ブランデッドエンターテイメント

お金を払ってでも見たい広告
未読
ブランデッドエンターテイメント
ブランデッドエンターテイメント
お金を払ってでも見たい広告
未読
ブランデッドエンターテイメント
出版社
出版日
2020年08月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

広告業界の大きな変化にお気づきだろうか。ネットフリックス、アマゾンプライムビデオといった有料動画コンテンツは、質・量の充実はもちろん、広告がない快適さでも支持されている。我々消費者にとってテレビ番組にCMはつきものだったが、そもそも広告を見ないという選択肢を持っていることに気づき、鬱陶しい広告を飛ばすことが現実にできるようになったのだ。

これはブランド側から見ると、今までは固定のメディアでより多く買えばよかった広告枠が、あらゆるメディア、エンターテイメントに広がったことを意味する。つまり、見る人の時間を奪い合う「観客時間争奪の時代」が世界中で起きているのだ。このような変革・激震時代の新しい広告手法として注目されているのが「ブランデッドエンターテイメント」である。

本書は、世界最大かつ最も有名なブランドアイデアのアワード、「カンヌライオンズ」の審査員15名が初めて語る、未来の広告手法についての世界で唯一の書籍だ。クリエイティブ業界のプロである審査員たちが、世界中から集められた1000以上の優れたプロジェクトを分析して濃い議論を交わしている。その中で、広告・クリエイティブ業界をより向上させていく方法を各自の視点から考察している。

あなたにとって「お金を払ってでも見たい広告」は何だろう。本書で挙げられている受賞作も視聴しながら、ぜひ未来の広告についての理解を深めていただきたい。

ライター画像
大島季子

著者

PJ・ペレイラ
米国・世界で数多くの革新的な広告・エンターテイメントキャンペーンを実現してきた、Pereira O'Dell社の共同創設者でありクリエイティブ総責任者。これまで、MINI、Coca-Cola、LEGO、Google、SkypeそしてIntelを始め数々のブランドと仕事をしてきた。サンダンス映画祭に公式選出された『Lo and Behold』や、3つのカンヌライオンズグランプリを獲得したソーシャルフィルム『The Beauty Inside』などをプロデュース。13年前にカンヌライオンズ・サイバー部門にてカンヌライオンズ史上最年少の審査員長を務めたのを皮切りに数々のアワードで審査員、審査委員長をつとめている。アドウィーク誌のCreative 100、4Aの広告を偉大にする100人に選ばれている。
2017年にはカンヌライオンズ・ブランデッドエンターテイメント部門の審査員長をつとめ、2018年に書籍「The Art of Branded Entertainment (英Peter Owen出版)」 を編集者・著者として執筆。

鈴木智也(すずき ともや)監修・訳
CEO STORIES®合同会社 / STORIES® INTERNATIONAL,INC.
博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所等を経て2011年博報堂DY・セガなどの出資で STORIES®を設立。STORIESは東京・LAに拠点を持つクリエイティブ・ブティック。米国を中心に20名以上のクリエイターが所属、SUBARU Your story withシリーズ、安室奈美恵MV、宇多田ヒカルMV・テレビ番組などブランデッドエンターテイメント、CM、MV、イベント等、数多くのプロジェクトをプロデュース。米国においても複数のハリウッド映画、テレビ番組を企画開発進行中。
早稲田大法学部・USC映画大学院プロデューサー学科卒業
2017年カンヌライオンズ・ブランデッドエンターテイメント部門審査員
2018年Spikes Asia審査員、「The Art of Branded Entertainment (共著 英Peter Owen出版)」
www.stories-llc.com

本書の要点

  • 要点
    1
    ブランドの競争相手はもはや広告主だけでなく、エンターテイメントとなった。貴重な観客の時間をいただくための新しい手法がブランデッドエンターテイメント、お金を払ってでも見たい広告だ。
  • 要点
    2
    ブランデッドエンターテイメントで重要になるのがストーリーテリングと映像技術(クラフト)だ。また、究極のエンターテイメントであるスポーツはこれから最も伸びる分野である。
  • 要点
    3
    ブランデッドエンターテイメントは、才能ある優秀なメンバーでチームを組み、素晴らしいコンテンツを生み出そうという意欲があるならば、ぜひ取り組むべきものだ。

要約

ブランドに貢献できること

なぜ人々は広告を避けるようになったのか
BrAt_PiKaChU/gettyimages

本書のテーマである「ブランデッドエンターテイメント」は、下記のように定義されている。

1、ブランドがプロデュースするエンターテイメント

2、飛ばしたくならないような広告

3、エンターテイメントを邪魔するのではなく、観客に求められるために作られたマーケティング

4、ブランドの金銭的投資・顧客の時間的投資の両面で投資対効果の高い広告

5、「見させる」ために時間を買うのではなく、観客を魅了して「思わず見たくなる」広告

なぜ、このブランデッドエンターテイメントが未来の広告手法と言われるのか。その必要性、現在、未来について本書では解き明かしていく。

近年、私たちのライフスタイルは大きく変わってきた。人々は何かをやろうとした時、すぐに使える便利なアプリが手に入るし、自分が求めていないものや偶然目に入るものに割く時間を極力減らしたいと思う。そうして「ボイド」と呼ばれる視聴者不在現象が生まれ、広告への関心低下によって広告が置き去りにされている。コマーシャルは嫌われているのだ。

特に若いデジタル世代に顕著で、2012年から2017年にかけて、アメリカの18~24歳の層でのテレビ視聴は週に約10時間減少し、史上最低の視聴率となったことを示す調査もある。テレビ視聴に充てていた時間が他の活動やストリーミングに移行したのだ。

では、「ボイド」への対策は何だろうか。それは、観客自身が自分の時間をもっと使いたいと思えるエンターテイメントに、ブランドが移行することだ。価値のある、楽しめるものは時代が変わっても求められている。

時間と集中力への誤解

メディアが断片化したことによって、人の集中力は持たなくなってきたと言われる。しかし、注意を引くことこそ広告の目的であり、時間がクリエイティブにおける制限と考えるのは誤解だ。時間という貴重な財産のお返しに、消費者に何を与えられるかが問題である。多くのブランドが視聴者離れに苦しんでいる一方で、ごく一部の魅力的なアイデアやコンテンツに人々は魅了され、その時間を大量に獲得している。2012年にIntelと東芝が共同制作したウェブ広告シリーズ『The Beauty Inside』は、合計40分以上のコンテンツでありながらミレニアル世代の注目を集めた。

ニュースとなり世論を動かす
Warchi/gettyimages

ストーリーテリングがその中心にあるブランデッドエンターテイメントは、ストーリーが心に響き、シェアされてニュースにまでなることがある。ニュースになったコンテンツはさらなる話題を生み出し、人々の認識、世論、政策まで変えることがありえる。女性差別的な態度が蔓延しているペルーでのとあるキャンペーンは家庭内暴力に関する世間での対話を促し、「虐待者を決して許してはならない」というメッセージが強く伝わった。

こうしたプロジェクトは無視できない特別なニュースとなり、強力なエンゲージメントを生み出した。

【必読ポイント!】 ブランデッドエンターテイメントの技術

効果的なストーリーテリング

ブランデッドエンターテイメントがこの10年で広まった背景には、メディア環境と広告フォーマットの変化がある。つまり、インターネットが広告フォーマットやコンテンツの配信方法を大幅に変えてしまったのだ。

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要約公開日 2021.01.11
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