ネット興亡記
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敗れざる者たち
ネット興亡記
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部

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出版日
2020年08月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

インターネットの力は私たちの生活を劇的に変化させている。もはやスマホなしでは生活が成り立たない、という人も多いのではないだろうか。本書は、このようなインターネットの力にいち早く気づき、時代を変えようとしてきた若者たちの物語だ。その多くは、大企業において定められたレールの上で仕事をすることに疑問を感じ、自らリスクを恐れず起業した。そして、仲間の輪を広げていきながら類い稀な行動力で積極果敢に挑戦し、ときには失敗をしながら自分のアイデアを成功へと導いていった。

思えばインターネットの黎明期は、冷え込んだ日本経済におけるひとすじの希望だった。本書に登場する「敗れざる者たち」がインターネットの力に魅了され、社会を変えると信じ、これを実現させた。インターネットがもたらす力は陰りを見せるどころか、これからも膨張止まらぬ勢いだ。AIやIoT、5Gなどの新しい技術が次々と登場する中、次の世代の若者たちがいまこの瞬間にも新たな挑戦を続けている。

新型コロナウイルスの蔓延により、私たち一人ひとりが変化への対応に迫られている。インターネットの力で社会を変えた本書の登場人物ほどのリスクはないかもしれない。しかし、立ち止まっていては置き去りにされる未来が待っているだけだろう。本書を一読すれば、アフターコロナの時代を生き残るための勇気をもらえるに違いない。

ライター画像
香川大輔

著者

杉本貴司(すぎもと たかし)
日本経済新聞編集委員。
1975年生、大阪府出身。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。2002年、日本経済新聞社入社。産業部で電機、鉄鋼、自動車を担当し、2011年10月から米州総局(ニューヨーク)。2015年10月に帰国して通信やスタートアップを担当。2020年4月より現職。
著書に『ホンダジェット誕生物語』(日経ビジネス人文庫)、『孫正義300年王国への野望』(日本経済新聞出版)。

本書の要点

  • 要点
    1
    インターネットの黎明期に藤田晋がサイバーエージェントを立ち上げたが、自身の経営権を巡る争いに巻き込まれた。
  • 要点
    2
    三木谷浩史は6人の創業メンバーとともに楽天を立ち上げ、どぶ板営業で事業を拡大させた。アマゾンの日本進出の裏には、巨大な相手の懐に臆せず飛び込んだ二人の日本人の存在があった。
  • 要点
    3
    mixiは日本のSNS市場で確固たる地位を築いたが、フェイスブックやツイッターの波にのまれ、10年もたたずにその力を失うこととなった。

要約

【必読ポイント!】 インターネットの黎明期を支えた若者

踏みとどまれたサイバーエージェント
takasuu/gettyimages

インターネットの夜明けは、日本が戦後復興から目覚ましい経済成長を遂げ、バブル崩壊によって自信を失った時代と重なる。そんな時代に生まれた創世記を彩る数々の経営者たちは、決して天才ではない。インターネット産業の黎明期に登場した藤田晋もまた、人知れぬ苦難を味わってきた。

平凡な人生に違和感を持ち、何者かになりたいという思いをもって育った藤田が、新卒の就職活動で起業家としての修行の場に選んだ企業は、人材紹介や人材派遣業をおこなうベンチャー企業、インテリジェンスだった。新人ながらトップ営業マンの仲間入りを果たした藤田だが、入社1年目の年末に起業へと舵を切る。インテリジェンス社長の宇野康秀は、実質的に経営権のない出資という破格の条件を持ち出して、藤田の起業を後押しした。

新しく立ち上げる会社の事業は、自分の強みである営業と、これから大きく成長するはずのインターネットを掛け合わせ、ネット業界専門の営業代理店と決めた。社名はサイバーエージェント。インターネットバブルと呼ばれる熱狂の時代の中で、サイバーエージェントは急成長を遂げる。そのきっかけとなったのが、クリック保証型広告だ。サイバークリックと名付けた広告サービスを開発したのが、オン・ザ・エッヂの社長、堀江貴文だった。それ以来、二人は絶妙のタッグを組むことになる。

2000年3月には、東証マザーズへの上場を果たしたが、それは最大の危機への始まりとなった。赤字を前提に先行投資をおこなう戦略にインターネットバブル崩壊が重なり、投資家の反感を買ってしまった。株主還元を迫る村上ファンドに、買収を狙うインターキュー(現GMO)。持ち株比率を減らしていた藤田は、自身の経営権を巡る買収ゲームに身を投じることになったのだ。

藤田の窮地を救ったのは宇野だった。関係者との調整をはかるとともに、楽天の三木谷からの協力も取り付けた。こうして、藤田はギリギリのところで踏みとどまることができたのだ。

ヤフーのモバイル革命を牽引した男たち
metamorworks/gettyimages

のちにヤフーの3代目の社長に就任する川邊健太郎が、学生時代にみたインターネットは衝撃だった。そこで、仲間を募って学生ベンチャーである「電脳隊」を立ち上げる。ほどなくして、川邊がその可能性に魅了されたのがモバイル・インターネットだった。電脳隊には、モバイル・インターネットに共感し、未来を切り開こうと模索する同志が集まるようになる。香港で貿易商をしていた松本真尚もその一人だ。電脳隊を中心に同世代の起業家が立ち上げたインターネット会社による大同団結構想がもちあがり、設立された新会社PIMの初代社長に松本が就任した。

PIMに目を向けたのが、モバイル・インターネットに後れを取っていたソフトバンクだ。

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要約公開日 2021.03.09
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