大前研一 AI&フィンテック大全

「BBT×プレジデント」エグゼクティブセミナー選書 Vol.10
未読
大前研一 AI&フィンテック大全
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出版社
プレジデント社

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出版日
2020年03月31日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、いまや欠かせないキーテクノロジーであるAIと、今後さらに発展するであろうフィンテックについて述べたものだ。

本書の特筆すべき点は、ビジネス・ブレークスルー大学学長である大前研一氏に加え、各業界のトップランナーたちが語っていることにある。AIについては、日本アイ・ビー・エムでWatsonの事業部長を務めていた吉崎敏文氏、トヨタ自動車先進技術統括部の岡島博司氏、合同会社DMM.COM会長の亀山敬司氏の3名が、フィンテックに関しては、マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏、ウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久氏、SBI Ripple Asia代表取締役を務めた沖田貴史氏、楽天執行役員・楽天技術研究所代表だった森正弥氏の4名が、それぞれの知見や自社の取り組みを紹介している。本要約では、大前研一氏、岡島博司氏のAIに関する論述と、大前研一氏、沖田貴史氏のフィンテックに関する論述を取り上げた。

AIは現在第三次ブームを迎えており、世界中でAIシフトが進行している。フィンテックも、とりわけ新興国を中心に急激な発展を遂げている。「AIやフィンテックに興味はあるけど、いまさら誰かに聞けない……」と感じているのなら、マストバイだ。

著者

大前研一 (おおまえ けんいち)
早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士を取得。日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長。著書に、『「0から1」の発想術』『低欲望社会「大志なき時代」の新・国富論』『「国家の衰退」からいかに脱するか』(共に小学館)、『大前研一 稼ぐ力をつける「リカレント教育」』、「日本の論点」シリーズ(プレジデント社)など多数ある。
「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。マッキンゼー時代にはウォール・ストリート・ジャーナル紙のコントリビューティング・エディターとして、また、ハーバード・ビジネス・レビュー誌では経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題、都市の発展を中心として広がっていく新しい地域国家の概念などについて継続的に論文を発表していた。
この功績により1987年にイタリア大統領よりピオマンズ賞を、1995年にはアメリカのノートルダム大学で名誉法学博士号を授与された。
英国エコノミスト誌は、現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカー(故人)やトム・ピーターズが、アジアには大前研一がいるが、ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。
同誌の1993年グールー特集では世界のグールー17人の1人に、また1994年の特集では5人の中の1人として選ばれている。2005年の「Thinkers50」でも、アジア人として唯一、トップに名を連ねている。
2005年、『The Next Global Stage』がWharton School Publishingから出版される。発売当初から評判を呼び、すでに13カ国以上の国で翻訳され、ベストセラーとなっている。経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界中でAIへの移行(AIシフト)が始まっている。日本も早くAIシフトに対応しないと、AI産業の小作人になってしまう。
  • 要点
    2
    主に新興国で、フィンテックを使った金融サービスが急激に進化している。日本の場合、現金決済の利便性の高さと全銀協システムの利用料の高さが足枷となっており、普及には至っていない。
  • 要点
    3
    これからの日本企業は、プラットフォーマーとなるか、プラットフォームを効果的に利用するか、あるいはフィンテック要素技術のサプライヤーとなるかだ。フィンテックに対してどういうスタンスを取るのか、立ち位置を決める必要がある。

要約

AIが変える世界(大前研一氏)

AI産業の小作人になるな!
metamorworks/gettyimages

いま第三次AIブームが到来している。しかも今回のブームは、過去2回のものとは大きく異なる。というのもコンピューターの飛躍的な能力向上に伴い、世界中でAIシフトが進行しているからだ。AIシフトにより、国境も産業も分野も関係なく、世界の勢力図は塗り替わった。主要プレイヤーは、アメリカのITビック5(アップル・グーグル・アマゾン・フェイスブック・マイクロソフト)、中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)だ。

中国の急激な台頭の背景には、基礎研究への注力と、データベース利用のハードルの低さ、AI開発に必要なデータ収集の容易さがある。たとえば中国のあるシステム・インテグレーション会社は、全国民の半数の健康保険データを所有している。日本の民間企業では有り得ないことだ。

日本の多くの企業は、世界のAIシフトに伴うデジタル・ディスラプションに直面しており、このままではAI産業の小作人に成り下がる。早くAIシフトを加速させなければならない。

AIと人が相互に補う世界

AIを進化させたキーテクノロジーは、ディープラーニングだ。ディープラーニングは画像認識精度を大きく向上させ、情報のインプットがそのままアウトプットにつながるようになった。自動車走行中データのインプットが自動運転というアウトプットになり、身体のスキャン画像や健康情報のインプットが医療というアウトプットになり、株式情報や経済統計のインプットが高収益運用というアウトプットになる、という具合に。

AIには得意領域と不得意領域がある。得意領域は、情報や音声・画像などの「識別」、数値やニーズなどの「予測」、作業自動化や行動最適化などの「実行」の3つだ。逆に苦手領域としては、ゴール設定、察知力、問いを立てること、ひらめき、リーダーシップなどが挙げられる。こうしたAIの苦手領域は、人にとっての得意領域でもある。AIを人が補い、人をAIが補うことが、今後重要なポイントになる。

日本全体でAIを活用する
4X-image/gettyimages

日本企業は、AI分野ですでに出遅れている。AI産業の小作人にならないためにも、日本が競争力を持つ分野、すなわち自動車、機械、産業用ロボット、アニメ、ゲームなどで、AI化を進めていかなければならない。人の仕事がAIに奪われることを懸念する向きもあるが、アメリカの先端企業と同じように、これからの人はAIを使って仕事をすればいいだけだ。

AI活用は中小企業こそチャレンジすべきである。この領域は先行する大企業も少なく、中小企業にも事業拡大のチャンスがある。事業部単位でも、AI活用は考えられる。製造と広告、CRM(顧客関係管理)など、幅広い領域でAI活用を検討していくべきだろう。政府、企業、個人、それぞれのレイヤーでAIシフトを加速しなければ、日本は世界から取り残される。AIはすでに身近な場所にある。ぜひ経験し活用していくことだ。

めざすは交通事故死傷者ゼロの世界(岡島博司氏)

トヨタがめざす自動運転技術

トヨタは、AIを活用した自動運転技術の開発に取り組んでいる。その目的は「安全」だ。すべての運転シーンで最適な安全支援をするため、レアケースも含めて研究している。

アクセルの踏み間違いへの取り組みもその一例だ。以前はブザーで知らせていたが、事故をより防ぐために、車を停止する自動ブレーキシステムを開発した。どの国も衝突安全基準が決まっているが、基準はアップデートされるため、常に高い基準を設定して研究開発を行なっている。

自動運転を支える知能化

自動運転技術の開発には、3つの知能化が必要である。

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要約公開日 2020.09.10
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