日経ビジネス人文庫

戦略読書[増補版]

未読
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戦略読書[増補版]
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部

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出版日
2020年06月01日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「読書のための本」は数多い。ビジネスパーソンに読書が不可欠なのは、フライヤー会員の皆さんなら言わずもがな理解されていることだろう。しかしこれだけ読書本が出回る背景には、「ビジネスや人生に役立つ本を、できるだけ効率よく選びたい・読みたい」という願望がありつつも、「何をどう読んだらいいかわからない」という悩みを、多くの人が抱えているからではないか。実際、本屋に足を運ぶと、おびただしい数の本に尻込みしてしまうものだ。

本書で紹介しているのは、速読術でも多読術でもない、戦略的な読書法である。経営に戦略があるように、読書にも戦略がある。経営資源を読書にたとえ、自身のキャリアステージや目的に応じて、読書内容や量、読み方を動的に変えていく。いわば「攻めの読書」だ。いまどんな本をどう読めばいいかが一目でわかる「読書ポートフォリオ・マトリクス」も紹介されており、本の“迷える子羊”たちを救ってくれるだろう。

本書は、2015年に発行された同名の単行本を文庫化したものであり、大幅な加筆修正に加え、著者のおすすめ本84冊へのレビューが増補されている。他人とはひと味違う、独自性のある自分をつくり出したいのなら、ぜひ「戦略読書」を始めてみてはいかがか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

三谷宏治(みたに こうじ)
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半、経営戦略コンサルタントとして活躍。1992年 INSEAD(インシアード)でMBA修了。2006年から教育分野に活動の舞台を移し、年間1万人以上に授業・講演。無類の本好きとして知られる。著書多数。『経営戦略全史』はビジネス書賞2冠。『ビジネスモデル全史』『新しい経営学』の他に、『お手伝い至上主義!』『戦略子育て』など戦略視点での家庭教育書も。
早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学で客員教授、放課後NPOアフタースクール・認定NPO 3keysで理事を務める。永平寺ふるさと大使、3人娘の父。

本書の要点

  • 要点
    1
    人の思考は「読んだもの」からできている。人と同じものばかり読んでいたら、「他人と同じこと」しか言えない、つまらない人間になる。そこから脱却し、独自性をつくるための読書が「戦略読書」である。
  • 要点
    2
    丸2年かけて、戦略的に200冊読む。そうすれば、新しい頭脳をつくり上げることができる。
  • 要点
    3
    読書の内容や量、読み方の「読書資源配分」は、自分の状況や目的によって動的に変えていくべきだ。

要約

【必読ポイント!】戦略読書

人は「読むもの」からできている
fcscafeine/gettyimages

読書が大好きな著者・三谷宏治氏は、子どもの頃から多くの本に親しんできた。SFや科学書、日本童話集を読み漁り、大学浪人時代以降は手当たり次第に乱読した。その頃は、ストーリーや新しい知識にただ浸っていれば満足だった。しかし大人になってから、読書には「戦略」が必要だと思うようになった。

きっかけは社会人2年目のある日、職場ではじめて人と意見が被ったことだ。同僚と同時に、「◯◯って××だよね」と同じことを口にしてしまったのだ。「他人と同じこと」しか言えない経営コンサルタントに存在意義はない。著者は、自分のあまりのつまらなさにショックを受けた。

その原因は1年半前から、人と同じものを読み続けていたことにあった。新卒の若手コンサルタントであった著者は、自らの弱点を埋めるために必死で本を読んでいた。城山三郎などのサラリーマン小説を100冊、ビジネス基礎本を100冊以上。雑誌もビジネス系ばかりを、月に何誌も読んだ。そんな生活を1年半も続けていたから、人と同じ反応しかできない凡庸なコンサルタントになってしまったのである。

人の体が食べるものからできているように、人の精神は読むものからできている。著者は以後、楽しむための読書・ビジネスのための読書から、自分の独自性をつくるための読書にシフトさせていった。自分を自分であり続けさせるための読書、それが戦略的な読書(戦略読書)なのである。

差別化のための戦略読書

イノベーティブな商品・サービスも、いつかは競合に追いつかれ、コモディティ(誰でも安くつくれるもの)になっていく。そうなると価値は下がり、いつでも他社品に取り替えられてしまう。しかし商品自体がコモディティになっても、自社にオリジナリティがあれば話は別だ。

『僕は君たちに武器を配りたい』の著者である瀧本哲史氏は、人材のスペシャリティ(独自の価値ある存在)を次の6つに分けた。(1)トレーダー(営業)、(2)エキスパート(専門家)、(3)マーケター、(4)イノベーター(起業家)、(5)リーダー、(6)インベスター(投資家)。そしてこれからは(3)〜(6)、特に「業界の裏を読める」(6)の力を持て、と説いた。そのためには、自分を少しだけ取り換え困難で、価値ある存在に高めていかなければならない。

「戦略読書」とは、自らをコモディティにしないための読書法だ。「何を」「いつ」「どう」読むかを工夫すれば、自身のオリジナリティを育て、情報収集や知識会得の時間効率を上げることができる。そうすることで、「複雑で困難に満ちた」世の中において、新しいものを見出す視座を手にするのである。

読書による自己改造計画
RoJDesign/gettyimages

読書の効用とは何だろう。新しい腹筋をつくり上げるために最低2カ月間、38万円がかかるとする。では新しい頭脳をつくり上げるには? 「丸2年間」でなんとかなる、というのが著者の見解である。つまり2年あれば、自己改造が可能ということだ。

2年で読む200冊が、その自己改造を実現する。かかる金額はまちまちだが、全部新刊を買っても20万円足らずだろう。もちろん時間はもっとかかる。本の厚みやスピードにもよるが、1冊平均4時間として、全部で800時間だ。だが通勤や通学でのスマートフォンの時間を、朝夕30分ずつ読書に充てるだけで、年500時間は捻出できる。あとはランチタイムに10分、寝る前に15分の読書を毎日続ければ、もう300時間強が生み出せるはずだ。

「戦略読書」は、しなやかで強靭なキャリア(人生)をもたらす。ここからは、「戦略読書」の具体的なメソッドを紹介する。

「動的」な読書をする

読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)

経営戦略とは、「その企業が持つ経営資源を、どの事業にどれだけ振り分けるかを決めること」である。

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要約公開日 2020.09.05
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