エクストリーム・エコノミー
大変革の時代に生きる経済、死ぬ経済

未 読
エクストリーム・エコノミー
ジャンル
著者
リチャード・デイヴィス 依田光江(訳)
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン 出版社ページへ
定価
2,640円(税込)
出版日
2020年10月09日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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エクストリーム・エコノミー
大変革の時代に生きる経済、死ぬ経済
著者
リチャード・デイヴィス 依田光江(訳)
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出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン 出版社ページへ
定価
2,640円(税込)
出版日
2020年10月09日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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おすすめポイント

私たちはときに未曾有の事態に巻きこまれる。日本列島を揺るがし東北地方を中心とした広い地域の日常を奪い去った東日本大震災や、またたく間に世界に蔓延して世界中の人々と経済を恐怖と混迷の沼に引きずりこんでいる新型コロナウイルスはその一例だ。こうした異次元の危機を目の当たりにして、未知への驚異を抱き、未来に不安を抱くのは当然だ。

著者は、そうした極限(エクストリーム)の逆境から驚異的な「立ち直る力(レジリエンス)」と創意工夫で復興を果たした人たちから貴重な教訓が学べるという。世界中から「極限」の地で暮らす人たちを探し出し、地域経済を動かす力を観察、レジリエンスに及ぼす影響などをまとめたのが本書だ。

取りあげられている地域は9つ。再生、失敗、未来の3つに分類されているが、本要約ではそれぞれから1つずつの地域を紹介した。〈再生〉では、自然災害で公式経済が壊滅状態に陥りながらも非公式経済と人的資本をうまく生かしながら復活した地域。〈失敗〉では、ポテンシャルをもちながら発揮できていない地域。〈未来〉では、高齢化が進んだ未来の姿をうかがい知れる地域だ。

国の文化や歴史、資源、そして極限の状態はさまざまに異なる。ただ、どんな環境にあってもレジリエンスは発揮しうるものである。本書が明らかにするレジリエンスの経済学を学ぶことで、私たちは未来への不安やストレスを軽減できるだろう。これから先の不確実な未来への備えとして必読の一冊だ。

ライター画像
金井美穂

著者

リチャード・デイヴィス(Richard Davies)
ロンドンを拠点に活動する経済学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのフェロー。英国財務省経済諮問委員会の顧問、イングランド銀行のエコノミスト兼スピーチライター、エコノミスト誌の編集者を歴任。ガーディアン紙、タイムズ紙への寄稿をはじめ、数々の研究論文の著者であり、世界中の大学の経済学の教師や学生にオープンアクセスのリソースを提供する慈善団体COREの創設にも携わる。本書はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙とマッキンゼーが選ぶ2019年度のベスト・ビジネス書にノミネートされた。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、極限(エクストリーム)経済に焦点を当て、立ち直る力(レジリエンス)について考察するものである。
  • 要点
    2
    再生、失敗、未来の3つの観点で、すでにエクストリーム経済を経験している地域を取りあげる。物質的あるいは心理的な極限状態のなかにあって、人はどのようにレジリエンスを発揮し立ちあがるのか。反対に、レジリエンスを発揮できないのはなぜか。極限の場所から重要な教訓を学ぶ。
  • 要点
    3
    これから世界が進んでいくのは新しいレジリエンスの経済であり、人的資本、社会資本はきわめて重要な役割を果たす。

要約

極限の場所の経済に学ぶ

逆境を乗り越えるレジリエンス
wildpixel/gettyimages

インドネシア・アチェ州の村に巨大な津波が凄まじい轟音を立てながら襲いかかったのは、2004年12月26日の朝のことだった。異変に気づくやいなや、人々は追われるように内陸を目指した。家族や友人の安否すら気にかける猶予は一刻もなかった。

海水が引き、不気味な静けさに包まれてしばらく後に、生き延びたアチェの人々は村が消滅したことを知った。多くの人命とアチェの日常のいっさいがっさいを海の彼方へと奪い去ってしまったのは、世界全体のエネルギー消費量80年分に匹敵する途方もない地球の力だった。

そんな極限(エクストリーム)の逆境のなかから、アチェは短期間のうちに立ち直る力(レジリエンス)を発揮して復興を果たしたのだ。そこには私たちが学びとれる重要な教訓があるはずだ。

本書は、再生、失敗、未来という3つの観点から、経済活動の極限で暮らす人々にスポットライトを当てて、経済を動かす力とレジリエンスを比較、考察するものである。

再生──巨大津波に破壊されたアチェの経済

災害直後のレジリエンスを支えた非公式経済

スマトラ島沖地震による巨大津波の被害がいちばん大きかったインドネシア・アチェ。何もかも失ったエクストリーム経済からわずか2、3カ月で立ち直ったレジリエンスの源はどこにあるのか。

昔からアチェでは、ゴールドが信用基盤として貯蓄や保険の役割を果たしてきた。農業や漁業中心の経済では収入が不安定なため、豊作・豊漁の年に買ったゴールドを不作・不漁の年に売って生活費にするのだ。女性が身につけるゴールドは、装身具でもあり、家計の緩衝器でもある。

災害後、いち早くビジネスを再開したゴールド取引業者は、国際相場価格に合わせた適正価格で住民の持つゴールドを買ってまわった。おかげでアチェの人たちは起業に必要な現金をすばやく手に入れることができ、復興への足がかりとなった。

公式経済が破壊されたとき真っ先にレジリエンスの原動力となったのは、国や国際機関の援助ではなく非公式なシステムだったことはきわめて重要な点だ。

GDPと人的資本の関係
ishak mutiara/gettyimages

国内総生産(GDP)の観点から見ると、自然災害直後の経済は成長する傾向にある。GDPは「いま」の経済活動を測る指標であり、災害後は大規模な再建事業がはじまるからだ。復興プロジェクトが終了すればGDPは急落するのがふつうなのだが、アチェでは援助機関が引き上げたあとの4年間に経済成長率23パーセントを記録した。

「ビルドバック・ベター」のスローガンのもと、最新の設計や素材を活用してインフラを災害以前よりよくする「創造的復興」は、アチェの産業全般の後押しとなった。携帯電話やオートバイ、自家用車の普及は事業環境の好転や暮らし向きの向上に役立った。村民感情も変化し、村の外からやって来た者にも商売の門戸は開かれた。こうした変化がアチェの地域経済に持続的な成長をもたらしている。

経済学者ジョン・スチュアート・ミルは、レジリエンスには人的資本が物的資産以上に重要だと主張した。災害直後にコーヒー店主が再びコーヒー店を、食堂店主が再び食堂を興したように、スキルや知識は津波によって失われることがないからだ。人的資本はレジリエンスの要なのである。

失敗──ポテンシャルを生かせないダリエン地峡

運搬手段の革新によって凋落したパナマの町

パナマとコロンビアにまたがる熱帯雨林に覆われ、南北のアメリカ大陸と太平洋と大西洋をつなぐその場所に、ダリエン地峡はある。天然資源の宝庫ともいうべき恵まれた立地にありながら、そのポテンシャルは生かされないどころか、国境の概念があいまいで無法地帯と化している。

南米アメリカ大陸を縦断するパンアメリカンハイウェイがこの地で一部途切れており、別名「ダリエン断絶(ギャップ)」とも呼ばれている。そこに位置するパナマのヤビサという町は、かつては河川を利用して首都パナマシティとの直接交易をおこなっていたため、ダリエンの経済中心地として栄えていた。

1980年代になってパナマ当局の敷設する道路がヤビサに到達すると、運搬手段は水上から陸路に取って代わられた。造船業者や乗組員、港で働く者たちの仕事はなくなり、ヤビサは経済のハブとしての地位から転落していった。

自然環境を傷つけ自滅に導く非公式経済

仕事を失ったヤビサの人たちには、財産である周囲の自然を切り売りするしか生きる術はなかった。

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