本書の要点

  • 新型コロナウイルスの感染拡大がトリガーとなって、社会のさまざまな問題が表面化している。こうした大きな変化のときこそ、パラダイムシフトのチャンスであり、本質的な「問い」を考える好機である。

  • 同時に、自分の思考パターンに意識を向け、どのような認知バイアスが働いているかを自覚することが重要となる。

  • コロナ危機によってパラダイムが大転換を迎えようとしているいま、働く意味、教育のあり方、そして自分の生き方を問い直すことが必要だ。

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パラダイムシフトのチャンスの到来

本質的な「問い」を探求する

Eoneren/gettyimages

新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こし、世界が一斉に急ブレーキを踏んだ。グローバルサプライチェーンが分断され、多くの人が「世界の問題」は「自分の問題」だと気づいたのではないだろうか。

人類にとって命の危機となる脅威がトリガーとなって、さまざまな社会の問題をあぶり出している。かつてエイズが流行したとき、同性愛者への潜在的な「差別」が表面化した。同じように今回のコロナの流行では、都市部の人口一極集中など、数々の問題が明るみに出た。

問題は、オフィス通勤ができなくなるといった表面的変化ではない。重要なのは、そのような変化が生じている本質的な意味を問うことだ。世界を動かしている構造とシステム、そしてバランスに目を向ける。そのうえで、社会問題の解決に向けて企業はどうあるべきか、私たちはどのような生き方を選択すべきかについて、真剣に考えなければならない。世の中が大きく動いているいまが、古いパラダイムを変えるチャンスなのだ。

本書ではパラダイムシフトにおける本質的な「問い」を探求する。そこで重要なのが次の4つのステップである。

まずは、自分自身に自覚的になり、自分が何者であるかを認識する。次に、世界の状況を俯瞰し、どんな潮流の中にいるかを理解する。さらには、自分には想像している以上に多くの選択肢があることを自覚する。そして最後に、自分の選択による影響について考え、その責任を持つようにする。

新しいパラダイムへの転換をリードする

パラダイムとは思想や価値観、社会観念のことである。そしてパラダイムシフトとは、そうした思考パターンの転換を意味する。各世代には特有のパラダイムがあり、戦前、戦後、団塊ジュニア世代、ミレニアル世代というように、世代の変遷とともに変化していく。

人は新しいパラダイムを拒むものだ。本来なら理想を追求して、新たなパラダイムをつくり続けるべきだが、「通約不可能性」によってそれができない。通約不可能性とは、自分のパラダイム以外では自分の価値観を説明できなくなる状態を指す。価値観という物差しは、パラダイムが変わると機能しなくなる。だから新しいパラダイムを受け入れられないというわけだ。

しかし、それを踏まえて、自ら新しいパラダイムへの転換をリードすることはできる。通約不可能性がある前提で、異なる価値観の世界へと橋渡ししていくのだ。そういう意識を持つことで互いの理解を深められる。このとき重要なのが「止揚(アウフヘーベン)」という考え方である。一度否定したパラダイムを全面的に捨て去るのではなく、すでにあるパラダイムがもつ優れた要素を保存し、より高い次元で活かすというものだ。

人類の生存という究極的な問いの前では、パラダイム同士の衝突は無意味である。大局的な視点で世界の問題に向き合うことで、新しいパラダイムを受け入れられる。ひいてはそれが、真のグローバリズム、人類の一体感につながっていくにちがいない。

厄介な問題にどうアプローチするのか?

複雑で厄介な問題に対処するとき、問題の種類を見誤ると解決が遠のいてしまう。トランプ政権は、それにより新型コロナウイルスの封じ込めに失敗した。

問題の種類は4つに分類できる。1つめの「明らかな問題」は原因が明確で過去の経験から対策が講じやすい。また2つめの「込み入った問題」は何がわからないかがわかっているので、専門家に相談すれば答えは得られる。

これに対し、3つめの「複雑な問題」は誰にも正解がわからない。

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要約公開日 2021.01.12
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