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おすすめポイント

「よい理論ほど、実践的なものはない」――この著書を読み終えたとき、ある科学者の言葉が頭に浮かんだ。

本書に掲載されているのは、世界の名だたる経営学者17人が語る、「現代の経営に求められるものは何か」への答え。マイケル・ポーター教授やフィリップ・コトラー教授のような大御所から、いま注目される新進気鋭の研究者まで網羅しており、扱われるトピックも多岐にわたる。

強調したいのが、過去に発表された研究論文を単に17本並べただけではない、ということだ。教授たちへのインタビューをベースにしつつ、読者にやさしく語りかけるような文章になっている。教授たちの人柄をしのばせるエピソードも満載だ。なんとも贅沢な経営学書ではないか。

さらに冒頭で、経営学の理論をやさしく説くことに定評のある入山章栄教授が、17人の学説や研究を、わかりやすいポートフォリオを用いて「見える化」してくれている。だから読者は、興味のあるテーマからよどみなく読み始めることができる。

索引の充実ぶりにも目を見張る。キーワードはもちろん、人名、社名、大学・研究機関、書名、論文・雑誌・コラム等の索引まで、読者の使い勝手を考慮したつくりだ。シンプルでセンスのよい図表も多数掲載されており、ガイドブック的な使い方もできるだろう。

ライター画像
たばたま

著者

広野彩子 (ひろの あやこ)
日経ビジネス副編集長
1993年早稲田大学政治経済学部卒業、朝日新聞記者を経て2001年から日経ビジネス記者。2005年、米プリンストン大学大学院修士課程修了。2013年から日経ビジネス副編集長。2016年から日本経済新聞社の英文媒体Nikkei Asian Reviewにて英文記事の編集・執筆に携わり、エディターとして企画・編集した特集”Overworked”(働き過ぎ)が2017年、アジアの優れた英文報道を顕彰するアジア出版社協会賞(SORA)で最優秀賞(Award for Excellence)を受賞。書籍などの編集も手掛け、担当作に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(入山章栄著)、『日経ビジネス 日本経済入門』(日経ビジネス編)、『ビジネスに効く最高の「読書」―本当の教養が身につく108冊』(出口治明著)、「(日経ムック)新しい経済の教科書」などがある(いずれも日経BP)。著書に『100歳、ずっと必要とされる人―現役100歳サラリーマンの幸せな生き方』(福井福太郎と共著/日経BP)。

本書の要点

  • 要点
    1
    すぐれたCEOはプライベートを含め、トップアスリートのような時間管理をしながら、規律のある生活を送っている。
  • 要点
    2
    変化対応力のある組織は、「分権化」と「自己組織化」の機能を内包している。
  • 要点
    3
    いまは、ビジネスを通じて社会課題の解決に貢献する企業が、高く評価される時代である。
  • 要点
    4
    プラットフォーム・ビジネスで成功し続けるためには、絶え間ない継続的な投資が必要である。
  • 要点
    5
    日本企業が、欧米企業のガバナンスを取り入れ、効率化しようとしているのは、大きな間違いである。

要約

ポーター教授のCEO論

CEOはトップアスリートたれ
pixelfit/gettyimages

「すぐれたCEOとは、オリンピックのアスリートのようなものだ」――27人のCEOを対象に調査を行なった、米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授はそう語る。

経営戦略の立案とCEOの時間管理は、相互に作用しあう関係にある。戦略は組織をまとめるうえで重要な役割を果たすが、その戦略をつくるには、なにより時間が必要だからだ。

ポーター教授は有効に時間を使うための方法として、4つのアドバイスを挙げている。1つ目は、仕事に優先順位をつけて重要業務に集中するために、補佐役に優秀な人物をつけること。2つ目に、向こう3~4カ月で何をすべきかの具体的なアジェンダ(課題)を設定すること。3つ目は、メールを返信する際のルールをつくり、重要なものだけに時間を割いて返信すること。最後は、明確な課題と入念な準備をすることで、会議の時間を短くすることだ。

ポーター教授の真意とメッセージ

よいリーダーシップを発揮させるために、CEOは睡眠時間やエクササイズ、家族と過ごす時間に対しても、規律のある生活を送るべきだとポーター教授はいう。CEOをオリンピックのアスリートにたとえる真意もここにある。

またポーター教授は、日本の経済や企業の成長率の低さ、生産性の低さにも言及し、その要因として特にDX(デジタル・トランスフォーメーション)への熱意のなさを憂えている。そして日本企業が活力を取り戻すうえでは、CSV(共有価値の創造)にも取り組むべきだと強調する。

変化対応力を高める

最もホットなイノベーション理論

いま経営学で最も注目されている理論のひとつが、「ダイナミック・ケーパビリティ」だ。これは組織と経営者が、急速な変化に対応するために内外の知見を統合・構築し、組み合わせ直す能力を意味する。具体的には、市場で事業機会や脅威を察知(Sensing)し、価値創造のため人材や資産を動かして競争優位を獲得(Seizing)、経営手法を日々改善しながら定期的に主要な戦略を変容(Transforming)させていく。

米カルフォルニア大学バークレー校経営大学院のデビッド・ティース教授は、ダイナミック・ケーパビリティのポイントとして「分権化」と「自己組織化」を挙げている。この考えを体現している企業が、中国の家電メーカー「ハイアール」だ。ハイアールは大企業でありながら、社員が個人で事業を立ち上げられる「マイクロ起業家モデル」という仕組みをもっている。その結果、企業の内部に多くのスタートアップがフラットに共生しているのだ。ハイアールには、10~15人の事業ユニットが5千程度あると言われている。

不確実な環境のもとでのリーダーシップの原則
pishit/gettyimages

ティース教授は、こうした企業研究に基づき、不確実な環境に強い6つのリーダーシップの原則を考察している。それは予測、挑戦、解釈、意思決定、調整、学習だ。それぞれ予測と挑戦はセンシングに、解釈と意思決定はシージングに、調整と学習はトランスフォーミングに対応した能力になっている。

リーダーの「予測」する力や「挑戦」する力が、組織の変化対応力を高める。そして現状を正しく「解釈」することで、正しい「意思決定」ができるようになる。ただし不確実性とリスクは違う。予測可能なリスクに関しては、日常的なマネジメントや経営ツールを使って対応し、不確実性には「調整」と「学習」によって、組織をイノベーティブに変革していくことが必要になる。

経営の目的に、社会課題の解決を組み込む

社会的インパクト投資とは

仏インシアード経営大学院のジャズジット・シン教授によると、いまの企業はROE(自己資本利益率)を上げ、配当性向を高めるだけでは不十分だ。

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要約公開日 2021.01.18
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