイント!】 人間に潜む「悪」の力

バイアスに気づけ
zennie/gettyimages

データは事実を示すが、必ずしも真実であるとは限らない。アンケート結果などに基づき消費者ニーズを汲んだつもりで商品開発を行なっても、期待に反して売れないことがある。本質を鋭く見抜き、データでは欠落している部分を推論で埋めながら仮説を立てて検証し、正しい結論を導く洞察力が求められる。

そもそも、人間は合理的ではない。健康を心がけている人が、空腹に耐えかねて肉厚なハンバーガーを食べることもある。意思決定に歪み(バイアス)が生じることで、合理的に考えれば選ばないような選択肢を自ら拾ってしまうのだ。このようなバイアスまみれの人間心理の究明を目指しているのが行動経済学である。

人間の内面には良い意思決定としての「善」だけではなく、煩悩にまみれた「悪」の欲求も潜んでいる。この「悪」こそ人を熱狂に駆り立てるのであり、それに負けまいとするのが人間の本質だ。それを理解しないまま「善は悪に勝つ」といった単純な枠組みで世界を見ている限り、どれだけデータ処理の理論を学んでも「データの嘘」に気づけず、本質を見抜く洞察にもたどりつけない。

実際、世の中のヒット商品を分析してみると、必ずといっていいほど人間の「悪」、煩悩の部分を突いていることがわかる。膨大なデータを眺めてヒットの確率を予想するよりも、人間の悪の側面からヒットを予測する方が成功する可能性はずっと高いのだ。

人間の欲求が生む「悪」

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは人間の欲求を5段階に分け、その最下層に「生理的欲求」を位置付けた。食欲もその1つだ。食べ放題は人間の最低ランクに位置するこの欲求を刺激するものであり、これが満たされることで自己実現などのさらに高レベルの欲求を追求できるとする。

その一方で、損をしたくないという強欲で悪魔的な側面が人間にはある。食べ放題に行けば原価が高そうなメニューばかり頼んだり、必要以上に食べ過ぎてしまったりする。たしかに、元をとろうとしても無意味なのに苦しくなるほど食べるのは、食事の楽しい雰囲気を台無しにするかもしれない。しかし、そんなキレイごとだけでは済まされないのが人間の心理である。

それから、マズローの欲求5段階説において、上から2番目に位置付けられるのが「承認欲求」である。これは現代的には「意識高い系」と同義な欲求だ。他者から認められたい、あるいは自分を価値ある存在として認めたい。それによって自己が確立した状態を目指す。特に他者承認欲求は厄介で、相手に認められるまで人間はとことん強欲になる。SNS上で「いいね」「フォロワー数」「再生回数」欲しさに奇抜な行動に走る。

承認欲求は一種の煩悩だが、「他人に認められたい」と考えること自体は決して悪いものではない。それをバネに努力を重ねて成功をつかむ人もいる。いずれにせよ、承認欲求を満たしてくれる悪魔的な商品・サービスの方が、多くの人に支持される可能性が高い。

怒りは社会を変える
jacoblund/gettyimages

科学的なデータを見れば地球温暖化はたしかに進んでいる。しかし人間は、自分の知識にしがみついて「まだ大丈夫」だとリスクを過小評価する「正常性バイアス」によって、不安から逃れようとしてしまう。地球に気候変動のような危機など迫っていないと考える人がいるのも、このようなバイアスが原因だろう。

地球温暖化が一向に解消されない状況に一石を投じたグレタ・トゥーンベリさんには、「実現不可能な正論にすぎない」という批判を向けられている。

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