グローバル資本主義VSアメリカ人

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グローバル資本主義VSアメリカ人
著者
出版社
出版日
2020年02月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

北はカナダ、南はメキシコと接しているアメリカ。その南の国境地帯にはさまざまな課題が凝縮され、グローバル化の矛盾が噴き出している。本書は南の国境問題を中心に、アメリカ各地の姿を描き出している。

アメリカとメキシコは、陸続きの国境を隔てただけの地でありながら明確な経済格差がある。豊かな国アメリカで仕事を得て、自らも豊かになりたいという渇望がメキシコ側にいる人びとの心を突き上げ、行動に走らせる。だからこそ国境地帯ではドラッグ、違法越境、売春などが渦巻く。実は、シリコンバレーの近隣や南部の過疎地など、米国内のほかの地域でも同様の問題が起きている。著者は、泥臭い現場に足を運び、市井の人に話を聞き、実情を丹念にルポした。

これらの地域に共通するものは何か。それは、「辺縁」ではないだろうか。本書で取り上げられている場所の多くは豊かさとかけ離れた地であり、大国の辺縁に位置付けられる。そこから矛盾がマグマのように噴き出し、子どもから大人までその渦に巻き込まれていく。

登場するのは、生活を営むために必死に働き、家族を守り、コミュニティに貢献する人びとだ。その多くは決して豊かではなく、日々、苦労と努力を重ねている。さまざまな経歴を背負うかれらの言葉は重い。だからこそ、報道を通して日本に伝わってくるアメリカの表情とは、全く異なる実像を知ることができる。地を這う取材が結実した、渾身の力作である。

ライター画像
毬谷実宏

著者

篠原匡(しのはら ただし)
日経ビジネス副編集長。1975年生まれ。99年慶應義塾大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者、日経ビジネスオンライン記者、日経クロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長を経て、2019年4月から日経ビジネス副編集長。執筆、編集に加えて、動画ドキュメンタリーの企画・制作も手がける。著書に『腹八分の資本主義』(新潮新書)、『おまんのモノサシ持ちや!』(日本経済新聞出版社)、『神山プロジェクト』(日経BP)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ドナルド・トランプ氏が大統領になって以降特に、アメリカとメキシコを分かつ3000キロ超の国境は、政治、経済、社会に関わる主要な争点となっている。
  • 要点
    2
    アメリカの経済力は相変わらず強く、世界の力を集める中心地になっている。ゆえにそれに接するメキシコ側の国境地帯の街・ティフアナには、工場だけでなくドラッグ、不法移民も集まってくる。
  • 要点
    3
    世界屈指のハイテクエリア、シリコンバレーの一角に、そのイメージにそぐわない場所がある。国境地帯ではない地方都市でも、グローバル化に翻弄される場所が米国内にはある。

要約

【必読ポイント!】 3000キロ超の国境線で

トランプ大統領とアメリカ人
Rabbitti/gettyimages

トランプ政権になって以来、「国境」が米国の政治、経済、社会の主要な争点に浮上している。1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)によって、米国、カナダ、メキシコの3カ国の関税はほとんどすべてが撤廃された。だが、アメリカ・ファーストを唱えるトランプ政権はNAFTAの再交渉に着手し、原産地比率の引き上げや酪農市場の開放など、米国に有利な条件をカナダやメキシコに飲ませた。NAFTA離脱などをちらつかせながら、躊躇する2つの国家を撃破した結果である。

社会的に見ても国境の壁は、日ごとに高くなりつつある。不法移民の親子を引き離し、高度な技術を持つ外国人へのビザ発給も減っている。実際に物理的な壁ができるかどうかは別にして、トランプ政権は人やモノの流入を制限しつつあり、仮想バリアの構築が始まっている。自由貿易が拡大するなかで米国の労働者や中間層が打撃を被っていたのは事実だ。不法移民やドラッグ流入などの国境管理の問題もあり、大統領の強硬路線を支持する人は根雪のように存在する。

国境自警団と不法移民

メキシコ国境で麻薬の運び屋などを追跡するアリゾナ州アリヴァカの自警団は、さまざまなバックグラウンドを持つ人びとからなる。ハンターが野生動物を追い詰めるように、地面に残した足跡などから運び屋のルートを特定する。

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要約公開日 2020.09.02
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