緊急提言 パンデミック

寄稿とインタビュー
未読
緊急提言 パンデミック
緊急提言 パンデミック
寄稿とインタビュー
未読
緊急提言 パンデミック
出版社
河出書房新社

出版社ページへ

出版日
2020年10月07日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

『サピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏が、新型コロナウイルスがもたらした危機、そしてポストコロナの世界について語る――本書の紹介は、これだけでも充分かもしれない。

感染症は農業革命以来、人類の歴史において中心的な役割を果たし、しばしば経済危機や政治危機をもたらしてきた。そこで得られた教訓とは、「ウイルスは歴史の行方を決めることはできない。それを決めるのは人間である」ということであり、これは新型コロナウイルスに関しても同様だ。

私たちが直面している危機はウイルスではなく、憎悪と強欲と無知という、人類が内に抱えた魔物たちだとハラリ氏は語る。責任転嫁や陰謀論が世にあふれれば、ポストコロナの世界は分裂して暴力があふれ、貧しいものとなるに違いない。逆に内なる魔物を抑え、科学を信じて連帯と協力を選ぶこともできる。

「いまは歴史をつくるときなのだ」と語るハラリ氏の視線は、すでにこのパンデミックの先に向けられている。人類は、きっと今回のコロナ禍も生き延びる。だがその先にある世界のあり方は、現在の私たちの判断と行動によって決まる。これこそ歴史学を専門とするハラリ氏が、過去から学んだ叡智だ。

本書の印税はハラリ氏の意思によって放棄され、感染症の被害者を支援するため、慈善団体に寄付されるという。まさにこのような行動の積み重ねこそが、歴史をつくっていくに違いない。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

ユヴァル・ノア・ハラリ (Yuval Noah Harari)
歴史学者、哲学者。
1976年、イスラエル、ハイファ生まれ。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して2020年に博士号を取得。現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えるかたわら、2018年のダボス会議での基調講演など、世界中の聴衆にむけて講義や講演も行う。
著書『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』は、世界的なベストセラーとなっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    いま人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではない。それは人間どうしの信頼の欠如のせいであり、決定的な闘いは人類そのもののなかで起きている。
  • 要点
    2
    私たちはいま、歴史が加速する時期に差しかかっている。今後2、3カ月の間に、途方もない規模の社会的・政治的実験が行われ、それが社会を根本的に変えるだろう。
  • 要点
    3
    私たちは2つの重要な選択を迫られている。第一の選択は「全体主義的監視か国民の権利拡大か」というもので、第二の選択は「ナショナリズムによる孤立かグローバルな団結か」というものだ。

要約

【必読ポイント!】人類は新型コロナウイルスといかに闘うべきか

感染症への本当の対抗手段
PeopleImages/gettyimages

多くの人が新型コロナウイルスの大流行をグローバル化のせいにし、感染爆発がふたたび起こるのを防ぐためには、脱グローバル化するしかないと考えている。しかし長期の孤立主義政策は、真の感染症対策にはならない。むしろ正反対で、感染症の大流行への本当の対抗手段は、分離ではなく協力なのだ。

感染症はグローバル化時代のはるか以前から、膨大な人命を奪ってきた。14世紀、ペストは10年そこそこで東アジアから西ヨーロッパまで広がり、ユーラシア大陸の人口の4分の1を超える人々が亡くなった。1918年に流行したスペインかぜは、第一次世界大戦での戦死者を上回る人の命を奪った。

それ以降の100年間、人口の増加と交通の発達が相まって、人類は感染症に対してさらにぜい弱になったはずだ。ところが実際には、感染症の発生率も影響も劇的に減少している。

最善の防衛手段は隔離ではなく情報

21世紀に感染症で亡くなる人の数は、石器時代以降のどの時期と比べても少ない。これは、病原体に対して人間が持っている最善の防衛手段が、隔離ではなく情報であるためだ。

20世紀には、世界中の科学者や医師や看護師が情報を共有し、感染症の流行の背後にあるメカニズムと、その対抗手段を突き止めるようになった。天然痘は1967年の時点で1500万人が感染し、そのうち200万人が亡くなるような感染症であった。しかし予防接種が世界中で推進されたことで、1979年には天然痘の根絶が確認され、世界保健機関が人類の勝利を宣言した。

この歴史は、現在の新型コロナウイルス感染症に対して、何を教えてくれるだろうか。

新型コロナウイルス感染症の意味

歴史が教えてくれるのは、国境を閉鎖し続けても自国を守るのは不可能であること、そして真に安全を確保するためには、信頼のおける科学的情報の共有とグローバルな団結が不可欠ということだ。

最も重要なのは、どこであれ一国における感染症の拡大が、全人類を危険にさらすということだ。もし天然痘の予防接種を怠っていた国があったなら、ウイルスは変異し、人類全体を危機に陥れていただろう。

いま人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではなく、人間どうしの信頼の欠如のせいでもある。もしこの感染症の大流行が人間の不和と不信を募らせるのなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう。

コロナ後の世界

「石鹸警察」はなぜ不要か
hoshisei/gettyimages

人類はグローバルな危機に直面している。それは私たちの世代にとって最大の危機かもしれない。これから人々や政府が下す決定は、何年にもわたって世界の進む方向を定めるだろう。

この危機に臨むうえで、私たちは2つの重要な選択をつきつけられている。第一の選択は「全体主義的監視か、それとも国民の権利拡大か」というものだ。そして第二の選択は「ナショナリズムとそれに基づく孤立か、それともグローバルな団結か」というものである。

もっと見る
この続きを見るには...
残り1475/2720文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.10.21
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
つなぐ時計
つなぐ時計
金田信一郎
未読
日本型組織 存続の条件
日本型組織 存続の条件
山本七平
未読
トレイルブレイザー
トレイルブレイザー
渡部典子(訳)マーク・ベニオフモニカ・ラングレー
未読
コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か
コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か
西田亮介
未読
なぜ中間層は没落したのか
なぜ中間層は没落したのか
ピーター・テミン栗林寛幸(訳)猪木武徳(解説)
未読
仮想空間シフト
仮想空間シフト
山口周尾原和啓
未読
Spotify
Spotify
池上明子(訳)スベン・カールソンヨーナス・レイヨンフーフブッド
未読
コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方
コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方
遠藤功
未読
法人導入をお考えのお客様