かつて著者は、あまりの営業成績の悪さに新卒入社3カ月で地方に左遷された。売上がゼロだったのだ。断られるのがイヤで、見込み顧客へのアポイント電話ができないし、自分のトークを聞かれるのが苦痛で、上司と同行営業するのが苦手だった。自分のことばかり気にして行動できなかった。
地方に異動になった著者に課されたのは、飛び込み営業である。ほとんどが門前払いになり、時にはクレームになることすらあった。そんな飛び込み営業がイヤになった著者は、ひたすら既存の顧客だけを回り、担当者と5分ほどたわいもない話をすることを繰り返すようになった。ただそれだけなのに、既存の顧客から紹介がどんどん入るようになり、1年後にはエリアマネージャーになっていた。地方に異動してから2年、そのエリアは全国1200店舗中、売上達成率ナンバーワンにまでなった。
いまや著者は、コミュニケーションスクールを運営する、コミュニケーションのエキスパートだ。説明がうまい人が売れる、専門知識と技術がある人が出世するとは限らない。人の心を動かすのは、「どんなことを伝えるか」より「相手とどんな関係性にあるか」なのだ。その関係性を作るのが「雑談」である。著者のコミュニケーションスクールのメソッドを使用して、日々の雑談で人間関係を深めるトーク術を紹介しよう。
相手とファーストコンタクトを取るとき、三流は、話しかけられるのを待ち、二流は、先に話しはじめるという。では、一流はどうするのだろうか。
人間は質問をされると、それに答えるという習慣がある。「今日のランチは何を食べたの?」と聞かれれば、瞬間的に今日のランチのシーンを思い出すだろう。一流はこの習慣を明確に理解しているからこそ、最初に質問をして相手から会話を引き出し、会話をリードしていく。会話の主導権を握っているのは、話している側ではなく、じつは質問をしている側だ。
著者のかつての上司は、全国ナンバーワンのトップセールスマンだった。営業先に行くと、「ご無沙汰しております!しかし焼けてますね。ゴルフですか?」と必ず先手を取って質問していたという。
スティーブ・ジョブズの師ともいわれているシリコンバレーの偉大なコーチ、ビル・キャンベルも、コーチングをするとき必ず「How are you? What are you working?(調子はどう? 今何に取り組んでいるんだい?)」という質問から入るという。
質問をして先手を取る。質問をされた人は必ず答える。一流は、このシンプルな法則を徹底しているのである。
雑談をする前に、どんな準備をするだろうか。何も準備をしないのが三流であり、雑談ネタを準備するのが二流だ。
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