公〈おおやけ〉
日本国・意思決定のマネジメントを問う

未 読
公〈おおやけ〉
ジャンル
著者
猪瀬直樹
出版社
NewsPicksパブリッシング 出版社ページへ
定価
1,980円(税込)
出版日
2020年07月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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日本国・意思決定のマネジメントを問う
著者
猪瀬直樹
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定価
1,980円(税込)
出版日
2020年07月10日
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総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
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レビュー

新型コロナウイルスの感染拡大によって、あたりまえだと思っていた日常生活は正面から否定されてしまった。しかしそういうときにこそ、変革のチャンスがある。テレワーク、オンライン教育、地方へのシフトなど、表面的な変化はすでに生じている。

しかし本質的に変わろうとするならば、「公」という概念を理解しなければならない。ともすれば私たちは「公」とは「官」にあるもの、あるいは第4の権力と呼ばれるメディアにあるものと考えがちだ。しかしそれらは「公」の一部にすぎない。本来は作家やアーティストのようにクリエイティブな活動をする人たちにこそ、「公」が宿っている。クリエイティブな活動によってつくられる新しい世界のビジョンがなければ、私たちはアフター・コロナを生き延びることもできないのだ。

日本は歴史的な経緯で、行政機構が肥大化した特殊な国家となってしまった。官僚主権の国家である。国家ビジョンも官僚がつくっており、クリエイティブな活動をする人々の言論空間とは独立してそびえ立っている。シンクタンクも官僚機構の下請けに過ぎない。

これからの日本の危機を乗り越えるには、ドイツの文化大臣が演説したように、クリエイティブな勇気を総動員し、未来のためによいものを創造するあらゆる機会をつかむしかない。そのためには「公」の意味を捉え直す必要がある。

一見対極にある「クリエイティブな勇気」と「公」が接続したとき、不可能に思えた改革も実現できる。それこそ、道路公団の民営化など、著者が多くの行政改革で証明してきたことではないだろうか。

ヨコヤマノボル

著者

猪瀬直樹(いのせ なおき)
1946年長野県生まれ。作家。87年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。96年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。2002年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。07年、東京都副知事に任命される。12年、東京都知事に就任。13年、辞任。15年、大阪府・市特別顧問就任。
主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『民警』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全12巻、電子版全16巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    新型コロナウイルスをめぐる日本政府の対応は、戦前から続く日本人の意思決定における課題が解決されていないことを示した。「有事」に必須の、情報や権限の集中ができていないのだ。
  • 要点
    2
    森鴎外以降、日本の作家は「公」と関わることを避け、ひたすら「私」を描いてきた。その果てに「からっぽな経済大国」となった日本が残った。
  • 要点
    3
    官僚機構と戦うときに必要なのはファクトとロジックであり、公開された場での討議だ。

要約

新型コロナと意思決定

リーダーシップと意思決定

新型コロナウイルスは日本人の意思決定にまたひとつ問題を投じた。それは歴史的にも繰り返し問われ、未だ解決されていない課題であった。

中国では、武漢市内で感染者や死者があきらかとなった2020年1月以降、武漢市と外部の交通を遮断し突貫工事で大規模な病院を建設するなど、猛スピードで対策が取られた。独裁政権ならではだ。

一方、日本国の意思決定は中国のそれに比べてわかりにくかった。国内において最初のクラスターとなったダイヤモンド・プリンセス号をめぐって政府が行ったのはまず、「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置したことだ。しかしこの対策本部は事実上、議論や意思決定の場ではなく、単なる儀式的な空間にすぎなかった。

対策本部会合はたった10分
Cimmerian/gettyimages

新型コロナウイルス感染症対策本部の会合では自由討議はまったくなく、本部長の安倍首相も役人の用意した文面を読み上げるだけだった。国会の会期中だったため会合は昼休みなどに開かれ、その後の回もおおよそ10分程度で終了している。

ダイヤモンド・プリンセス号では、感染症対策の先頭に立った神奈川県庁と横浜市の職員、全国から派遣されたDMAT(災害派遣医療チーム)の医療従事者、厚生労働省の職員、内閣官房の職員などが第一線で奮闘していたが、総指揮官が誰か明確ではなかった。

中国の対策を基準にするなら、日本でも省庁横断のプロジェクトチームを立ち上げる必要があったはずだ。しかし対策本部の会合では各省庁へのそれぞれの対応を指示するに留まり、まるで縦割りを助長しているようだった。そもそも対策本部での安倍首相の発言は、閣僚に向けられたものなのか、国民に向けたメッセージなのか、その位置づけも曖昧だった。

これが国家の意思決定といえるだろうか。

新型コロナウイルス対応と日米開戦

政府の新型コロナウイルス対策で気になったのは「意思決定のプロセスが見えない」ことだった。小中学校などの一斉休校が正式に決定されたのは2020年2月27日のことだったが、その意思決定は安倍首相も出席する非公式の「連絡会議」と称される会合でなされた。

つまり全閣僚が出席する新型コロナウイルス感染症対策本部はお飾りであり、戦前に天皇が出席して国家意思を決定していた「御前会議」と同じような位置づけでしかない。

一斉休校、緊急事態宣言、「アベノマスク」の配布など、今回の一連の対策から連想するのは日米開戦の経緯だ。ともにファクトとロジックに基づいて議論を煮詰めるのではなく、ムードに沿うかたちでファクトもロジックも歪められていった。

しかも日米開戦についてはいくつもの公文書が残されているのに対し、今回の対応では議事録やそれに類する文書が当初作られていなかっただけでなく、多くの「決断」を後押しした首相と秘書官の密談は記録されていない。政府の判断や対策の内容は国民にはわからず、情緒に覆われた空気だけが醸成されていった。

「公」から遊離する作家

三島由紀夫の自決の意味
fizkes/gettyimages

新型コロナウイルス感染症への対策で実感したのは、日本には有事の発想がないということだった。緊急事態宣言の発出が遅れたのも、私権の制限という平時では許されない対応に、ほとんどの閣僚がひるんだからだという。

戦後、日本は戦争をしない、できないという憲法の下で「有事」という発想を消滅させてしまった。軍事的脅威への対応は米国に任せ、国内は「戦前」を切り離し架空の平和に満ちた「ディズニーランド」のような国家になってしまったのだ。

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