デジタルマーケティングの定石

なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?
未読
デジタルマーケティングの定石
デジタルマーケティングの定石
なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?
未読
デジタルマーケティングの定石
出版社
日本実業出版社

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出版日
2020年09月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

2020年9月、新型コロナウイルスの脅威の中で発足した菅義偉内閣は、「デジタル庁」の創設を掲げている。行政のデジタル化も課題であるが、あなたの働く組織のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展具合はいかがだろうか。

いま、企業活動において最もDXが求められるのは、対面での営業に代わって見込み顧客を獲得し、売上につなげるデジタルマーケティングの促進だろう。しかしデジタルは万能ではないし、AIは魔法の杖ではない。本書でも、デジタルマーケティングの専門家である著者が「デジタルを使えば、アイディア一発勝負で大きな成果が出ると思ったら大間違い」と喝破しているように、それは手段の一つにすぎないのだ。本書では、「人間の営業のような説得は一切できない」「データからユーザの顔は見えない」「バズには再現性がない」などと、デジタルへの希望を打ち砕くような「デジタルの限界」が次々に述べられている。

それでは、どのようにデジタルを活用すればいいのだろうか。本書によれば、デジタルの長所を理解して売上拡大につなげるために理解すべきことは、大きく分けて2つ。「顧客が買うまでの流れ」と「デジタルマーケティングの定石」だ。本書ではこの2点について、どう理解し、どう活用するべきなのかが詳しく紹介されている。

DXと言っても、何から手をつければいいかわからない――そんなビジネスパーソンは、本書を座右に置けば、成果に直結する施策の立案が可能となるだろう。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

垣内勇威(かきうち ゆうい)
株式会社WACUL(ワカル)取締役CIO、WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長。
東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービット入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに携わる。2013年、株式会社WACUL入社。 データ分析から改善提案や成果の測定といった「Webマーケティングの売上拡大のPDCA」をAIが支援するSaaSツール『AIアナリスト』を生み出す。現在は取締役CIO(Chief Incubation Officer)兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、さらなるノウハウの構築と新規プロダクトの創出を担当。3万サイト超の分析とユーザ行動観察から得たデジタルマーケティングの知見を、研究レポートやTwitter、講演・セミナーなどで発信し、その痛快かつ明快な語り口で人気を博す。

株式会社WACUL https://wacul.co.jp/
Twitter https://twitter.com/yuikakiuchi

本書の要点

  • 要点
    1
    デジタルマーケティングの「定石」とは、従来の顧客接点をデジタルに置換することで、大幅なコスト削減を実現する施策パターンである。
  • 要点
    2
    デジタルマーケティングを推進するなら、何よりまず「デジタルは万能ではない」という事実を認識する必要がある。データで行動履歴が取れるからといって、ユーザのことを理解できるわけではない。
  • 要点
    3
    初回購入フェーズの定石は、すべての顧客接点から、最速でのゴール直行を狙うことだ。このフェーズでは、ゴールの設計が成果を大きく左右する。

要約

デジタルの特性を理解する

デジタルにできること、できないこと
Rawpixel/gettyimages

企業がWebサイト、アプリ、ネット広告、SNS、メールなどといったデジタルをマーケティングに活用するとき、必ず知っておかなければならない「定石」がある。本書で紹介される「定石」は、従来の顧客接点をデジタルに置換し、大幅なコスト削減を実現する施策だ。

デジタルを活用するといっても、ほとんどの人はデジタルに「できること」と「できないこと」を区別できていない。たとえば人材紹介サービス会社による求職者向けの情報サイトの場合、求職者の登録率が高く、売り上げを最大化できるのは、まず会員登録させてから求人情報を開示する「会員登録型」だ。このタイプは、Webサイト上に求人情報が多数掲載されている「求人検索型」のサイトより、登録者数も売上も2倍以上多くなる。「求人検索型」は、求職者のニーズを満たしているように見えて、リアルなユーザ行動に合っていないのだ。

「求人検索型」のサイトが良くない理由は、会員登録までのハードルが高いからだ。転職サイトを初めて訪れたユーザは、サイト内でおもしろそうな仕事を見つけたとしても、今すぐ応募しようとは思わないだろう。いくつかの求人を見るものの、これと決められず、諦めて離脱してしまう可能性が高い。初めてWebサイトを訪れた求職者に対して、自ら求人を見つけてもらうというコミュニケーションは、デジタルには「できないこと」だ。

一方で、会員登録型はハードルが低い。ユーザは、「ひとまず登録しておいて、本格的に転職活動を始めるタイミングで具体的に相談しよう」と考えてくれる。

それでも、世の中には多くの「求人検索型」サイトがある。企業担当者がデジタルの特性を理解していないからだ。

デジタルの制約
Urupong/gettyimages

デジタルに関わったことがない人ほど、デジタルでどんな課題も解決できるという幻想を抱きがちだ。しかしそれは、大きな誤りである。デジタルは既存のビジネスの機能を代替する「手段」の一つにすぎない。既存のビジネスを理解し、その機能をいかにデジタルで代替できるかがカギとなる。

デジタル最大の制約は「3秒以上の営業トークは無視される」ことだ。対面の営業なら、商談中に何度でもリカバリーできるだろう。一方、デジタルにおいては、ほんの少しでもユーザの期待とずれた話をすれば、ユーザは遠慮なく去っていく。しかもデジタルでは、ユーザに新しい気付きを与えることはきわめて困難だし、感情に訴えることもできない。

デジタルにできることは、ユーザの期待に応えることだけだ。それができて初めて「3秒以下の営業トーク」が許される。そのため「3秒」で何を伝えるかが、デジタルで最も重要な検討事項の一つになる。

しかしここで2つ目の制約、「ユーザの顔がまったく見えない」が問題となる。デジタルでは、ユーザの行動履歴である「データ」はいくらでも手に入るが、行動の「理由」まではわからない。

ユーザの行動の「理由」を知りたいとき、最も有効なのは「アンケート」と「行動観察」である。「アンケート」で訪問理由を尋ね、誰に対して3秒の営業トークを準備すればいいかのヒントをつかむ。

次に「行動観察」で、アンケートで回答してくれたユーザの中から、ターゲットに近い人を呼んで、自分の目の前で普段通りWebサイトを使ってもらう。そうすれば、アンケートではわからない、デジタル上でのユーザの心理変化を知ることができる。

スピーディに人を集められるような「爆発力」がないのも、デジタルの限界の一つだ。たとえば「検索」でサイトの訪問数を伸ばすには、1つのキーワードに対して3,000字から5,000字程度の文章があるページが必要となる。1キーワードで100人呼べるとしても、10万人を呼ぶには1,000個のキーワードに対応するページを用意しなければならない。

では、「広告」はどうか。これも難しい。

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要約公開日 2020.12.23
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