ドーナツを穴だけ残して食べる方法

未 読
ドーナツを穴だけ残して食べる方法
ジャンル
著者
大阪大学ショセキカプロジェクト(編)
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部 出版社ページへ
定価
990円(税込)
出版日
2019年09月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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大阪大学ショセキカプロジェクト(編)
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990円(税込)
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2019年09月02日
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おすすめポイント

「ドーナツを穴だけ残して食べるには?」と問われたら、どう答えるだろうか。ドーナツを食べてしまったら穴どころか何も残らないし、穴だけ残して食べるなんて不可能だ。こんな問いは馬鹿げている、といった反応をするのではないだろうか。

しかし、ここで常識を疑い、学問の知見のもとに「本当にそうだろうか?」と突き詰めてみるとどうか。学問の醍醐味は、誰もが当たり前だと考えてきたことを覆していく点にある。そう考えると「ドーナツを穴だけ残して食べる」という問いに向き合うことは、学問の力の見せどころではないだろうか。

この問題に取り組んだ研究者たちの分野は、工学、美学、数学、歴史学、人類学など実に多彩だ。彼らの向き合い方にも度肝を抜かされる。「そもそもドーナツに穴なんてあるのだろうか」「ドーナツは近代国家そのものなんじゃないか」。そんなことを言い出すのだ。それは決して奇をてらったわけではなく、自らの知見を「ドーナツの穴」に注ぎ込んだ結果である。

実はこの問いは、インターネット上の談義では1つの定番ネタである。情報が淘汰と進化を繰り返すインターネット上で、この話題が生き残っているというのは、議論することで新たな価値観が見出されていることの表れといえよう。そんな「ネタ」に、学問の立場から本気で取り組んだら、どんな世界が見えるのか。ユニークな知的格闘の記録から、常識にとらわれない発想や思考のエッセンスを学んでみてはいかがだろうか。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

大阪大学ショセキカプロジェクト
「学生が企画する本を学生の力で出版する」を最終目標とし、それを大阪大学教員・大阪大学出版会がサポートする形で2012年4月にスタート。
本書は「ドーナツを穴だけ残して食べる」という一見矛盾した命題に、大阪大学に所属する多様な研究者が、それぞれの専門領域から、アプローチしていきます。

本書の要点

  • 要点
    1
    「ドーナツを穴だけ残して食べる」なんて不可能だ。そんな常識を疑うこと、誰もが当たり前だと考えてきたことを覆すことこそ、学問の醍醐味だ。
  • 要点
    2
    ある工学者は、工学的な切削の限界について考え、さまざまな方法を検討する。また、ある美学者は、食べられるドーナツにあいている穴は、いつまでも消えない「理想」だととらえている。
  • 要点
    3
    ある数学者は4次元空間ならドーナツの穴を残せると主張する。一方、歴史学では、「ドーナツに穴があいている」という前提を疑うアプローチも存在する。

要約

【必読ポイント!】 穴だけ残して食べるには

工学者は「ドーナツを削る」
ilona titova/gettyimages

本要約では、各学部の研究者の論じた内容から、ポイントの一部を紹介していく。まずは工学だ。

工学に携わる者として、大阪大学大学院工学研究科准教授の高田孝氏は、「ドーナツの穴だけ残して食べる方法」と聞かれたら、その問題を正面から受け取ったという。具体的には、ドーナツの内側の形状を正確に把握した上で、工学的な切削の限界について考えるのだ。

ではどんな方法を使えば、ドーナツを高い精度で切削できるだろうか。口や歯を使うと、精度はせいぜい数ミリが限界だ。はさみやナイフを使っても、精度はよくても1ミリ程度だろう。

次に機械加工を試みる場合はどうか。有効なのは、ドーナツを樹脂などに浸して固形化することである。もうこの時点で食べ物ではなくなっているが、それに目をつぶれば、旋盤加工で0.1ミリ程度をめざせる。また、レーザーを短時間集中して照射するアブレーション加工なら、数十マイクロミリメートルの限界にまでたどり着けるはずだという。

「穴だけ残す」という点に着目すれば、切削ではなく「スパッタリング」という方法をとることが可能だ。ドーナツの表面を薄い金属でコーティングし、その後有機溶剤などでドーナツ成分を溶かしていく。すると、きわめて薄い被膜で覆われた「穴」が残ることになる。

このように、「切る」「削る」という単純な作業であっても、工学的には多様な方法がある。そして、材料の性質によっても考慮すべき点が多々あるのだ。

美学者は「ドーナツとは家だ」と考える

「美学」という学問の要は、何について研究するかというよりもむしろ、対象のどのような点に着目して、いかに考えるかというところにある。

大阪大学大学院文学研究科准教授の田中均氏によると、美学の立場なら、「ドーナツを食べるとドーナツの穴が無くなる」という前提自体に疑いの目を向けるという。なぜなら現実に存在する食べられるドーナツは、「ドーナツそのもの」とはいえないからだ。ドーナツを食べてしまったとしても、ただ1つの「ドーナツ」という概念は無くならない。「ドーナツそのもの」が食べられないのだから、その穴も無くなることはないと回答できるわけだ。

美学の立場からは、現実のドーナツを食べて残った穴という空間から、「人はさまざまな想いを馳せる」という面に着目することもできる。目の前のドーナツの匂いや味わいを通じて、以前食べたドーナツの記憶がよみがえってくることはないだろうか。ドーナツのように慣れ親しんだお菓子は、愛情によって守られた空間、家と結びつきやすいのだろう。つまりドーナツとは、その穴の存在により「家である」という結論を導くことも可能なのだ。

数学者は「穴を残す」を定式化する
Zerbor/gettyimages

数学者の立場からは、「ドーナツの穴だけ残して食べる方法」というお題にどう向き合うのだろうか。大阪大学大学院理学研究科准教授の宮地秀樹氏によると、簡単に「不可能」とはいえないという。数学の世界では、不可能はとても重い言葉だからだ。

本来、数学においては、論理のルールに従って思考を展開する分には、何を妄想してもいい。そのため、「穴を残す」といった言葉を数学的に定式化すれば、解決策が見つかるという希望を見出せる。

たとえば4次元という空間にドーナツを置くことができるとしよう。私たちは普段「前後、左右、上下」という本質的に異なる3つの方向を認識できる3次元の空間に住んでいる。4次元とは、これにもう1つ自由に動ける軸が増えた空間だ。

ドーナツの穴を認識するには、穴に指を通して輪をつくり、知恵の輪のように指とドーナツをはずせないことを認識する必要がある。ここでは、「ドーナツの穴」とは、このようにドーナツと指を離れないようにするしぐさと定義しよう。すると、「ドーナツの穴だけ残して食べる方法」というお題は、「あなたの友人がドーナツの穴を認識したまま、あなたはドーナツを食べることができるか」というお題に言い換えられる。

もしあなたの友人が指を輪にしてドーナツの穴に通していたとしても、4つ目の次元を使えば、その友人の指にふれずにドーナツを食べることができる。ここでは、低次元トポロジーという分野の「絡んだ2つの輪は4次元空間では必ずはずすことができる」という論理的トリックを用いている。これが穴だけ残してドーナツを食べるというお題に対する、1つの回答になる。このように、数学において論理的思考は自由なのである。

ドーナツの穴に学ぶこと

精神医学者は、ドーナツの穴に理想を見出す

人間の精神機能の不思議なところは、理性と非理性が共存しているところにある。人の心は、他者の心との共鳴を欲している。にもかかわらず、人の心を標本のようにピンで留めておくことはできない。捕まえたと思った瞬間に、指の間をすりぬけて逃げていく。

そもそも人の心は何を求めているのだろうか。大阪大学名誉教授で医学博士の井上洋一氏によると、それは精神医学的人間論の立場からすると、ドーナツの穴のようなものかもしれないという。ドーナツの穴があることで、ドーナツの上にある道は無限に続いている。私たちは、その穴のまわりをぐるぐると回る旅人だ。穴の存在によって、有限な人生の中に無限を垣間見ることができる。

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