集中力

パフォーマンスを300倍にする働き方
未読
集中力
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パフォーマンスを300倍にする働き方
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集中力
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2017年11月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

最近、深く考えるまとまった時間をもてたのは、いつだろうか? 仕事中はPCやスマホに絶えず連絡が入ってくる。通知のたびに気がそれ、1つのことを真剣に考えるのが難しいという方は多いのではないだろうか。

多くの組織がイノベーションの創出をめざしているが、それには「コミュニケーション」と「集中」の両方が必要といわれる。現在のオフィスやコワーキングスペースは、コミュニケーションをとりやすい環境ではある。一方で、個人が仕事に没頭できる環境は整備されておらず、知を深める力はなかなか鍛えにくいといえる。つまり、多様な人から多様な刺激を得ることが肝となる「知の探索」と、個人が高い集中状態で知を深める「知の深化」に適した環境は異なるということだ。

では、知の深化に欠かせない集中力を最大限発揮するにはどうしたらいいのか? その飽くなき探究の成果が本書だ。著者は、ジンズが収集した数千人にのぼる実証データに基づく、「高い集中」のための25のメソッドを紹介している。読後には、パフォーマンスを圧倒的に上げるための環境・取り組み方・体調の整え方が明らかになり、一気に視界が開けるはずだ。

Withコロナ時代には、テレワークとオフィスでの勤務を組み合わせる組織も増えていく。そんななか、働き方改革の議論も、残業時間の削減にとどまらない、より本質的な中身に移るだろう。そんなとき本書を読めば、「集中難民」を脱し、働き方そのものをアップデートさせるための確固たる指針を得られるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

井上一鷹(いのうえ かずたか)
株式会社Think Lab 取締役 事業統括
1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに入社し、大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。
2012年にジンズに入社。社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て現職。
学生時代に算数オリンピックアジア4位、数学オリンピック日本最終選考に進んだ経験がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    集中を生むための働き方の設計を意識すれば、高い自己肯定感のもとに仕事に集中できる人が増え、結果として「生産性」が上がっていく。
  • 要点
    2
    集中できる時間帯や場所は人によって異なる。高いパフォーマンスを発揮するには、自分に合った時間・場所・場合の環境を整えることが重要だ。
  • 要点
    3
    本書では、集中を支える「3つの土台」である、「環境」「取り組み方」「体調」に「潜在能力」を加えた4つの視点から、25の集中メソッドを紹介している。

要約

「働き方改革」の落とし穴

組織の目的「生産性」と個人の目的「幸せ」をつなぐ集中力
Morsa Images/gettyimages

働き方改革を進めるうえで大事なことは何か。著者は、組織の目的である「生産性」と個人の目的である「幸せ」の両者に目を向けて、このシナジーを生み出すことを重要視する。これを促すのが「集中力」だ。

ユニリーバ・ジャパンの社内調査によると、働く人の約8割が集中できる環境を求めているという。また、心理学者のミハイ・チクセントミハイの研究では、時間を忘れるほどの集中、すなわち「フロー体験」によって、人は得も言われぬ高揚感を味わうことが明らかになっている。要は、超集中状態になっていれば、人は自己肯定感を得られ、「幸せ」に近づくということだ。

個人は自分自身の、そして上司はチームメンバーの集中を生むための働き方の設計を意識する。そうすれば、高い自己肯定感のもとに集中して仕事に取り組める人が増え、結果として「生産性」が上がっていく。

なぜ、「働き方改革」の議論はずれ続けるのか?

働き方改革の推進において大事なのは、パフォーマンスを見える化して、時間だけの議論から抜け出すことである。「JINS MEME」の利用者のデータから明らかになったことを、いくつか紹介しよう。

1つ目は、曜日ごとの深い集中の割合である。月曜と金曜の割合は低いことが明らかで、休み明けと休み前は集中が低下してしまう。

2つ目は、集中できる時間帯が人によって異なるということだ。ある人は朝に強く15時くらいには集中が下がり始める傾向にある。それに対し、別の人は、集中が午後にかけて上がってくる。現に、朝型か夜型かという傾向をある程度決める因子として、「時計遺伝子」というものが発見されている。

3つ目は、集中できる場所も人によって異なるということである。喫茶店や公園のように多少雑音があるほうが集中しやすいタイプもいれば、そうでないタイプもいる。

このように、人はそれぞれ、集中できる時間・場所・場合(TPO)が違う。ところが、現状の働き方改革は、「水曜はノー残業デー」「9時から5時まで働こう」といった画一的な施策であることが多い。これは、個人の特性に応じたものでないため、有効なものになりにくいといえよう。高いパフォーマンスを発揮するためには、自分に合った時間・場所・場合の環境を整えることが重要だ。その際、パフォーマンスを測る尺度をもち、現状を知ることが出発点となる。

なぜ、「働き方改革」に集中力なのか?

残業しなくて済むようにするには?
piranka/gettyimages

働き方改革の目的は、「単位時間あたりのパフォーマンスが高い状態をつくる」ことである。これは、「残業しなくて済むようにすること」「イノベーションを起こす可能性を上げること」という2つの論点に整理できる。

では1つ目の「残業しなくて済むようにすること」を実現するには、どうしたらいいか。統計からわかったのは次の3つの方法だ。「企画・判断の仕事にかかる時間を減らす」「会議の時間を減らす」「こうした時間を自分でコントロールする」である。

なかでも会議の時間を減らすというと、つい会議自体の生産性に目がいきがちだ。しかし、良い仕事とは、会議をスムーズにすることではなく、良い戦略・計画を立て、コントロールすることである。

企画・計画をメインとする人なら、仮説構築から仮説検証までを一人で集中して行い、仮説検証と仮説再構築の行き来をチームでの会議で行い、最後に仮説による計画具体化を一人で集中して行うというのが望ましい。そうすると、個々人の集中力が向上するように促すことで、同じ1時間の価値が何倍にもなり、良い仮説を量産しやすくなる。これにより、チームでの会議も、その後の計画具体化もより質が高いものになる。ひいては、残業時間の削減につながるというわけだ。

イノベーションを起こす可能性を上げるには?

次に、2つ目の「イノベーションを起こす可能性を上げる」方法について考えてみよう。「両利きの経営」の理論によると、イノベーションを起こすには、「知の探索」と「知の深化」の両方が必要になるという。これまで日本企業では、知の探索が少ないことが課題とされてきた。そして、良質なコミュニケーションがとりやすいオフィスやコワーキングスペースの整備が進んでいる。

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要約公開日 2020.08.06
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