トヨタの描く未来

トヨタ式 新しい時代の働き方
未読
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トヨタ式 新しい時代の働き方
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トヨタの描く未来
出版社
リベラル社

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出版日
2020年12月27日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

トヨタ自動車(以下、トヨタ)が実践する「新しい時代の働き方」と、その先にトヨタが描く未来とは何なのか。この問いに対して、示唆に富む答えを与えてくれるのが本書だ。その特徴を3点紹介したい。

まず、トヨタの業容拡大に力を尽くしてきた社員のエピソードがふんだんに盛り込まれていて、現場の様子が伝わってくる。自動車業界に詳しくない読者でも、最後まで興味深く読めるだろう。

次に、多くのビジネスパーソンが現在直面している課題を取り上げている。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業がテレワークの導入など働き方の見直しを迫られている。生産性を向上させ、仕事の質を高めていく方法を模索している企業も多いが、トヨタの取り組みから多くのヒントが得られるはずだ。

さらに、日本国内における存在感は群を抜くトヨタでさえ、現状に危機感を抱いていることをありありと認識できる。100年に1度の大変革期を迎えている自動車業界に身を置く企業だからこそとも言えるが、その変革の波が、自動車以外の業界に及ぶ可能性は大いにある。過去の成功は企業の成長の源泉となってきた。だが、過去の成功に拘泥するあまり、時代の波に取り残される企業も少なくない。「昨日より今日、今日より明日」「日々改善、日々進化」。こうした目標を掲げ、現状に満足せず改善を続けてきたトヨタの実践は、業務改革をめざす経営層・管理職層はもちろん、働き方を抜本的に見直したい方にとって、大いに参考になるはずだ。

ライター画像
さいとう

著者

桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、業界紙記者などを経て、フリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材。トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方、スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスとなどのIT企業の創業者や、本田宗一郎、松下幸之助など成功した起業家の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。著書に『人間関係の悩みを消すアドラーの言葉』『自分を活かし成果を出すドラッカーの言葉』(ともにリベラル社)、『スティーブ・ジョブス名語録』(PHP研究所)、『トヨタ式「すぐやる人」になれる8つのすごい!仕事術』(笠倉出版社)、『ウォーレン・バフェット巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)、『トヨタ式5W1H思考』(KADOKAWA)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)、『amazonの哲学』(大和文庫)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    トヨタがテレワークなどの新しい働き方を素早く導入したのは、自動車業界が100年に1度の大変革期を迎えているためだ。多様な人材の能力を100%引き出し、無駄を省き、未来への投資を加速させる必要がある。
  • 要点
    2
    新しい働き方は、生産性を高めて成果を出すための手段だ。今後の評価基準は、「業務に費やした時間や労力」ではなく、「生まれた成果」である。
  • 要点
    3
    これから必要な力は、自分で考えて答えを見つける力、改善や創意工夫に向けた知恵を出せる人材を育てる力、その知恵を実践して、改善につなげる力だ。

要約

トヨタはなぜテレワークを素早く導入したのか

未来への投資を強化する

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークを導入する企業が増えた。そんな状況に影響を与えるのが、トヨタの動向だ。トヨタは、社員の仕事と育児や介護などとの両立を図るため、数年前から在宅勤務の環境を整えてきた。それゆえ、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するためのテレワーク導入も、円滑に進めることができた。

ではなぜトヨタは、テレワークや在宅勤務といった新しい働き方を積極的に導入してきているのだろうか。それは豊田章男社長の次の言葉で明確に表現されている。「移動時間80%減、接触人数85%減、会議時間30%減、資料50%減ということ。そのリソースを、未来への投資に割ける」。

トヨタがテレワークを推進している目的は何か。1つめは、社員の働く場所や時間を自由に選択できるようにすることで、多様な働き方を実現するためだ。これにより、多様な人材を集め、その力を100%発揮してもらいやすくなる。2つめは、多くの無駄を省き、未来への投資に配分することで、激変する自動車業界の競争に勝っていくためだ。

大変革期に入った自動車業界
metamorworks/gettyimages

豊田章男社長は、2009年に社長に就任して以来、トヨタの置かれた環境の変化に対して強い危機感を表明してきた。国内では突出する存在感を放つトヨタでさえも、自動車業界の激しい変化への対応を迫られている。

なぜ自動車業界は激変しているのか。それは「4つの技術革新」が進んでいるためだ。4つの技術革新とは、「Connected=通信と車の接続」「Autonomous=自動運転」「Sharing=共有」「Electric=電動化」を示す。これらが進めば、ガソリン車の時代は終焉し、自動車メーカーが3万点近い部品を使って自動車を組み立て、販売するといったビジネスモデルも成立しなくなる可能性がある。

また、テスラ・モーターズ、グーグル、アマゾン、アップルといった、ITの巨大勢力がライバルとなるなど、競争の構図が大きく変わっている。これまでと同じことを繰り返していれば、トヨタは自動車を組み立てるだけの存在になってしまう。そんな危機感が、豊田章男社長を改革に駆り立てている。

日本のものづくりと雇用を守る

トヨタはこれまでの「自前主義」を改め、「オールジャパン」での戦いを目指すとして、投資や連携を急ぐ。具体的には、マツダやデンソーと、電気自動車の基盤技術開発の新会社を設立したり、自動運転に欠かせない人工知能の研究機関を設立したりしている。

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要約公開日 2021.03.03
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