SDGs思考

2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界
未読
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出版社
インプレス

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出版日
2020年09月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

SDGs(持続可能な開発目標)は、いまやビジネスパーソン、とりわけ経営者の必修科目といえるだろう。しかしSDGsと聞いたとき、大々的に掲げられる17の目標やカラフルなアイコンばかりに目がいっていないだろうか。実際に類書だと、そうした項目をいかに達成するのか指南するもの、つまりWhatとHowに焦点を当てたものが多い。

それに対して、本書はSDGsの背景にある「世界観」(Why)を理解することが何より重要だと強調する。そしてそれを理解するために、SDGsが成立した経緯と人類史的な意義を丹念に追っていく。国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏のもとで働くなど、著者の外務省や国連での経験を踏まえた記述は非常に説得力があり、その世界観の崇高さに心を打たれずにはいられないだろう。

なにより注目してほしいのは、本書がSDGsを「企業活動」として実装するべきとしているところだ。それはすなわち、SDGsを経営に練りこみ、継続的に利益を上げながら、社会的な善を実現するべきということである。著者は2014年、国連から民間に転じた。その理由は、継続的に価値が生み出されるような仕組み、つまり「利益」を生む組織でなければ社会を変えていくことはできないと、国連の活動を通じて痛感したからだという。

とはいえ企業活動への実装は、そう簡単なことではない。そこには極めて戦略的で革新的な発想と、それによる社会的なインパクトを「つなげて」考える思考法が必要となってくる。そしてそれこそが、本書が詳述する『SDGs思考』なのである。

ライター画像
しいたに

著者

田瀬和夫(たせ かずお)
1967年福岡県福岡市生まれ。東京大学工学部原子力工学科卒、同経済学部中退、ニューヨーク大学法学院客員研究員。1991年度外務公務員I種試験合格、92年外務省に入省し、国連政策課、人権難民課、アフリカ二課、国連行政課、国連日本政府代表部一等書記官等を歴任。2001年より2年間は、緒方貞子氏の補佐官として「人間の安全保障委員会」事務局勤務。
2005年11月外務省を退職、同月より国際連合事務局・人間の安全保障ユニット課長、2010年10月より3年間はパキスタンにて国連広報センター長。
2014年5月に国連を退職、同6月よりデロイトトーマツコンサルティングの執行役員に就任。同社CSR・SDGs推進室長として日本経済と国際機関・国際社会の「共創」をテーマに、企業のサステナビリティ強化、SDGs導入、ESG対応、人権デューデリジェンス実施等の支援を手がけた。
2017年9月に独立し、新会社SDGパートナーズを設立して現在同社代表取締役CEO。
私生活においては、7,500人以上のメンバーを擁する「国連フォーラム」の共同代表を2004年より務める。

SDGパートナーズ有限会社
サステナビリティに特化したコンサルティングファームとして、2017年9月設立。企業、政府、自治体、国際機関、NGO、学術界、ユースなど様々な主体を「つなぐ」ことにより、SDGsが描くウェルビーイングの実現を追求する。特にその中でも、ビジネスが果たせる役割に注目し、SDGsを土台としたビジネスモデルの導入、サステナビリティ方針策定・実施、統合報告書の設計、ESG情報開示、国連を含めた公的機関とのイノベーティブな官民連携、地方自治体との共創、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)を取り入れたサプライチェーン管理などの支援をリードする。また、中小企業や起業家、NPOなどがSDGsを採り入れていくプロセスも支援している。

本書の要点

  • 要点
    1
    SDGsには、「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よく生きられる社会」を目指すという高邁な世界観がある。
  • 要点
    2
    企業がSDGsに取り組む意義として、「新市場の形成」「既存市場における新しいニーズの創出」「優秀な人財の確保」の3つが挙げられる。
  • 要点
    3
    経営にSDGsを実装するための思考法は、「時間的逆算思考」「論理的逆算思考」「リンケージ思考」の3つである。
  • 要点
    4
    企業には、国際的な「人権」を担保する責任がある。人権こそSDGs全体を支えるフレームワークだ。

要約

【必読ポイント!】SDGsの世界観を理解する

2030アジェンダ

SDGs(エスディージーズSustainable Development Goals ; 持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連総会において、世界193の国の全会一致で承認されたものである。

日本企業の経営者の多くは、利益を上げるというプロセスにおいて、社会に対して何らかの善をなすべきだという理念を持っている。こうした経営者の思考と実践に、SDGsは明確なフレームワークを与えてくれる。

SDGsの17の目標と169のターゲットは、『2030アジェンダ』というドキュメントの一部である。これは人類の共存戦略である「平和・開発・人権」という目標に、「環境・持続可能性」の要素を融合し、未来に対する合意として打ち立てられた画期的な文書だ。

4つのキーワード
SB/gettyimages

SDGsの世界観は、次に挙げる4つのキーワードで表すことができる。

第1のキーワードは「すべての人が」である。これは「誰ひとり取り残さない」(no one will be left behind)という決意を表している。具体的には格差のない世界、障がい者やLGBTQ(QueerまたはQuestioning)といった人々の権利が蔑ろにされない、社会的少数者を含むすべての人々が社会参画できる世界を目指すことである。

第2のキーワードは「自分らしく」で、「より大きな自由」(in larger freedom)を意味する。同じ自由を表す言葉でも、Libertyが「他人に拘束されない」という意味であるのに対して、Freedomは「人生における選択肢が多いこと」を表している。これは「すべての人が、より多くの人生の選択肢を持つべきである」という思想を表している。

第3のキーワードは「よく生きる」だ。すべての生命が栄え、人々が身体的、精神的、社会的によく生きられる(well-being)という理想である。

第4のキーワードは「世代を超えて」である。これは、今日の世代と将来の世代(present and future generations)の両方のニーズを満たすという考え方を表している。

SDGsの世界観

「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よく生きられる社会」――これこそSDGsが目指す、未来の世界像だ。

それぞれの目標とターゲットは、この世界観から演繹される形で理解されなければならない。逆に高齢化や廃プラスチック問題など、項目に入っていない課題についても、この世界観から考えれば適切な対処法が導き出されるだろう。

ビジネスにおけるSDGsへの取り組みでは、17の目標と169のターゲット(と魅力的なアイコン)にばかり目がいってしまいがちである。しかし、こうした根源的な世界観が理解されなければ、取り組む意義がないとすらいえる。

企業活動に実装する

六方よし
Eva Almqvist/gettyimages

企業がSDGsを実装するためには、企業の存在意義がSDGsと重なることを明らかにする必要がある。

本書が提唱するのは、近江商人の(1)売り手よし(2)買い手よし(3)世間よしの「三方よし」に加え、サプライチェーン上の「作り手」に配慮をした(4)作り手よし、活動の舞台である「地球」が健康な状態であるという(5)地球よし、そして将来の世代に負の遺産を残さないという(6)未来よし、の「六方よし」だ。

生存戦略という観点

企業の具体的な生存戦略という観点から、SDGsに取り組む意義について考えると、次の3点が挙げられる。

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要約公開日 2021.01.09
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