逆・タイムマシン経営論
近過去の歴史に学ぶ経営知

未 読
逆・タイムマシン経営論
ジャンル
著者
楠木建 杉浦泰
出版社
定価
2,420円(税込)
出版日
2020年10月12日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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逆・タイムマシン経営論
逆・タイムマシン経営論
近過去の歴史に学ぶ経営知
著者
楠木建 杉浦泰
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定価
2,420円(税込)
出版日
2020年10月12日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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おすすめポイント

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは、ドイツの政治家、オットー・フォン・ビスマルクの言葉だ。客観的な歴史は、いつの時代も人々に有用な情報・視座を与えてくれる。

我々が日常生活で触れる情報は今も爆発的に増殖を続けている。その中には、まことしやかなニセモノ言説や、偏った固定観念も多大に含まれているだろう。誤った情報の罠に嵌り、撤退を余儀なくされる企業・事業は枚挙にいとまがない。では、そのような情報の真贋はどのように判断したら良いだろうか?

そういった悩みに対し、本書は情報と付き合う際の「思考の型」を提示してくれる。

それは、2000年代のごく近過去の事例も含め、企業経営という切り口で歴史の一部を切り取り、そこから導き出される普遍的な本質を見抜く手法だ。必要となるのは新聞や雑誌といった過去の記録のみで、大きなコストを伴わない。しかし、この手法を体得すれば、正しい状況認識と意思決定の「センス」、ひいては自らの価値基準となる「教養」を錬成することができるようになるだろう。

新聞などのファストメディアは最新情報や断片的な知識を入手するには最適だ。ただし、事実が起こった論理とその本質を掴まなければ、たちまちニセモノ言説や同時代の空気に惑わされてしまう。経営者、経営幹部を筆頭に、日々膨大な情報に触れるビジネスパーソンにとって、必読の一冊と言えるだろう。

著者

楠木建(くすのき けん)
一橋ビジネススクール教授
1964年生まれ。89年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から現職。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)。

杉浦泰(すぎうら ゆたか)
社史研究家
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、ウェブエンジニアとして勤務。そのかたわら、2011年から社史研究を開始。個人でウェブサイト「The 社史」を運営している。

本書の要点

  • 要点
    1
    「逆・タイムマシン経営論」とは、過去に生起したファクトの背景や状況を「文脈」で理解し、そこから導き出される本質を見抜くセンスと大局観を養う手法である。
  • 要点
    2
    「飛び道具トラップ」とは、過度にツール単体に注目してしまい、自社の戦略ストーリーに沿わない取り込み方をしてしまう罠だ。
  • 要点
    3
    「激動期トラップ」とは、その時点で生まれた新しい技術や商品・サービス、環境変化を過剰に受け止めて、一気に全てが変わると思い込む罠だ。
  • 要点
    4
    「遠近歪曲トラップ」とは、遠いものほど良く見え、近いものほど粗が目立つという認識バイアスだ。

要約

【必読ポイント!】 「逆・タイムマシン経営論」とは何か

未来ではなく過去を見る

「逆・タイムマシン経営論」とは一体何だろうか?

それを語るには、まず「タイムマシン経営」という言葉の説明が必要だ。タイムマシン経営は、既に「未来」を実現している国や地域(例えば米国のシリコンバレー)に注目し、そこで萌芽している技術や経営手法を持ってくることによって利ザヤを得るという戦略である。実践者としてはソフトバンクグループの孫正義会長が有名だ。

「逆・タイムマシン経営論」はこの論理を反転させる考え方だ。過去に遡り、その時点でどのような情報や言説がどのように受け止められ、どのような思考と行動を引き起こしたのか。近過去を振り返って吟味すれば、本質を見抜くセンスと大局観が養われるというのが、本手法の眼目である。

文脈思考と同時代性の罠
Chinnapong/gettyimages

本書は、誰かが考察を書き加えた歴史書ではなく、高度経済成長期前後から2010年代までの「近過去」の時代に作成されたメディアの言説に焦点を絞っている。「近過去」の記事は、そのまま「一次史料」として考察できるためだ。

未来予測はどうやっても不確かなものだが、過去は既に確定した事実である。つまり、歴史はそれ自体「ファクトフル」なものなのだ。

大事なのは、一つひとつのファクトが「豊かな文脈」を持っていることである。特定のファクトが生起した背景や状況といった文脈を理解し、それを自身のビジネスの文脈の中に位置づけて考える必要がある。本書で繰り返し強調されるこの「文脈思考」こそが、ファクトから実践知を引き出す上で決定的に重要な思考法である。この思考法を持っていなければ、膨大な断片的情報から本質を引き出すことはできないし、すぐに「同時代性の罠」に流されてしまうことだろう。

「同時代性の罠」とは、その時代特有のステレオタイプ的な見方に偏った思考やバイアスのことだ。これは現実の仕事においてしばしば意思決定を狂わせる。同時代性の罠は、「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」の3つのタイプに分けられる。それぞれについて紹介していこう。

飛び道具トラップ

サブスクに潜む罠
metamorworks/gettyimages

いつの時代も「最先端」の「ベストプラクティス」や「ビジネスモデル」が多くのメディアを賑わせている。旬のツールや手法を取り入れれば、たちどころに問題が解決し、うまくいくと思い込んでしまう。これが同時代性の罠の最たる例である「飛び道具トラップ」だ。

まずは、近年話題を振りまいている「サブスクリプション」について取り上げる。

新しい経営施策やツールが飛び道具として注目を集めるようになる背後には、決まって華々しい成功事例があるものだ。サブスクリプションの場合、米アドビ社の戦略転換の成功がそのひとつといえる。

2008年頃のアドビは、PhotoshopやIllustratorといったデザインツールをパッケージ化し、売り切り型ビジネスモデルを採用していた。しかし、価格が高いという理由により、新規ユーザーの獲得という点で課題を抱えていた。これが影響したことで、業績は安定していたのにもかかわらず、株価は横ばいをたどっていた。この停滞状況を打破するために、経営陣は大きな決断を下す。それが、2013年に実行されたサブスクリプションへの全面移行だ。それまで海賊版や他社製品を利用していた人たちの新たな需要獲得に繋がり、経営を再成長の軌道に乗せた企業として資本市場からも大きく評価された。

アドビの成功事例は大きく注目され、「サブスクは成長と収益拡大を同時に実現するビジネスモデル」だという言説が、同時代の空気として定着した。

しかしその一方で、AOKIホールディングスの「suitsbox(スーツボックス)」のように、わずか半年でサブスクから撤退する事業も出てきているのが現実だ。成功の明暗を分けたものとは何なのだろうか?

それを知るには、飛び道具トラップのメカニズムを理解する必要がある。

成功事例の「文脈」
Anawat_s/gettyimages

飛び道具トラップが発動するメカニズムは次のとおりである。

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