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食卓の経営塾

DEAN & DELUCA 心に響くビジネスの育て方


本書の要点

  • 外側だけ真似ていても、本質を外していたら決してうまくいかない。

  • メンバーと目線を合わせるためには、普段どれだけ根っこの話をしているかが重要になってくる。

  • ある一定の「ヒューマンスケール」を超えると、お店も組織も味気のないものになってしまう。

  • 信頼する人の紹介を大切にするべきだ。信頼でつながっているコミュニティは、他人を裏切らない。

  • 組織も料理と同じで、電子レンジのように急激に温めるとすぐに冷めてしまうが、オーブンのようにじっくり温めるとなかなか熱が冷めないものだ。

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哲学を共有する

失敗は成長のもと

ANA BARAULIA/gettyimages

ニューヨーク発の「食のセレクトショップ」であるディーン&デルーカが日本に上陸したのは、2003年のことだった。いまでこそ日本で50店舗を超えるほどの人気となったディーン&デルーカだが、今日に至るまでは「危機」と「失敗」の連続だった。著者はもともとインテリアショップやカフェの経営に従事していた。しかし、あるとき「ディーン&デルーカを日本でやらないか?」というオファーを大手商社から受け、まったく未経験の食品ビジネスをやることになる。一方でディーン&デルーカにとっても、これがはじめての海外進出でノウハウがなく、著者たちはひとまず「ニューヨークの店を真似する」ことを目標に掲げた。だがこれが大失敗。ニューヨークと同じように、まるごとの魚をクラッシュドアイスの上に並べたり、野菜や果物をカゴいっぱいに盛りつけたり、ブロックのまま吊るした牛肉や豚の頭を展示したりと、マーケット=市場のような売り場づくりをめざしたが、結果は大赤字だった。見栄えにこだわるあまり、アメリカと日本の食文化がそもそも違うことを無視してしまっていたのだ。「さすがにこのままではもたない」と判断した著者は、オープンからわずか半年で、もっとも気合を入れてつくった品川店を全面改装した。そして生鮮食品の販売をやめ、チーズと生ハムの売り場を約3倍に拡大し、イートインスペースを設けた。「そもそもディーン&デルーカはどういう店なのか」を顧客に伝えるため、体験してもらうことに重点を置くべきだと考えた結果である。外側だけ真似ていても、本質を外していたら決してうまくいかない――著者はそう学んだ。

哲学が根っこになければ成功は見えてこない

DjelicS/gettyimages

「イートインスペースがある食材店」というスタイルが生まれ、「最悪の状態」からは脱しつつあったディーン&デルーカだが、すぐに利益が出たわけでなく、むしろ赤字は膨らんでいった。ヒントを求めた著者は、創業者のひとりであるジョルジオ・デルーカ氏に会うため、2006年にニューヨークへ旅立った。この出会いが、著者の運命を大きく変えた。「僕たちは、アメリカのやり方と極力ぶれないようにやっている……それなりに素敵な店になっていると思うけど、全然お客さまが買ってくださらない」と窮乏を訴える著者に対し、デルーカ氏は「いま目の前にある店の形ではなく、ディーン&デルーカの根底にある僕たちの考え方を見るようにしなさい」と諭した。ディーン&デルーカの本来の哲学は、「学ぶべきは、その食材がつくられ、伝統的に食されてきた地方(ルーツ)、まさにつくり手の生活の中にある」というもの。つくり手が何を大事にしていて、現地ではどう食べられているのか。そうした本物の食文化をアメリカに伝えるために、事業を始めたのだという。「僕が東京でディーン&デルーカをやるなら、日本の食材で埋め尽くすね」。デルーカ氏のその言葉を聞いたとき、著者の考え方はガラリと変わった。自分たちの足元にある、日本のすばらしい食文化に気づいたのだ。根っこにある哲学さえ共有していれば、あとは自分の視点で世界を見ればいい。重要なのは、かっこいいお店作りでも、オリジナルの模倣でもない。本当にいいものを、日本を含めて世界中から選びぬき、都心にいながら生産地の市場めぐりができるような体験を提案すること。そしてそれをローカル目線で「編集」し、想いとともに届けること。それが、数々の失敗経験を経て得られた教訓だった。

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ブランドの前に人がある

ライバルは個人店

「そもそもお店の魅力ってなんだろう?」と考えると、「個人店」という解に行き着くと著者は考えている。

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要約公開日 2020.09.13
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