パラダイムシフト

新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう
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2020年のコロナショックで、私たちはさまざまな我慢を強いられた。目に見えぬ感染のリスクに怯え、世界中で大規模な経済活動の縮小が起きた。つらい状況にはちがいないが、発見もあった。新型コロナウイルス感染防止対策として在宅勤務に切り替える企業が続出した。オフィスに行かなくても仕事はできるということを、多くの人が実感したのではないだろうか。

コロナ危機をきっかけとして、いたるところで既存のパラダイムに大激震が走った。こうしたタイミングこそ社会の問題と向き合い、本質的な「問い」について考えるチャンスだと著者は主張する。本書には、そうした「問い」のもとに未来を切り拓く投資家、起業家、教育者など21名のインタビューが掲載されている。

彼らの声は、働くことや教育のあり方、そして自分自身の生き方まで幅広い視点から本質に迫り、新たなパラダイムへと向かう私たちの背中を押してくれる。

パラダイムが変わると、判断の物差しも変わってしまうため、新しいパラダイムは受け入れがたいものだ。また、世の中が激変しているときには認知バイアスによって思考が偏りやすい。だからこそ、バイアスの存在に自覚的であることは、適切な意思決定をするうえできわめて重要だ。

変化に対して悲観的すぎても楽観的すぎてもいけない。自分はどう生きたいのか、私たちはどんな選択をするべきなのか。要約者は「本質を見失ってはいけない」と、著者に優しく諭された気がした。世界は私たちの行動次第でもっとよくなる。そんなふうに、自分軸で生きていく勇気をくれる一冊である。

ライター画像
金井美穂

著者

ピョートル・フェリクス・グジバチ
プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。
モルガン・スタンレーを経て、グーグルでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。
ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)ほか、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『PLAY WORK』(PHP研究所)など著書多数。

プロノイア・グループ株式会社
ギリシア語で「先読みする」「先見」という意味を持つ「プロノイア」を社名に掲げるプロノイア・グループは「誰もが自己実現できる社会」をつくる未来創造企業。心理的安全性をベースに「遊ぶように働く(PLAY WORK)」 「前例を創る(IMPLEMENT FIRST)」「予期せぬ価値を生み出す(OFFER UNEXPECTED)」をコアバリューとして持ち、経営戦略・組織開発・人材育成をはじめとする「人に焦点を置いた」チェンジマネジメントを支援している。
執筆協力:星野たまえ

本書の要点

  • 要点
    1
    新型コロナウイルスの感染拡大がトリガーとなって、社会のさまざまな問題が表面化している。こうした大きな変化のときこそ、パラダイムシフトのチャンスであり、本質的な「問い」を考える好機である。
  • 要点
    2
    同時に、自分の思考パターンに意識を向け、どのような認知バイアスが働いているかを自覚することが重要となる。
  • 要点
    3
    コロナ危機によってパラダイムが大転換を迎えようとしているいま、働く意味、教育のあり方、そして自分の生き方を問い直すことが必要だ。

要約

パラダイムシフトのチャンスの到来

本質的な「問い」を探求する
Eoneren/gettyimages

新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こし、世界が一斉に急ブレーキを踏んだ。グローバルサプライチェーンが分断され、多くの人が「世界の問題」は「自分の問題」だと気づいたのではないだろうか。

人類にとって命の危機となる脅威がトリガーとなって、さまざまな社会の問題をあぶり出している。かつてエイズが流行したとき、同性愛者への潜在的な「差別」が表面化した。同じように今回のコロナの流行では、都市部の人口一極集中など、数々の問題が明るみに出た。

問題は、オフィス通勤ができなくなるといった表面的変化ではない。重要なのは、そのような変化が生じている本質的な意味を問うことだ。世界を動かしている構造とシステム、そしてバランスに目を向ける。そのうえで、社会問題の解決に向けて企業はどうあるべきか、私たちはどのような生き方を選択すべきかについて、真剣に考えなければならない。世の中が大きく動いているいまが、古いパラダイムを変えるチャンスなのだ。

本書ではパラダイムシフトにおける本質的な「問い」を探求する。そこで重要なのが次の4つのステップである。

まずは、自分自身に自覚的になり、自分が何者であるかを認識する。次に、世界の状況を俯瞰し、どんな潮流の中にいるかを理解する。さらには、自分には想像している以上に多くの選択肢があることを自覚する。そして最後に、自分の選択による影響について考え、その責任を持つようにする。

新しいパラダイムへの転換をリードする

パラダイムとは思想や価値観、社会観念のことである。そしてパラダイムシフトとは、そうした思考パターンの転換を意味する。各世代には特有のパラダイムがあり、戦前、戦後、団塊ジュニア世代、ミレニアル世代というように、世代の変遷とともに変化していく。

人は新しいパラダイムを拒むものだ。本来なら理想を追求して、新たなパラダイムをつくり続けるべきだが、「通約不可能性」によってそれができない。通約不可能性とは、自分のパラダイム以外では自分の価値観を説明できなくなる状態を指す。価値観という物差しは、パラダイムが変わると機能しなくなる。だから新しいパラダイムを受け入れられないというわけだ。

しかし、それを踏まえて、自ら新しいパラダイムへの転換をリードすることはできる。通約不可能性がある前提で、異なる価値観の世界へと橋渡ししていくのだ。そういう意識を持つことで互いの理解を深められる。このとき重要なのが「止揚(アウフヘーベン)」という考え方である。一度否定したパラダイムを全面的に捨て去るのではなく、すでにあるパラダイムがもつ優れた要素を保存し、より高い次元で活かすというものだ。

人類の生存という究極的な問いの前では、パラダイム同士の衝突は無意味である。大局的な視点で世界の問題に向き合うことで、新しいパラダイムを受け入れられる。ひいてはそれが、真のグローバリズム、人類の一体感につながっていくにちがいない。

厄介な問題にどうアプローチするのか?

複雑で厄介な問題に対処するとき、問題の種類を見誤ると解決が遠のいてしまう。トランプ政権は、それにより新型コロナウイルスの封じ込めに失敗した。

問題の種類は4つに分類できる。1つめの「明らかな問題」は原因が明確で過去の経験から対策が講じやすい。また2つめの「込み入った問題」は何がわからないかがわかっているので、専門家に相談すれば答えは得られる。

これに対し、3つめの「複雑な問題」は誰にも正解がわからない。

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要約公開日 2021.01.12
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