エマニュエル・トッドの思考地図

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出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2020年12月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は、ソ連崩壊やリーマン・ショック、イギリスのEU離脱など、数々の歴史的事件を予見してきた歴史人口学の泰斗が、初めて自らの思考を分解し理論化しようと試みた解説書である。著者は執筆の方向性が定まるにつれ、自らの思考法を語るのが楽しくなってきたという。その言葉通り、本書の随所に著者の人間らしい一面がのぞくエピソードがちりばめられており、飽きさせない構成になっている。特に、思考を促すうえで「SFを読み、想像の世界へ行きなさい」「恋愛面で危機にあるときほど研究に邁進しなさい」と助言するくだりは味わい深い。いずれも自身の経験に裏打ちされており、読み応えと納得感がある。

「私は学ぶことが大好きです」「学ぶ喜びこそ人生の本質」と言い切る潔さも痛快だ。仕事の95%は読書だそうで、本の虫という言葉では言い尽くせぬ学究肌ぶりが終始貫かれている。半世紀近く研究を続け、時に社会の激しい批判を浴びながらも、衰えぬ向学心は敬服に値する。

学びへのほとばしる情熱で書き進められた本書は、知的活動を「入力→思考→出力」の3フェーズに分け、章立ても概ねその流れに沿っている。人並外れた思考ゆえに、その回路は複雑であるが、安心してほしい。知的活動の各要素を示した「思考の見取り図」が用意されており、それが理解の助けになってくれる。

適切なデータを収集、分析していけば、将来を見通すことは決して不可能ではない――。著者のこうした力強いメッセージは、読後にいっそう実感を伴って受け止められることだろう。現代最高の知性が明かす思考地図をお楽しみいただきたい。

著者

エマニュエル・トッド
1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析、ソ連崩壊やリーマン・ショック、イギリスのEU離脱などを予見したことで広く知られる。おもな邦訳書に、『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』『世界の多様性――家族構造と近代性』(以上、藤原書店)、『シャルリとは誰か?――人種差別と没落する西欧』(文春新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    あらゆる知的活動は「入力→思考→出力」から成る。なかでも思考は自然発生的な「思いつき」や「気づき」といった着想である。思考する前にまず広く文献やデータを読み、膨大な知識を脳内に蓄積する「入力」が最も大切だ。
  • 要点
    2
    知識を蓄積していくと、突然アイデアが湧く「発見」に至る。それが驚くべき数字やデータであっても、思考から排除すべきでない。新たな分野を切り開く端緒と捉えるべきだ。
  • 要点
    3
    発見した成果を社会に発信すると時に批判を呼ぶが、批判を恐れてはならない。批判は社会の本質を突いた何よりの証である。

要約

【必読ポイント!】 膨大なデータの蓄積が思考を支える

知らないことを知る感動こそ思考の神髄
miljko/gettyimages

思考とは何か――。プラトンら哲学者たちは古来その答えを探究してきた。しかし著者はそうした抽象的な問いと一線を画し、思考することは着想などの自然発生的に起こるメカニズムだと捉えている。

思考という行為の前に、まず学ぶという行為がある。著者にとって学びの大半を読書が占める。自身が専門とする歴史人口学に限らず、幅広い文献を読み漁ってきた。大量に読んで学び、知らないことを知ったときに感動する。それこそが思考するということでもある。

思考そのものはとっさの行為、「思いつき」や「気づき」のような着想である。着想自体の当否を検証するうえで重要な役割を果たすのが、統計学や歴史学といった学術的なフレームだ。

こうした知的活動に必要な知性は大きく三つに分けられる。それは頭の回転の速さ、記憶力、創造的知性である。頭の回転の速さと高い記憶力による知的処理は、思考を必要としない。いわばテクニックだ。一方、創造的知性とは、脳内のさまざまな要素を自由に組み合わせ、関連づけることができる知性を指す。これこそが斬新なアイデアを思いつくために不可欠なものである。

最重要は入力=データの蓄積

あらゆる知的活動は、「入力(インプット)→思考→出力(アウトプット)」の3フェーズから成る。「入力」は読書や統計の読み込みを通じたデータの蓄積を指す。「思考」は着想(仮説)、モデル化とその検証、分析を含む。そして「出力」は執筆や発言を通じた成果の発信を意味する。

一連の知的活動のうち、最重要かつ著者にとって最も面白い作業は入力である。

無我夢中で本を読み、知識を蓄積していく。すると、ある時点で脳がデータバンクのようになり、やがてある思考モデルが立ち現れる。その境地に至る過程はさながら、探偵小説『アルセーヌ・ルパン』の一節「まだ十分に材料が揃っていない。考える前に進まなければならない」という状況のようだ。波乱万丈の冒険を通じて材料=データを集めるルパンが、旅するように文献を読み漁る著者の姿に重なる。

データ蓄積に関連して、著者は独自の読書術を紹介している。まず本の大切な箇所のページ数とコメントを、表紙の裏から最初の数ページにある空白に直接書き込む。

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