新型コロナはアートをどう変えるか

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新型コロナはアートをどう変えるか
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新型コロナはアートをどう変えるか
出版社
定価
1,100円(税込)
出版日
2020年10月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

ウイルスを擬人化し、それを屈強な男がなぎ倒すイラストがある。新型コロナウイルスではない。江戸時代に描かれた、はしかをモチーフにした作品だ。人類は天然痘やペストなど、数々の疫病に悩まされてきた。アートの歴史を紐解けば、人類がいかにして自然の脅威と戦ってきたかがよくわかる。江戸時代に描かれたはしかの猛威に右往左往する人々の姿は、驚くほど現在の我々と似通っている。そこには何百年経っても変わらない人間の姿がある。

本書は、これまで疫病がどのようにアートに描かれてきたかを紐解きながら、アートを取り巻く様々な社会状況を分析し、さらにアートの今後を論じる構成となっている。カラーの図表を交えて豊富な作例を紹介しながら論が進められるので、読み物としても見ごたえのある内容だ。

本書を読み進めていくと、現在見られるアートの変化は、必ずしも新型コロナの流行によって引き起こされたものではないことに気づかされる。社会は絶え間なく変化し続けており、それが新型コロナ感染拡大というきっかけを得て、可視化されたのではないかと思え、興味深い。

人の原動力となるのは「想い」である。それを形にするアートを考えることは、私たち人間がどういう存在であるかを考えることにほかならない。政治や経済とは一味違った、「アート」という視点から新型コロナウイルスが社会に与える影響を考えてみると、これまでにない、新しい視野が開けるはずだ。

ライター画像
池田明季哉

著者

宮津大輔(みやつ だいすけ)
1963年、東京都出身。アート・コレクター、横浜美術大学学長、森美術館理事。広告代理店、上場企業の広報、人事管理職、大学教授を経て現職。94年以来、企業に勤めながら収集したコレクションや、アーティストと共同で建設した自宅が、国内外で広く紹介される。台北當代藝術館(台湾・台北)の大規模なコレクション展(2011年)や、笠間日動美術館とのユニークなコラボレーション展(19年)などが話題となった。『現代アート経済学Ⅱ――脱石油・AI・仮想通貨時代のアート』(ウェイツ)や『定年後の稼ぎ力』(日経BP)、『アート×テクノロジーの時代』(光文社新書)など著書や寄稿、講演多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    現在のアート市場をけん引しているのは、世界の富の半分を有するトップ1%未満の富裕層である。新型コロナ感染拡大に伴い、一時的にアート市場は縮小する可能性があるが、じきにそれまで以上の水準まで回復するだろう。
  • 要点
    2
    新型コロナ感染拡大にともない、バーチャル・ミュージアムへの移行など、テクノロジーを利用した変化が起きているが、その収益性が課題だ。
  • 要点
    3
    アートは「ポスト人間中心主義」へと移行している。人類がどんな危機に瀕しても、それと対峙するアーティストと、アートを求める心は変わらない。アートは死なない。

要約

新型コロナ前後のアート市場

アート市場をけん引する富裕層
South_agency/gettyimages

ウィズ/アフター・コロナのアート界の市場動向を明らかにするために、まずは新型コロナウイルス発生前のアート市場の状況を整理する。2020年3月に発表された「2019年世界のアート(美術品売買)市場規模」は、前年より5パーセント減少した641億2300万ドル(約6兆9900億円)であった。これはニュージーランドの国家予算に匹敵する額である。2009年にはリーマン・ショックの影響で一時的に大きく縮小したものの、アート市場規模は2年で金融危機以前の水準を超えるに至った。

2020年の歴代最高価格アート作品の上位5作品のうち、4作品を所有しているのは中東の産油国と中国だ。新型コロナ感染拡大直前のアート市場は彼らによってけん引されてきた。

2016年に作成された「富のピラミッド」によると、資産100万ドル(約1億円)を超える、いわゆるミリオネアと呼ばれる富裕層は、世界人口のわずか0.7%である。しかし、そのわずかな人々が全世界の45.6%もの資産を保有している。現代は、トップ1%未満とその他99%で世界の富が二分されるという強烈な格差社会なのである。

一生をかけても使いきれないほどの資産を持つビリオネアは、もはや普通の消費によって満足を得ることは不可能だ。そんな彼らの成功や莫大な資産を可視化し、単純な物欲を満たすことでは得られない満足感を提供し得るのが、アート作品のコレクションだ。傑作と呼ばれる作品は将来の価格上昇も期待でき、有望な投資対象でもある。優れた資産性があるうえに、権力を可視化し、名誉欲や特別な物欲までも満たしてくれるアート作品は、富裕層によって代替不能な存在なのである。

新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷によって、一時的にアート市場が縮小する可能性はある。しかし、リーマン・ショックの事例から見ても、数年で以前までの規模を超えることは間違いないだろう。

廉価な作品と超高額作品の二極化
LightFieldStudios/gettyimages

新型コロナウイルス感染拡大前は、廉価な作品と、高い投資効果を期待できる高額な作品の購入が、アート市場の半分を占めていた。この二極化の動きは、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、さらにその傾向を強めている。

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