藁を手に旅に出ようの表紙

藁を手に旅に出よう

“伝説の人事部長”による「働き方」の教室


本書の要点

  • キャリアは戦略的に考えるべきだ。考えることを放棄して、適性のない仕事のために必死に努力することを肯定してはならない。

  • 誰もが持っている小さな「マイクロスキル」を組み合わせることで、付加価値が生まれる。その価値は自分が判断するものではない。相手にとって需要があるかどうかを考えよう。

  • 既存の制度について、「野党思考」のもと、当事者でない者が断片的な正論や短期的な正論を言うのは簡単だ。組織に対して不満を持ったら、「自分が責任者だったら具体的にどうするか」を考えてみる癖をつけよう。

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【必読ポイント!】 新人研修

本書のあらすじ

勉強はそこそこ、愛想は人並み、コミュニケーション力に自信なし――そんな特徴のない僕、サカモトは、地味な中堅企業への就職という形で就職活動を終えた。入社を決めた理由は、「幸運にも内定をもらえた企業の中で、一番まともそうだったから」。人材育成に力を入れているという噂を聞き、僕みたいな取り柄のない人材でも成長させてくれるかもしれないと考えたのだった。4月1日からスタートする新人研修は、名刺交換のマナーから飲み会のルールまで、さまざまなプログラムを交えて1カ月半続く。その中で毎週金曜日、研修の最後の1時間は、人事部の石川部長による講義だ。彼女は、イソップ童話や日本昔話を使った話をしてくれるという。

亀は戦略的にうさぎと勝負するべきだった

id-work/gettyimages

初日の講義では、『うさぎと亀』が題材だそうだ。石川さんは周りを見渡し、同期の中ですでに「アホなキャラ」が確立しているヤマダに質問した。「ヤマダさんはあの話から何を学びましたか?」『うさぎと亀』の寓話から学び取れることは何か。まず思い浮かぶのが、「愚直に努力し続けることの大切さ」だろう。だが実は、この話にはもうひとつのメッセージが隠れている。そもそも、なぜ亀はこの勝負を受けてしまったのか。おそらく、足の遅さをバカにされてムキになってしまい、正常な判断ができなかったのだろう。たまたまうさぎが途中で油断してくれたから勝てたものの、本来なら勝ち目のないギャンブルである。一時的な感情に負け、後先を考えずに戦いに挑んでしまうのは、現実にもよくあることだ。こうした無謀な争いが組織同士で行われた場合、状況は悲惨なものとなる。偉い人が勝ち目のない勝負に挑んだら、下っ端はそれに従わざるを得ない。だからこそ、「戦略的に物事を考える」ことが重要となる。「戦略的」という言葉には2つの要素がある。時間軸の長さと、論点の多さだ。つまり戦略的に考えるとは、長期的な視野に立ち、多くの論点を取り入れながら総合的な判断をすることを言う。「努力」には、2種類ある。どのフィールドで頑張るかを戦略的に考える努力と、実際にそのフィールドで行う努力だ。一般に「努力」というと、後者にフォーカスされがちだが、前者の努力の方がずっと重要だ。考えることを放棄し、実力が活かせない場所で努力したところで、望むような結果は得られない。亀は、フィールドを選ばずうさぎに勝負を挑んだ愚か者だ。講義の最後で、石川さんは「配属はあなたの人生を決める」とストレートに言い切った。

空気に負けずに「王様は裸だ」と言えるか?

Ann_Mei/gettyimages

次の金曜日がやってきた。今回の題材は『裸の王様』だ。『裸の王様』では、ある職人が王様に「バカには見えない布」を売り込んでくる。その布を見せれば、誰がバカだかわかるというわけだ。王様が布を見せてみると、家臣は誰一人として「王様は裸だ」と言い出すことができなかった。もし自分が家臣だったらどうだろう。自分のキャリアが、もしかすると命すらかかっているかもしれないその状況で、「布が見えない」と正直に言えるだろうか。人間は、見たいものが見えたと信じ込んでしまうものだ。

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要約公開日 2020.11.08
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