山崎大、25歳。農学部を卒業し、食品大手で人気企業の「葛原食品」に就職できたという喜びも束の間、予想外に広報部に配属されてしまった。国語が苦手なので理系、人前で話すのが苦手なので研究職を望んでいた大は、毎日のように先輩からダメ出しされるようになる。配属され3年が経っても、「言葉にできないコンプレックス」は深まるばかりだった。
会社で大きなミスをして落ち込んでいたある日、同窓会の知らせが届く。懐かしさに出席を決意するも、いざ行ってみると自分以外の人が輝いて見える。一人でぽつんと立っていた大に声をかけてくれたのが、和田重信先生だった。和田先生は、広告会社から来ていた特別講師で、「広告と言葉」を教えていた。大も一講座だけ受けたことがある。「農学部で広告の講義を受ける人は珍しいから、覚えているよ。レポートも面白かった」と言ってくれた和田先生に、大は思わず、涙ながらに自分の悩みを吐き出した。
じっと大の話を聞いていた和田先生はこう切り出す――5日間で、君の言葉の力を強くしてあげるよ。
こうして、大は5日間、自分の悩みを和田先生にメールで送り、先生から与えられる課題を実行することになる。
まず大が相談したのは、「頭の中の言葉がパッと言葉にならない」ということだった。ボキャブラリーが少ないのではないかと感じていたが、何をしたら改善できるのかがわからないと語る大。しかし、和田先生は、ボキャブラリーの問題ではないという。
最初の課題は「30秒で図形の名前を10個言う」だった。理系の大にとっては知っていて当然の単語であるが、それでもいざ声に出そうとするのは難しいものだ。仕事や日常会話に必要な語彙であったら、大はすでに持っているのだ。それでも言葉が出てこないのは、普段から声に出していないからだ。「ものの名前を10個言う」というトレーニングを続けてみよう。続けているうちに、脳の中でどんどん「言葉の花火」が上がりやすくなるはずだ。
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