トレイルブレイザー

企業が本気で社会を変える10の思考
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企業の成功とは、そして私たちビジネスパーソンの成功とは、なんだろうか。企業の利益や時価総額を膨れ上がらせること、あるいは高額の報酬や高い社会的地位を得ることだろうか。もちろん、このような目標も重要だ。他の人に価値を提供している証なのだから。

しかし、本当にそれだけでいいのだろうか。本書の著者、マーク・ベニオフは大手IT企業、オラクルのバイスプレジデントの職を辞し、セールスフォースを立ち上げた。世界に好ましい影響を与えるため、企業文化や企業活動のすべてに「社会に役立つ」という信念を根付かせたいと考えていたからだ。彼は創業当初から従業員が就業時間中にボランティア活動をすることを認め、利益の一部をさまざまな団体に寄付してきた。

この活動は「1-1-1モデル」として、セールスフォースの文化にしっかりと組み込まれている。「1-1-1モデル」は、非営利団体や慈善団体を支援するために製品の1%、株式の1%、従業員の就業時間の1%を寄付するというもので、非常にわかりやすいため、他の企業にも広まっている。

企業やそのCEO、そしてビジネスパーソンが、自らの利益のみを追求していればいいという時代は終わった。自らの属するコミュニティで自分たちの価値観と対立する出来事が起こったとき、声を上げ、社会をより良い方向へ動かしていくこと。それこそが、企業やビジネスパーソンが永続的に成長する唯一の方法だ。決してこれは理想論ではなく、現実の企業経営の話なのだ。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

マーク・ベニオフ(Marc Benioff)
セールスフォース・ドットコムを創設し、会長兼CEOを務める。クラウド・コンピューティングの先駆者であり、フォーブス誌の「過去10年のトップイノベーター」、フォーチュン誌の「世界最高のリーダー」、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の「最高業績をあげたCEO上位10人」に選ばれている。平等に関するリーダーシップで数々の賞を受賞している。
フォーチュン500社に入り、従業員数が5万人を超えるセールスフォースは、フォーブス誌の「世界で最もイノベーティブな企業」やフォーチュン誌の「最も働きたい企業」に選ばれ、フォーチュン誌の「世界で最も称賛される企業」では10位となっている。ベニオフは創業時に、フィランソロピーの「1-1-1」モデルをつくり、自社の資本、製品、従業員の就業時間の1%を使って世界中のコミュニティを支援してきた。今日、8500社以上が「プレッジ1%(1%の誓い)」運動を通じて「1-1-1モデル」を採用している。

モニカ・ラングレー(Monica Langley)
2017年にセールスフォース・ドットコムのグローバル戦略担当エグゼクティブ・バイスプレジデントに就任。27年間、ウォールストリート・ジャーナル紙の記者を務め、1面記事やニュース速報を担当し、受賞経験を持つ。テレビのコメンテーターや企業弁護士を務め、ベストセラー作家でもある。

本書の要点

  • 要点
    1
    セールスフォースにおける「トレイルブレーザー(開拓者)」とは、「恐れずに探求し、イノベーションを切望し、楽しみながら問題を解決して社会貢献もする、文化と多様性を大切にする人々」という意味が込められている。
  • 要点
    2
    コアバリューは、車でいえば強力なエンジンにあたる。セールスフォースでは、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という4つのコアバリューが連動して勢いを生み出している。
  • 要点
    3
    企業は株主の利益のみを追求すればいいわけではない。さまざまな問題に積極的に関与し、よりよい社会を創っていく責務がある。

要約

バリューから価値が生まれる

成功と社会貢献を対立軸にしない

著者、マーク・ベニオフが1999年春にセールスフォースを創業したとき、自分の成功の尺度とは、従業員がそれぞれの仕事にどれだけ意味を見出せるかにあると考えていた。従業員が毎日出社して、自分のしている仕事が本当に大事だ、自分が頑張ることで会社の利益以外のことにも貢献できると感じられるような企業文化をつくることが最優先だった。

加えてセールスフォースには、世界クラスのインターネット企業となり、セールスフォース・オートメーション(SFA、営業支援システム)のリーダーになるという大きなビジョンがあった。当時は、利益を上げるか、変化を起こすプラットフォームになるか、企業はどちらか一方を選ばなければならないと考えられていた。だがその2つはトレードオフではないのだ。

「1-1-1モデル」による社会貢献
scyther5/gettyimages

今や企業は、単に利益を上げるだけでなく、社会が直面する重要な問題に対処するために行動することも求められている。実際、セールスフォースは、「1-1-1」モデルとして、非営利団体や慈善団体を支援するために製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を寄付する活動を行っている。

不平等の増大や環境保護への関心の高まりなど、グローバルな課題に取り組み、私たちの世界をより良いものにするために、ビジネスはその性質を変えていかねばならない。地球の行く末は、私たちの肩にかかっている。

「トレイルブレイザー」と呼んでいます

セールスフォースがサービス実践者向けのイベントを企画したとき、自社に戻ってセールスフォースのソフトウェアを実装し、広めてくれる開発者のことをどう呼ぶかで議論となった。彼ら彼女らはセールスフォースのために働き、偉大なイノベーター、エバンジェリスト(伝道者)として活動してくれている人たちだ。

イベント企画を任せた社員に意見を求めると、「私たちはトレイルブレイザー(開拓者)と呼んでいます」と教えてくれた。その呼び方には、「恐れずに探求し、イノベーションを切望し、楽しみながら問題を解決して社会貢献もする、文化と多様性を大切にする人々」というイメージが込められているのだという。

著者は正直、すぐにはピンと来なかった。だがフタを開けてみると、その言葉は従業員、顧客、パートナーなどの間で大いに歓迎された。トレイルブレイザーとプリントしたパーカーをつくったところ、あっという間に売り切れてしまったほどだ。

リスクを取ってイノベーションを生む
Asia-Pacific Images Studio/gettyimages

テック業界において、成功する企業は継続的にイノベーションを生み出している。実際、セールスフォースにおいても、イノベーションはコアバリューの中で最もビジネスの成功に直結していた。だからこそ、21世紀を代表する技術になるはずのAIを、セールスフォースがいかに活用するかを考える必要があった。

2015年夏、著者は、セールスフォースの全製品にAIを組み込む全社プロジェクトを始めることを伝え、エンジニアたちを会議室に呼び出した。つくりたいのは、法人向けAIツールだ。コードを書かなくても簡単にカスタマイズでき、ノートパソコンやスマートフォンで数十億人の顧客とのやり取りを処理できるもの。誰もなし遂げたことのない、それまでで最も野心的な課題だった。しかしこれは、AIにセールスフォースの未来があるかどうかという問題ではなく、セールスフォースに未来があるかどうかの問題だった。

リスクの高い構想は、ストレステストのようなものだ。常に自分たちのバリューを疑いたくなるし、手綱を緩めたくもなる。しかし多くの場合、企業文化の中にバリューをさらに深くたたき込んでいけば、目を見張るような新しい洞察につながる。

平等を追求する

2015年3月、上級管理職であるシンディ・ロビンズと上級幹部であるレイラ・セカが、著者の自宅にやってきた。その表情は暗い。

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要約公開日 2020.10.19
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