仕事のアンラーニング

働き方を学びほぐす
未読
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仕事のアンラーニング
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出版社
同文舘出版

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出版日
2021年06月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

まさに今、働き方や仕事の進め方を変えざるをえない状況の真っ只中にいる方は少なくないだろう。リモートワークの導入やDXなど、それまでの常識を根底から覆すような変化が起こりつづけているからだ。そんな中、従来のように新しい働き方を「取り入れる」だけでなく、古くなった手法や考え方そのものを適度に「捨てる」ことにも着目し、考え方の新陳代謝をうながして個人の成長や事業の拡大につなげようというのが、本書のテーマである「アンラーニング」だ。

本書はいわば、働き方の「断捨離」について語るものである。働き方を「捨てる」と言っても、これまでうまくいっていたやり方を変えるには、心理的抵抗も含め、さまざまな障害があるものだ。そこで本書では、そのような障害を乗り越えてアンラーニングするための「実践のポイント」が多く提案される。アンラーニングをうながすきっかけで一番大きなものは昇進や異動などといった環境の変化だそうだが、これをきっかけにどのようにうまく捨てていくか、なにがアンラーニングを促進するのかという点などについて、豊富なデータや事例を参照しながらみていく。

自分の働き方が古いのはわかっているがどう変化させていけばいいかわからない方や、仕事に行き詰まりを感じている方は、ぜひ本書を参考にして、アンラーニングを実践してみていただきたい。きっとブレイクスルーにつながるはずだ。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

松尾睦(まつお まこと)
北海道大学大学院経済学研究院教授。
1988年小樽商科大学商学部卒業。1992年北海道大学大学院文学研究科(行動科学専攻)修士課程修了。1999年東京工業大学大学院社会理工学研究科(人間行動システム専攻)博士課程修了。博士(学術)。2004年英国Lancaster大学Ph.D.(Management Learning)を取得。 塩野義製薬、東急総合研究所、岡山商科大学商学部助教授、小樽商科大学大学院商学研究科教授、神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て、2013年より現職。
主な著書に、『経験からの学習』(同文舘出版、2006)、『学習する病院組織』(同文館出版、2009)、『経験学習入門』(ダイヤモンド社、2011、HRアワード書籍部門・最優秀賞)、『成長する管理職』(東洋経済新報社、2013)、『経験学習リーダーシップ』(ダイヤモンド社、2019)、The Role of Internal Competition in Knowledge Creation (Peter Lang)など。
論文では、日本社会心理学会・着想独創賞(1995年度)、European Journal of Marketing最優秀論文賞(2003年度)、Journal of Workplace Learning 最優秀論文賞(2019年)を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    プロフェッショナルであり続けるためには、自分の型やスタイルを確立するだけでなく、確立した型やスタイルを壊し、新しい知識やスキルを取り込む「アンラーニング」が必要となる。「アンラーニング」は「学びほぐし」と訳され、硬直した知識・スキルをほぐして新しく組み立て直すことを意味する。
  • 要点
    2
    探索的で革新的な上司の下で働いている人は、上司をロールモデルとしてアンラーニングすることが可能だ。ポイントは、活動内容だけでなく、上司の持っている「学びの姿勢」や「成長しようとするマインド」を見習うことである。

要約

【必読ポイント!】アンラーニングとは何か

成長に欠かせない「学びほぐし」

著者はあるとき、知り合いの営業コンサルタントから「昔のヒーロー」という言葉を教えてもらった。「昔はトップセールスとして活躍していたが、今は鳴かず飛ばずの営業担当者」を意味する言葉だ。

「昔のヒーロー」が失速した原因は、過去の営業手法に固執していることにある。一方、トップセールスであり続けている人は、顧客や競争相手、社会の変化に応じて新たなスタイルを取り入れている。

常にプロフェッショナルであり続けるためには、自分の型やスタイルを確立する必要がある。だが、それだけでは十分ではない。必要に応じて、既に確立した型やスタイルを壊して新たな型やスタイルへと作り直し、新しい知識やスキルを取り込まなければならないのだ。この行為を「アンラーニング」(学びほぐし)といい、硬直した知識・スキルをほぐして新しく組み立て直すことを意味する。

人は経験からの学びによって成長するといわれるが、経験から学んだことにしがみついてしまってはならない。成功したからといってノウハウを固定化するのではなく、「なぜ成功できたのか」を理解し、自身のノウハウを改善するべきだ。そうすれば、別の状況でも再現できる。経験から学び続けるためには、アンラーニングが不可欠だ。

個人のアンラーニング
whyframestudio/gettyimages

アンラーニングの概念は組織レベルの研究から生まれたが、最近では、チームレベル、個人レベルの研究も進んでいる。アリ・アグランらは、チーム・アンラーニングを「チームにおける信念(技術、市場、顧客ニーズについての信念)とルーティン(仕事の手続き、情報共有の仕組み、意思決定の仕組みなど)の変革」と定義する。そのうえで、新製品開発チームを調査したところ、市場や技術の環境変化が速く、危機感や不安感を感じているチームほど、アンラーニングが進み、高い業績を上げることがわかった。

組織やチームのアンラーニングのためには、個人のアンラーニングが欠かせない。本書では、個人のアンラーニングを「個人が、自身の知識やスキルを意図的に棄却しながら、新しい知識・スキルを取り入れるプロセス」と定義する。

デイビット・コルブによれば、人は4つのステップで学習する。(1)具体的な経験をし、(2)その内容を内省し(振り返り)、(3)そこから何らかの教訓を引き出し、(4)その教訓を次の状況に応用する、といった流れである。

たとえば、ある営業担当者が大きな案件を受注したとしよう。これはステップ(1)の「経験」だ。この担当者は、なぜ受注できたのかを振り返り(内省)、「コストダウンを強調したこと」が成功要因であることがわかり(教訓)、そうした営業アプローチを別の顧客にも適用したとしたら(応用)、コルブのモデルに沿って経験から学んでいるといえる。

このサイクルにおいて、アンラーニングと関係が深いのは(3)の教訓のステップだ。状況の変化に応じて古い教訓を捨て、新しい教訓が得られれば、適切なアンラーニングが行われているといえる。

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要約公開日 2021.08.04
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