欲望の錬金術
伝説の広告人が明かす不合理のマーケティング

未 読
欲望の錬金術
ジャンル
著者
ローリー・サザーランド 金井真弓(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,640円(税込)
出版日
2021年04月29日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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伝説の広告人が明かす不合理のマーケティング
著者
ローリー・サザーランド 金井真弓(訳)
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出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,640円(税込)
出版日
2021年04月29日
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総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
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おすすめポイント

コカ・コーラの次によく飲まれているソフトドリンクをご存じだろうか。それはレッドブルだ。もともとレッドブルは、「決しておいしくなく、量も少なく、価格も高いドリンク」として開発されたという。到底そんなものは売れないと普通は考えるだろう。しかし実際には年間60億本を売り上げる、世界的にも人気の飲み物となっている。合理的な発想だけをしていたら、レッドブルは決して誕生しなかった。一見非合理的な行動が、イノベーションを生む――これこそが本書のキーメッセージである。

著者のローリー・サザーランド氏は、世界的にも有名な広告代理店の英国支店の副会長だ。本書では、最新のケーススタディなどを豊富に交えつつ、ロジカルを超えた人の心理(サイコ)ロジカルに焦点を当てている。

日本でも近年、「合理的であること」の是非はたびたび話題になる。「結婚はコスパがいいのか」という問いも、その類と言えるかもしれない。コロナ禍でリモートワークが一般的になり、経営合理化の一環で脱オフィスをする企業も増えた。

無論、さまざまな意見があってしかるべきであり、合理的に考えることの意味は依然として大きい。だが合理性・効率性の追及は、あくまで「いま見えている部分」を最適化するだけにすぎないことを忘れてはならない。インターネットを使えば膨大な情報にアクセスできるが、だからといってインターネットにある情報が世のすべてではないことと同じである。行き過ぎた合理主義に一石を投じる、きわめて重要な一冊である。

ライター画像
小林悠樹

著者

ローリー・サザーランド(Rory Sutherland)
世界的広告会社オグルヴィUKの副会長。『スペクテーター』誌のコラムニスト。広告やメディア、マーケティング・コミュニケーション業界の専門機関である英国広告代理店協会の前会長。出演したテッドトークは650万回以上再生されている。ロンドン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    ロジカルであることは人に安心感を与えてくれる。しかし現実は複雑であり、ロジックを超えた非合理的な解決策が無数にある。
  • 要点
    2
    人が非論理的な行動をとる理由は、「シグナリング」「潜在意識のハッキング」「満足化」「心理物理学」の4つの原理で言い表すことができる。
  • 要点
    3
    これまでとは異なる方法をとることで、幸運な偶然を享受できるチャンスが生まれる。ロジックを手放し、人の無意識の動機に着目すれば、これまで見えていなかった解決策が見つかるかもしれない。

要約

ロジックの乱用

ロジックは合理的で、人に安心感を与える

現代社会は、不合理なものを敬遠する傾向がある。それは科学における還元主義(複雑な事象を分解して、各部分を調べることで全体を理解しようとするアプローチ)が信用されているからだ。

たとえば仕事と休暇の関係を考えてみたい。現在のアメリカ人の半数以上は、通常の休暇である2週間にくわえて、もう2週間多く休みがとれるのであれば、お金を払うことをいとわない。休暇が2倍になるなら、4%の報酬カットを受け入れるだろう。これは経済学上、ロジカルに思える。

だが本当にそうだろうか。休暇を増やせば、余暇が増えて消費が喚起されるとともに、時間当たりの仕事の生産性も上がるかもしれない。経済全体としてプラスの効果を得られるならば、わざわざ休暇と報酬を交換しなくてもいいはずだ。実際、ヨーロッパの国々は1カ月以上のバカンスをとっているが、高い生産性を維持している。

このように現実は複雑なシステムで動いている。だから一見正しいロジックを超えた解決策が無数にあるのだ。

心理学は魔法を考慮する
fcscafeine/gettyimages

これまでロジックは人々を魅了し、整然とした経済モデルやビジネス事例、技術的なアイディアなど、数多くのものをつくりあげてきた。それらは「複雑な世界をコントロールできている」という有能感を与えてくれる。しかし科学的な方法論を重視するあまり、非合理的で魔法のような解決策が考慮されていないのではないか――これこそが本書が掲げる問題提起である。

伝統的な経済学者にとっては非論理的に思える策であっても、成功している例は枚挙にいとまがない。一見非合理的な解決策は、ほぼすべての問題に潜んでいる。それにもかかわらず、人はそれを探そうとしないのだ。なぜならロジックに心を奪われすぎているからである。

ロジカルな理由と心理的な理由

人の行動には、「表向きのロジカルな理由」と「心理(サイコ)ロジカルな本当の理由」の2つがある。たとえば「歯磨き」を、「虫歯にならないためにするもの」と考えるのは、ロジカルな表向きの理由だ。だが、ほとんどの歯磨き粉にミントの味がするのはなぜだろうか。もしかすると、これが歯磨きをする真の理由なのかもしれない。

現実社会は私たちが思っているほどロジカルなものでない。たとえばレッドブルはあえておいしくないドリンクを、スターバックスは5ドルもするコーヒーを販売している。これらは当初、不合理な戦略だと考えられていた。しかしその結果がどうなったかは、あらためて語るまでもないだろう。

効率性を追求してもうまくいかない理由

効率性を追求すれば、よい結果が得られるというわけではない。「ドアマンの誤謬」と著者が呼ぶ考察が、それをうまく表している。

ドアマンの基本的な役割を、「ドアを開けること」と捉えることにしよう。その場合、自動ドアを取り付けるだけで、経費削減や効率性アップに貢献するはずである。しかし現実はそう単純にはいかない。というのもドアマンは

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