民主主義とは何か

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民主主義とは何か
出版社
定価
1,034円(税込)
出版日
2020年10月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

現在の民主主義は、大きな危機に直面しているという。「ポピュリズムの台頭」「独裁的指導者の増加」「第四次産業革命とも呼ばれる技術革新」そして「コロナ危機」という4つの危機である。

しかしながら、過去においても民主主義は何度も危機に襲われ、これを乗り越えてきた。むしろ、つねに試練にさらされ、苦悶し、それでも死なずにきたというのが現実に近い。そうであれば、今回の危機についても、民主主義が自らを変容させ、進化させるきっかけともなりうる。

そのためにも、多様な民主主義のあり方を歴史的なアプローチによって解きほぐし、俯瞰的に現在の危機を相対化していくことが有効だろう。本書のねらいはそこにこそある。それによって、一人ひとりの読者がそれぞれに「民主主義を選び直す」ことが本書のゴールなのだ。

全体を貫くキーワードは「参加と責任のシステム」だ。人々が自分たちの社会の問題解決に「参加」すること。そしてそれを通じて、政治権力の「責任」を厳しく問い直すとともに自らの責任について自覚的であること。この2つを、民主主義に不可欠の要素とする。本書はこの前提に立って考察を進めていく。

本書の真価は、包括的で極めて明快な歴史記述にあるが、要約ではその一端を浮き彫りにするにとどまらざるをえなかった。ルソーやウェーバーの政治思想にも触れることができていない。本要約で少しでも本書に興味をもち、手に取る読者が増えることを願うばかりである。

ライター画像
しいたに

著者

宇野重規(うの しげき)
1967年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。主な著書に『政治哲学へ 現代フランスとの対話』(2004年渋沢・クローデル賞LVJ特別賞受賞)、『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』(以上、東京大学出版会)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社学術文庫、2007年サントリー学芸賞受賞)、『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』(中公新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    民主主義とは、2500年前の古代ギリシアの都市国家(ポリス)に起源をもつ「参加と責任のシステム」である。
  • 要点
    2
    民主主義は西欧に引き継がれ、トクヴィルによってその進展は不可逆な摂理とされた。ミルによって民主主義は自由主義と結合し、代議制民主主義の礎が築かれた。
  • 要点
    3
    民主主義の危機がいわれる現在、私たち一人ひとりが社会に参加することで市民としての当事者意識を育み、市民自ら可能な範囲で責任を分かちもつことが重要である。

要約

民主主義の4つの危機

ポピュリズムの台頭

現代は民主主義がさまざまな危機に直面している時代であるが、本書では4つの側面から考える。

まず「ポピュリズムの台頭」であるが、それを強く印象づけたのは、2016年6月のブレグジットと同年11月のトランプ大統領の誕生である。その背景にあるのが、ポピュリストによって扇動された、経済的に没落した中間層の存在である。

格差の拡大する中で民主主義は維持可能なのか。格差によって国民の一体性の感覚が損なわれた先で起こる、世論の分断を乗り越えられるのか。ポピュリズムはこれらの問題を大きくクローズアップした。

独裁的指導者の増加
erhui1979/gettyimages

かつて世界の国々は、遅かれ早かれいつかは民主化するという「常識」があった。ところが、こうした考え方は現在、大きく揺さぶられている。経済成長にとって自由民主主義は本当に不可欠なのか。「独裁的指導者の増加」は欧米的価値観の問い直しにつながる可能性を秘めている。

中国も以前は欧米的な民主化を目指すとしていたが、現在の習近平体制に移行して以降、中国独自の路線を強調するようになった。重要なのは秩序の維持と国民生活の安定・発展であり、それには共産党の独裁体制の方が望ましい。

このような「チャイナ・モデル」はいまや、他国にとっても魅力的なものになっている。民主的な政治過程にはどうしても時間がかかるので、独裁的指導者によるトップダウン式の方が変化の激しい時代に適合的であるというわけだ。

第四次産業革命の影響

「技術革新による影響」でもっとも注目されているのが、AI(人工知能)が人々の雇用を奪うのではないかという懸念である。

また、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは『ホモ・デウス』で次のような警告をしている。ビッグデータとアルゴリズムを保有する一部の有力者による「デジタル専制主義」が拡大する一方、その他の多くの人々は「無用階級」へと転落する、と。

いまや人々はアルゴリズムのメカニズムによって、自分が気に入る情報ばかりに接することで、特定の考え方ばかりが増幅される環境に置かれている。

こうした環境の変化は、1人ひとりの人間を平等な判断主体とみなす民主主義の前提に揺さぶりをかけている。

コロナ危機

新型コロナウィルスによる感染症の拡大において、緊急事態を理由にロックダウン(都市封鎖)をはじめとした、個人の自由や権利を大きく制限する施策が遂行された。

民主的な合意形成にはどうしても時間がかかる。結果として、民主主義はこのような緊急事態に迅速かつ適切に対応できないのではないかという意見も聞かれるようになった。

また民主主義においては、人と人が顔を合わせ、直接対話を行うことはきわめて重要な要素である。感染拡大を防止するため、こうした条件が阻害されることはけっして望ましいことではない。

こうした現状の危機を乗り越えるために、本書では歴史を遡りながら考えていく。

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